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第三十五章 勇者VSアンドロイド

35.1 敗者復活戦第一試合 勇者VSアンドロイド 試合開始前 アンドロイド側


 ギリコは闘技場へ登場前の控室で待機し、武装の最終チェックをしている。


 今回携行するのは4種類の重火器。


 アサルトライフル。


 ギリコのメイン武器で、狙撃も連射も可能な高性能自動小銃。非常に扱いやすい。


 ギリコオリジナルのグレネード付・散弾式ハンドガン。


 散弾銃を二回り小さくし、ピストルのように携帯性を高めている。5m以内の射撃対象に絶大な威力を発揮する超接近戦仕様。剣士との対戦で非常に有効。装弾数3発しか撃てない。


 バズーカ。


 装弾数6発。ギリコの装備の中で最も破壊力がある。


 連射式ロケットランチャー。


 威力を低減し速射性を高めた軽量タイプの8連装ロケット弾。近距離戦で性能を発揮。



 §   §   §



35.2 勇者VSアンドロイド 試合開始前 アラトの部屋


 もうそろそろ9時、試合が始まろうとしている。


 アラトは一人、観戦用モニターの前を陣取って床に座り込み、画面を食い入るように見ている。ギリコが勇者と戦うのだから、ソファーに腰掛けてのんびり観戦している場合じゃない。


 闘技場は、ギリコも勇者も経験済みのAタイプ。


 コロッセオのような円形闘技場の中央に、縦横100m正方形の石畳式舞台があり、押し出されて場外になると負けという追加ルールがある。舞台の床面は地表から5mほどの高さ。


『シアイカイシ、3プンマエ』


 ギリコと勇者が闘技場に現れた。ギリコは収納式階段を使って舞台に上がるが、勇者は軽くジャンプして舞台に降り立つ。


 ギリコは前日の説明どおり、大人気AIタレント『クレオパトラ・ヴィーナス』こと、ちょっとエロい系女スパイもどき女戦士に変装している。


 金髪ウィッグに赤色系のサングラス、真紅のボディスーツをベースとしたコスチュームだ。


 鋭い眼光にサングラスが似合って、よりいっそう美人に見えるのだから、これまた困っちゃうわけなのだ。


「いーなぁ~、あれ、部屋の中でも変装してくんないかなぁ~」


 そして前回、ギリコは、もとい、クレオパトラ・ヴィーナスはドル札を持ち運ぶためのジュラルミンケース——マシンガン2丁隠匿(いんとく)——を携行していた。


 今回は露骨な重装備、4種類の重火器を携えている。


 ギリコは舞台に登るとバズーカを床に寝かせ、アサルトライフルを右手に、連射式ロケットランチャーを左手に構えた。散弾式ハンドガンは専用ベルトでお尻側腰部分にセットしてある。


 勇者シン・ガイディーンはスライム対戦時と変わらない。『勇者の鎧』、『勇者の剣』、『勇者の盾』を装備している。


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』


 両者間の距離はおよそ80m。


 ギリコは緊張した様子もなく無表情。


 勇者はいつもどおり、余裕の表情。


「ギリコォ~、頼むからムチャすんなよぉ~」


 アラトは祈るように声を漏らした。



 §   §   §



35.3 勇者VSアンドロイド 試合模様


『……3、2、1、ゼロ』


 ゼロ、と同時にライフルとロケット弾を連射するギリコ。

 勇者は一歩も動かず盾で全身を守る。


 勇者の鉄壁ガードで、ギリコがヒットし続けるライフル弾もロケット弾もまったくダメージを与えていないようだ。


 ギリコは左右に移動しながら連射を継続。弱点らしい部位を探るため、全身をくまなく狙い撃つ。


 攻撃を盾で受けるたび、その『勇者の盾』の中央にある円形のオーナメントがイエローサファイアのごとく輝く。同時に半透明な『勇者の剣』にうごめく光の流体がきらめき、あたかも『勇者の盾』から生命エネルギーが『勇者の剣』に向け供給されているかのように見える。


 ギリコはロケット弾を全弾打ち尽くすと、ライフル連射も中断。床に放置していたバズーカを両手で担ぎ、勇者に向け片膝をついて構えた。


 無言でバズーカを放つギリコ。


 勇者の盾にヒットすると、反動でわずかに後方へと押しやられる。それでも勇者は表情一つ変えない。


 間隔を置いて6発発射、バズーカを全弾撃ち尽くす。が、戦況に変化なし。


 バズーカ砲を床に置くと、腰に固定していたハンドガンを右手で握り、小声で呟くギリコ。


「抹殺プログラム起動! 高速格闘モード!」


 ギリコの目つきが格闘モードに変わった。突如、俊敏な挙動でいっきに勇者との間合いを詰めると、勇者が構えている盾に走るようによじ登り、ハンドガンを勇者の脳天へと向けた。


