第006話 エドガーと2人で…
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【白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?】
学園から帰宅したヴィエナは書斎の机に向かい、医療の本を開いていた。
領地改革の一環として、さまざまな薬草の栽培が必要だと実感していたからだ。
しかし、その知識を得るために手に取った本は、予想以上に難解だった。
「メディカル・クールハーブ…………」
ヴィエナは薬草のページをめくりながら、考え込む。
「寒冷地に適した薬草は…うーん、これだけでは足りないわ。」
薬草に関する本には、いくつかの名前が載っていたものの、それらが実際にエムリット領の環境でうまく育つかどうかがわからない。
彼女は思わずため息をつく。「こんなに難しいとは思わなかったわ……。」
その時、ふと彼女の頭に浮かんだのは、エドガーの顔だった。ウェルナー伯爵家の嫡男で、医学を学んでいると言っていた彼。
薬草に関しても何か知っているのではないかと……
「なんか怖いけど、エドガー様に聞いてみようかな。」
そう思い立った彼女は、侍女のエリザに手紙を依頼し、エドガーに助けを求めることにした。
エドガーは手紙の内容を了承した。
――数日後、ヴィエナの書斎にエドガーが訪れた――
「学園以来ですねヴィエナ嬢」
誰もが認める綺麗な容姿のエドガー。
ヴィエナも表には出ないが、当然綺麗な顔だと思った。
「お越しいただきありがとうございます。薬草の事ですがどうしても本だけでは難しくて……」
「いえ、こちらこそ。薬草のことなら、少しでもお役に立てればと思いまして。」エドガーは穏やかな笑顔を浮かべ、席に座る。
ヴィエナは本を開きながら言った。
「実は、寒冷地で育つ薬草について悩んでいるのです。特に医療用として使えるものが必要で……。」
挨拶が終わるとさっそく本題の医療の話に入った。
エドガーはじっと本を見つめ、しばらく考え込む。
「寒冷地でも育つ薬草はありますよ。例えば、ナイトハーブやセージなどが挙げられます。これらは寒さに強いですから、エムリット領でも育つと思いますよ。」
「なるほど……」ヴィエナは熱心にメモを取りながら続けた。「では、栽培において気をつけるべきことは何でしょうか?」
エドガーは少し考えた後、答える。
「薬草は土壌の管理が大切です。特に湿度や温度の調整が必要です。春先に種を蒔くと、のびのび成長してくれます」
「あと害虫対策で、てんとう虫を放つのも忘れずに」
ヴィエナは理解した様子で頷く。
「薬草の栽培は少し手間がかかりますが、育てた薬草が病気の治療に役立つことを考えると、その価値は大きいです。」エドガーは優しく微笑んだ。
その後も、ヴィエナはエドガーの話に次第に心が引き込まれていった。
彼の知識は豊富で、何よりも実践的に使える話ばかり。
今まで一人で勉強していたヴィエナにとって、何よりも有意義で楽しい時間だった。
「エドガー様、ありがとうございます。本当に助かります。」ヴィエナは心から感謝した。
「どういたしまして、是非試してみてください」
エドガーは微笑みながら答えた。
ヴィエナは頷きながら思った。
この話をしていると、時間があっという間に過ぎていった。
エドガーと過ごすこのひとときが、彼女にはとても心地よく感じられた。
普段はあまり余裕を持てない自分にとって、彼との会話はとても新鮮で、心をリフレッシュさせてくれるものだった。
「エドガー様……」ヴィエナは少し躊躇いながら、声をかけた。
「実は、少し気になることがあって…あなたには婚約者がいらっしゃるのですか?」
「もしいらっしゃるなら、2人で会うのはまずいかと」
エドガーは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべて答えた。
「いませんよ。今は医学の勉強に集中しているので、そういったことを考える余裕はなくて…………」
「父が、早く婚約者を決めろとうるさいのですが……」
ヴィエナは心の中でホッと息をついた。
好意を抱いているから、婚約者の有無を確認したのではない。
彼と勉強の時間がとても楽しかった。
また一緒に医療や領地運営について話したい。
そう思っていたヴィエナは彼が婚約者がいないことでまた会える。
そう思い心が軽くなるのを感じた。
「そうですか……それなら、少し安心しました。」ヴィエナは答える。
エドガーはその表情を見て、にっこりと微笑んだ。
「次回は、サイーレ病について教えてください」
「はい、私にできる事なら……」
時間はあっという間に過ぎ、二人は会話を終え、次の約束を交わして別れた。
しかし、ヴィエナはその後も、エドガーとの会話を思い返し、胸の中に暖かい感情を抱いていた。