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第二章 超人VSサイボーグ その1

2.1 第一回戦第一試合 超人VSサイボーグ 試合開始前 アラトの部屋


 途方に暮れるアラトをよそに、対戦組合せ表に付属しているパンフレット情報を義理子先輩が丁寧に説明している。


 闘技場は、大きく屋内型と屋外型に分けられる。また、大きさ広さも異なり、AタイプからFタイプまで全部で6種類の会場。


 出場選手双方の全長、飛行能力の有無によって運営側がもっとも適していると判断した会場が選択されるとのことだ。


 補足事項。試合が100時間超過した場合は、サドンデス会場が別に設けられている。


 本日の第一試合、闘技場はBタイプ。


 円柱状の閉鎖された密閉空間になっている。直径500m、高さ10m。壁も天井も白で統一され、中は昼間のように明るい。


 『シアイカイシ、3プンマエ』


 機械的音声の案内が、誰もいない闘技場内に響き渡った。


 心ここにあらずのアラトではあるが、一応、観戦モニターに視線だけは向けている。


 闘技場の床に直径2mほどの穴が二つ出現する。それぞれの穴に人影が1つずつ、床下から迫り上がってきた。劇場の舞台装置のエレベータ、役者が登場する『迫り』のようになっているのだ。


 人影が完全に姿を見せ、男二人が向かい合って対峙する様相となった。2者間の距離はおおよそ100m。


 一人は、遠目から見たシルエットでも厚い胸板を認識でき、全身が筋肉で覆われていることが見てとれる。


 白および青のツートンカラーの全身タイツとロングブーツ、ケープこそまとっていないが、映画に登場しそうなヒーローっぽいデザインのコスチュームだ。


 そのコスチュームは厚めの生地のように見えるが、それでも何重にも連なった腹筋が浮かび上がっている。胸に大き目の十字型オーナメントがあり、点灯していないランプのようだ。


 パンフレット情報によれば、身長は192cm。


 金色の長髪に、青いゴーグルを装着している。ゴーグルは一風変わったデザインで、真ん中の眉間部分に胸のデザインと同じ十字型の小さなオーナメントがある。


 もう一人は、金髪白人男性。身長180cm。黒のタートルネックシャツに赤いベスト。服の上からなかなかの筋肉質だとわかるが、対戦相手の筋肉量にはやや劣る。年齢は20代半ば。


 生きる希望を失って、ふてくされていたアラトだったが、モニターに映る闘技場の様子を見ながら急に豹変する。突如、瞳を輝かせ始め、柔らかいソファーに深く沈めていた身体を起こした。


「なんじゃ、こりゃ! かっこいい……、なんかスんげぇカッコイィ!」


「ですよね、新人さんもわかりますか」


「いや、マジっす、マジでカッコイイっス!」


「ナイツキャプテンが、カッコイイですわ」


 先ほどから手をパチパチ叩き、はしゃぐ超絶美人先輩。


(先輩のいうナイツキャプテンって、絶対あのナルシスト系イケメン兄ちゃんだよなぁ~、あからさまに気取ってんですけど。僕はそっちじゃない、断然、あっちのヒーローもどき!

 あの人、ハリウッド映画によく出てくる筋肉隆々の、あの人気アクション俳優に似てる! メッチャ似てる!)


 アラトは興奮気味に立ち上がり、急にガッツポーズをする。


「うぉぉぉ~、ぼかぁ、あの人応援するよ! ねぇ、先輩!」


「わたくしもですわ!」



 §   §   §



2.2 超人VSサイボーグ 試合開始前 闘技場


 対峙している二人のうち、赤いベストの男が両腕を腰に当て、格好よく気取ったポーズで対戦相手に声を掛ける。


「インヴィンシブル・スターだったね、わたしは超時空保安戦隊所属、スーパージクウナイツ、キャプテンのダンだ。よろしく!」


 話しかけられた対戦相手は、ピクリとも反応しない。両手を下げたまま拳を握り、ただ寡黙かもく悠然ゆうぜんと試合開始の合図を待っている。


「いや、すまない。対戦前に話しかけられるのは好きではないのかな」


 フッと、軽く笑みを作り、話を続けるダン。


「実は、一つ頼みごとがあってね。わたしは、戦うためには変身する必要がある。この闘技場内では、試合開始になるまでどんな兵器も使用できない設定になっていて、全ての出場者に適用されている。試合開始のカウントダウンがゼロになるまで、自動的に制限がかかる仕組みでね。

