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第三十七章 主人公VSスライム その1

 敗者復活戦第二試合。アラトVSスライム。


『シアイカイシ、1プンマエ』


 アラトは運営側の案内役、警備ロボの誘導に従い闘技会場へ到着したあと、選手が出撃するエレベータ、つまり舞台装置の『迫り』に乗り、上昇するのを待っている。


 闘技場は、事前情報を入手済み。対メイド戦と同じBタイプ。


 円柱形の閉鎖空間、直径500m、高さ10m。


 対戦相手はアメスライバ。対勇者戦で、土俵タイプの闘技場を勇者が破壊し、場外へ同時転落したため両者失格となってしまった。


 ギリコが事前に分析した情報は以下のとおり。


 アメスライバの強さは明確。

 剣などの斬撃では絶対に切断できない。衝撃波は全て素通りするから打撃技は意味がない。それでいて、敵を捕食するまで永遠に追いかけてくる。移動スピードは非常に遅く飛行もしないが、疲れる様子もない。


 大きさは、直径120cm、高さ60cmくらいの塊だが、捕獲物を捕食する際に、その粘液状の肉体が優に2mから3mくらいまで膨張し巨大化できるだろうと想像する。


 それは意思を持たないスライム、本能だけで敵を捕食するアメーバ。その粘液状のボディに、こちらの身体が一部でも捕獲されようものなら、骨まで食べ尽くされるという恐怖感がある。無機質や機械類も消化できるかは不明だが。


 今回のアラトの装備には、昨日入手の飛行ジェットシューズを新規追加している。そして使わない予定のシールドは持ち込んでいない。


 アメスライバを倒す手順は、惑星破壊キャノン砲で蒸発させれば勝利確定。


 そしてギリコが僕に提示した戦術は至ってシンプルだ。


 惑星破壊キャノン砲のエネルギー充填じゅうてんが完了するまで空中で待機、あとはぶっ放すだけでいい。


 そのための飛行ガジェットが、今回、追加装備となる飛行ジェットシューズなのだ。それは二日前の対メイド戦に間に合わなかったが、今回はどうにか入荷できた。


 少しズルいように聞こえるが、アラトとギリコのコンビで勝ち進んでいくために必要な戦術こそが、『情報分析&兵器開発』なのだ。


 一種のチートにも感じるが、チート級戦闘能力を有する他の出場選手を相手に優勝を目指すには、これくらいの確固たる戦術があって然るべきなのだ。


 だからこそ、アラトも納得して、優勝を目指している。


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』


 カウント開始とともに、迫り型エレベータが上昇する。


 アラトは今回の作戦会議でギリコが発した言葉を思い出す。


 ——アラトさん、頑張ってくださいね! それから惑星破壊キャノン砲のフルパワー充填時間は48時間です。2時間充填でもミニパワーで発射できますから! 空中で待機して充填、あとはブッパして勝利確定!——


 ……だった。


(な、な、な、なにが『勝利確定!』やねん。48時間も空中で待機できるか! 2時間でもアウトや! スーパーコンピュータのくせに、どんなポンコツやねん。メイド戦の時から事前説明なしでスルーしやがって!)


 アラトは惑星破壊キャノン砲のテストはまったくしていない。ギリコが出力を調整したから安心して発射してください、と言うので、『まぁ、それならいいか』と気軽に考えていた。


 まさに、能天気ブッパ炸裂さくれつしちゃったわけだ。


『……3、2、1、ゼロ』


 およそ200m先に、アメスライバも登場した。


 当然、ひとこともしゃべることなく、こちらに向けウゾウゾと動き出す。瞬時にこちらを捕食対象として認識したらしい。とても思考する生物とは思えない。本能だけで行動するのだろう。


 亀ほどのノロさとは違うが、成人がゆっくり歩いた時の歩行速度くらいだろう。せいぜい時速4km程度か。


 それなら、こちらも歩き回れば捕獲されないし、直径500mの空間も決して狭過ぎることはない。闘技場が円形で角が無いのもいい。


 昨日は、パワードジャケットの新装備、飛行ジェットシューズの訓練をさんざんやった。


 困ったことに、この飛行ジェットシューズ、あまりにもバランスが悪い。軽量化されたパワードジャケットは全体で40kg減ったが、飛行シューズが20kg加算で、結局総重量は180kg。


 バックパックと肩キャノン砲のせいで重心が高い位置にあるのに、バックパックそのものにロケット系推進装置は装備されてない。ロボットアニメでよく見る、『アラト行きまぁ~す!』的なジェットが背中に無いのがキツい。


 パワードジャケットのバランス維持機能で少しは楽できるが、飛行ジェットシューズがなかなかの暴れ馬なのだ。とにかくバランスを崩しやすく、空中でヨタヨタする。


 結局、自分の腹筋、背筋でバランスを取らないといけない場面が多く、ホント、テニスで体幹鍛えていたのが助かった。


 作戦は至ってシンプル。


 闘技場の端まで逃げたら、飛行ジェットシューズで大きくジャンプしアメスライバの頭上を越えるように逆側の端まで飛んでいく。するとアメスライバが方向転換、ノロノロと追いかけてくるので目前まで待つ。


 あとは同じ事の繰り返し。


 この時間稼ぎのあいだに、惑星破壊キャノン砲のエネルギー充填をし、ブッパすればいいわけだが……。


 フル充填48時間とかできるわけないので、取りあえず2時間充填でどこまで焼き尽くせるか確認。ちなみに時間はゴーグル内に表示されるデジタル時計で管理できる。


 ギリコの考察だと、アメスライバの肉体がたとえビー玉サイズまで小さくなったとしても生存しており、かつ、捕食は行えると想定している。


 一度喰らいついたら、ちょっとずつ獲物を消化し、徐々に大きくなって元の大きさに戻っていくと。


 おまけに睡眠を必要とせず、100時間継続して行動が可能。つまりは勝利条件として、アメスライバの全細胞を余すことなく焼き尽くし終わらせる必要がある。


 強いていうなら、アメスライバの動きが緩慢で、かつ飛んだり跳ねたりできないこと、さらに、アメスライバの粘液状のボディが、衝撃波などで水飛沫が散るように分散しないことが救いだ。


 あとは、根性で乗り切りさえすれば、負ける心配は無い。あの勇者ができなかったことを成し遂げられる。



【作者より御礼】

 数ある作品群から選んでいただき、かつ、継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。


【ポイント評価の心からお願い】

 継続して読む価値がある作品だと感じていただいてる読者様、どうかお願いです。面白い作品になるようにと、一生懸命頑張ってきました。作者へのご褒美と思って、ポイント評価をお願い申し上げます。

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