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第四章 ドラゴンVS恐竜 その2

4.4 ドラゴンVS恐竜 試合開始前 アラトの部屋


 アラトは興奮しすぎで挙動不審となっている。キョロキョロ、ジタバタする様子が、隣にいる先輩からさぞかし滑稽こっけいに見えるだろう。


 ファンタジー系物語に登場する伝説の生物、ドラゴンの最強版と、絶滅していなければ地球上で最強の生物と思しき恐竜の遺伝子組換え&突然変異版。


 まるでSF映画のシナリオ、想像の遥か上を行くモンスター同士の激突に、身が震えるほど感動を覚えている。


 と同時に、もし自分が対峙していたらという血も凍るような恐怖感も抱いており、恐ろしさによる身震いも重なって、ある意味パニック状態に陥ったといえる。


「せ、先輩」


「はい、なんでしょう、新人さん」


「もし、もしですよ、このドラゴンとか恐竜とか、もし僕が対戦相手だったら秒殺ですよね、ゴキブリみたいにプチッって踏み潰されて一巻の終わりですよねぇ」


 アラトは震える手で、義理子先輩が座るソファーにしがみついた。


「……」


 なぜか間がある。固唾かたずみこむアラト。


「ギリ、大丈夫です!」


 と、のんびりソファーに腰かけたまま、抑揚のない真顔で親指を立ててオッケーの合図をする義理子先輩。


「まさか、それを言うために、義理子って名前にしてないですよねぇぇぇ~、先輩!」


「そんな、冗談みたいな人生を送ってないです、新人さん」


「じゃ、何パーセントぐらい生き残れるんですかぁ~」


「はい、20%ぐらいです」


「へ? そんなに悪くないかも?」


「あっ、申し訳ありません。2桁間違えていました。0.2%です」


 アラトはその場でズッコケた。ギャグネタではなく、素でズッコケた。


 アラトの気持ちを知ってか知らずか、今にも泣きそうなアラトをよそに義理子先輩は続ける。


「良かったですね、新人さん。実写版の怪獣映画に登場する架空生物は全長100mとかありますし、一番有名な怪獣は300m超えています。ちなみに東京タワーが高さ333mですから、わかりやすいですね。

 それに比べれば、体長25mとか20mなんてモルモットくらいかわいいと思いますけど」


「アハハハ、イヒヒヒ、ウフフフ、エヘヘヘ、オホホホ……」


 涙目で笑うアラト。


「架空の生物だから良かったです。もしこの大会に参戦なんてことになったら、新人さんの存在なんて体に群がるノミみたいにプチッって潰されてお終いでしょうから。実在しなくて本当に良かったです。ねぇ、新人さん」


「もう全然笑えないです」



 §   §   §



4.5 ドラゴンVS恐竜 試合模様その一


『シアイカイシ30ビョウマエ、29、28、27……』


 ドラゴンと恐竜が大きな檻に閉じ込められた状態で、闘技場内に転送されてくる。こんな大きな物体でも物質転送する技術があるらしい。


 両者の距離は、およそ500m。


 双方とも、相手の巨大な存在感に気づかない訳がない。


 遺伝子組換え&突然変異恐竜『パルスザウルス』は、その獰猛どうもうな本性をき出しにし、檻の中で暴れ出す。金属製の檻が、今にも破壊されてしましそうだ。


 一方の金龍『ハイエスト』は恐竜をジッとにらみ、冷静に観察している。


 これから両者の間で死闘が始まることを、本能的に理解しているようだ。


 『……3、2、1、ゼロ』


 ゼロと同時に、金属製の檻だけが物質転送で、どこかへと消えていく。


 檻が消え解放された瞬間、耳につんざく甲高かんだかい雄叫びとともに、蝙蝠こうもりのような翼を広げて天高く飛び上がる金龍。


 同時に、恐竜も闘争本能()き出しで、大地が揺れそうな重低音の咆哮ほうこうとともに猛ダッシュした。


 金龍は勢い余って、ドーム天井の高熱バリアに頭部が接触した。バチバチと火花を発し痛みを感じたのか、頭を左右に振り高度を下げる。半透明なバリアの存在を理解したようだ。


 ドームの頂点高さは500m、ドームの半球形状により、外側に行けば行くほど天井は低くなる。両者の体長は20m程度、金龍だけが飛行し、有利なポジションを維持するためには、戦闘はドーム中央付近になりそうだ。


 飛行能力のない恐竜は、空を飛翔する金龍の姿を目で追うが、当然、手が届くわけでもなく、苛立いらだちを隠せない。


 金龍は敵が飛べないという一方的な条件を認識し、グルグルと旋回しながら観察を終えたようだ。空中で翼をはばたきながら静止し、恐竜めがけ炎のブレスを吹きかける。


 火炎放射器の如く、一直線に伸びる炎が恐竜を捉える。射程は100m程度ありそうだ。


 たじろぐ恐竜。しかし、恐竜の肉体が燃えている様子も、焦げている様子もない。重厚な皮膚には豊富な水分と耐火性能があるのかもしれない。


 金龍は火炎攻撃を中断した。


 ポジションをゆっくり変えつつ、頭部にある2本の角が放電し始める。金龍の周囲の空気がピリピリとザワつき、時折、小さな閃光を放ちながら電気が頭部に集まってきているのが見てとれる。ゆっくり呼吸して十分に威力を高めているようだ。


 金龍は一瞬呼吸を止め、落雷の轟音ごうおんとともに雷撃を放つ。


 恐竜はまったく回避行動をとらず、正面から直撃。地面を揺らしながら、ドスンと転倒した。

 シューシューと恐竜の体表から白い煙が上がる。


 恐竜は足をピクつかせ、起き上がろうしない。


 しばらく旋回していた金龍の口角が上がり、ドヤ顔を作っているように見える。


 あっさり決着したのか、恐竜はピクリともしなくなった。



 §   §   §



4.6 ドラゴンVS恐竜 観戦模様その一 アラトの部屋


「義理子先輩、ちょっと不思議なんですけど」


「はい、なんでしょう、新人さん」


「このテレビ中継、現地で誰が撮影してるんですかね?」


「はい。おそらくですが、バグを使っているのかと」


「バグ? バグって、虫ですか?」


「いえ、盗聴器を英語でバグって言います。スラングですが」


「へぇ~」


「もちろん、今では盗聴というより、カメラで撮影をして映像で監視するのが主流ですから、盗聴器とは名称が異なりますけど。虫型の超小型ドローンカメラで撮影していると思われます」


「じゃ、虫じゃんか! ウソつきじゃんかー」


「新人さん、心の声が漏れてます」


「へぇ~、義理子先輩、いろんな事知ってるんですね、凄いです」


「スルーですか。まぁ、日々学習してますので」


「人をだまくらかすお勉強も、しっかりしてますよね」


「心の声」


「僕も先輩見習うことにします」


「バグ型のバグがバグったら、心臓バグバグ。なんちゃって」


 超絶美人の抑揚のない真顔のオヤジギャグに反応し、ほんの一瞬フリーズしかかったアラトだったが、グッとこらえて気合いのスルー。


「さぁて、コーヒー2杯目飲もうかなぁ~」


「新人さん、上司をスルーばかりしていたら、大切な情報を聞き逃しますよ」


「4回スルーで、シースルー。なんちゃって。ほら、全然聞き逃してないですよ」


「新人さんの今後の成長が楽しみです」


 と、両者痛み分けで、対決の幕を閉じた。



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