 それで申し訳ないけど、試合が開始されても、5秒ほど待ってほしいのだ。身勝手な頼み事とわかっているけど、変身しなかったら、見ての通りの人間なものでね、アッと言う間にミンチにされてしまうよ。いいかな?」


「いいだろう」


 最後までだんまりを決め込むかと思われたが、対戦相手インヴィンシブル・スターは、了解の返事をした。


「助かるよ、ありがとう」


 ダンは姿勢を正し、お辞儀して感謝を示す。


「それから、話が長くなるけどすまない。

 君の強さはわかっているよ。噂によれば、君は地球で随分活躍しているそうじゃないか。

 地上に現れた怪物や怪獣を倒したり、宇宙からやって来た謎の生物を駆除したり、言い換えれば、地球を守っていると。無敗の超人として」


 ピクッと反応するインヴィンシブル・スター。ダンの話に応じる。


「わたしは地球を守ろうとか、人類を救おうとか考えていない。

 ただ、強い敵が現れたら戦いたいだけだ。だから、地上の人間にはいっさい関わっていない。人類同士の紛争にもまったく手を出さない。人間社会に関わることなく、地球で過ごしている」


「やっぱりそうなんだね。そうだと思っていたよ。

 君は、いわば、戦闘好きな無敵の超人。そして、わたしは正義の英雄」


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』


「無敵の超人、バーサス、正義の英雄。フッ、おもしろくなってきた」


 ダンはニヤリとして、挑発的なセリフを吐いた。


『……3、2、1、ゼロ』


 ゼロと同時に、拳を握った両手を十字に組み、変身ポーズを決めるダン。大声で叫ぶ。


「転送!!」


 ダンの掛け声と同時に、彼の背後に光の渦が生じる。さらにダンを中心として左右に二か所ずつ、横一列に合計5つの光が同時に輝く。発光する渦が稲妻のごとき閃光を撒き散らしながら、異空間ゲートを開き、物体が出現する。


 右手を高らかに上げながら、空中へとジャンプし叫ぶダン。


「装着!!」


 空間に出現した赤いコンバットスーツのパーツ群が、ダンの身体を包み、次々に装着されていく。


 左右に二つずつ光の渦から出現した物体は、ダンの身体に装着された赤いコンバットスーツとほとんど変わらないシルエットの人型が出現した。


「スーパージクウナイツ、見参!!」


 中央に赤い装甲のダンが決めポーズで仁王立ち、左右後方に2名ずつシルバー装甲の人型が並び、敵に向けた矢尻のようにVの字を描いている。



 §   §   §



2.3 超人VSサイボーグ 観戦模様その一 アラトの部屋


「マジか……」


 アラトは驚愕きょうがくした。いろんな意味で。


 モニター内の対戦模様が想像を遥かに超える突拍子もない展開で、これがもし漫画だったら、自分の背景に黒塗りで激しい稲妻が走っているに違いないと妄想してしまう。が、笑うわけにもいかず、湧き上がる複雑な感情をグッと抑えた。


「いや、これって5対1だから反則ですよね? ねえ、先輩!」


「新人さん、世の中の常識を知らないのですか?」


「なんですか、それ?」


「カッコよければ、オッケーなのです」


 義理子先輩は独り納得したように、ウンウンと首肯する。


「さ、左様で……」


 アラトは、頬をポリポリかきながら質問を続ける。


「それと、あのムキムキ超人が怪獣倒したとか話しているけど、怪獣なんて歴史上出現した記憶はありませんが……」


「はい、あのムキムキ超人が存在する地球というのは、パラレルワールドの地球であって、新人さんが生息する地球と異なります」


「はぁ!? そ、そうですか……。もう何が何だかわかりませんので、諦めまーす!」


 アラトはバンザイして降参のポーズをとった。



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