「ふん!」


 勇者は咄嗟とっさに盾の上のギリコを振り払った。バック宙返りで着地したギリコはテンポよく地上で側転、トリッキーな動きで翻弄ほんろうしつつ、ハンドガンを発砲。


 勇者も急にエンジンがかかったように、ギリコに負けないほど機敏なダッシュで広範囲の散弾を見事回避、俊足を魅せる。勢いを殺さず円を描くようにギリコに接近する勇者。


 2発目のハンドガンを阻止しようと勇者の剣を水平にぐ。


 太刀筋よりも高くジャンプしてかわしながら前方伸身宙返り半ひねり。レオタードのように全身フィットしたコスチュームで体操演技の技を決めるギリコの姿が美しい。


 着地と同時に勇者の背後を取る。が、勇者が振り向くよりも先に、もう一度前方伸身宙返り半ひねりで彼の頭上を舞う。


 その宙返りの頂点で、真下にいる勇者に向け散弾を発射。


 辛くも盾で散弾を防御した勇者、半ひねりジャンプで背後に着地するギリコの優位を警戒し、前転で身を翻し正面から対峙する。


 双方が向き合って対峙した直後、真正面に飛び出すギリコ。最後の散弾を放つと、間髪入れず勇者の足元を狙ってグレネードを発射。


 勇者が散弾を盾で防御すると同時に、足元の石畳みがグレネードで破壊される。後方へ飛ばされバランスを崩した勇者の背後は舞台の端、勇者の落下を狙って猛然と跳び蹴りを繰り出すギリコ。


「やぁぁぁぁぁぁー!」


 かわしようがないと誰もが思った瞬間、勇者はあろうことか身体を外に向けひねる。そのまま左手の盾でギリコのキックを受け止めると同時に、右手の大剣を舞台の外、5m下の地面に向け突きを放った。


「だりゃぁ!」


 『勇者の剣』から、破壊エネルギーの塊が凄まじい勢いの衝撃波となって放出される。


 舞台より外の地面がえぐれ、木っ端微塵に破壊されると、その反動で勇者の身体は舞台の内側へと飛ばされた。盾によってガードされたギリコもその勢いで弾き返された。


 破壊エネルギーを放った『勇者の剣』は、その余韻を残してキラキラと煌めいている。


 石畳みの上に横たわるギリコが上体を起こすが、ハンドガンは全弾撃ち尽くし、もう手はない。


 危機を脱した勇者はギリコにゆっくりと近づく。


「さぁ、忍者姫、悪いことは言わねぇ。お姫さんがさんざん撃ちまくったおかげで『勇者の剣』がいきり立っている。これから必殺技を繰り出すが、今のうちに退避した方がいいぜ」


 勇者は呼吸を整えると、剣を天高く掲げ構える。右手を振り回し上半身を使って剣先で渦を作るように連続回転させる。


「ガイディーン・トルネェードォ!!」


 巨大な渦巻き状の旋風が勇者を中心にして発生し、剣先が空気を切り裂き無数のカマイタチを生み出す。トルネードという技名ではあるが、暴風の渦はむしろ縦方向に伸び上がらず、ひたすら水平方向に広がって正方形の舞台全面を覆い尽くしていく。


 ゴォーという轟音ごうおんとともに巻き起こった強烈な旋風は、中心に立つ勇者以外のあらゆる物体を吹き飛ばし、舞台の上に存在することを許さない。


 しばらくして勇者が奥義を終えると、舞っていた砂埃すなぼこりがゆっくりと地面に吸われていく。静けさを取り戻した舞台の真ん中で、勇者は仁王立ちしていた。


 その奥義を最後まで観察することなく、自ら舞台の外へと避難していたギリコと目が合う。


「賢い選択だ、お姫さん」


 ギリコはプイッとソッポを向き、別に! という態度で返した。


 勇者シン・ガイディーン、敗者復活により第二回戦進出!



【作者より御礼】

 数ある作品群から選んでいただき、かつ、継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。


【ポイント評価の心からお願い】

 継続して読む価値がある作品だと感じていただいてる読者様、どうかお願いです。面白い作品になるようにと、一生懸命頑張ってきました。作者へのご褒美と思って、ポイント評価をお願い申し上げます。

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