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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
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第051話 勝利の予感…



クラシック街でも、スキルシェアリングサービスは圧倒的な反響を呼んだ。

講座の受付はわずか一日で埋まり、クラシック街での予約総額は460万ジュールに達していた。

コレスニック街と合わせて860万ジュール。


広場に集まったヴィエナ・エドガー・ミランダ・ソフィアたちは、皆どこか晴れやかな表情を浮かべていた。


「予約でこの調子なら……あと何回か別の街で宣伝すれば、アルバート家の売上なんてすぐに超えられそうね」


ヴィエナが感慨深く呟くと、その隣でエドガーの控えていた従者が情報を伝える。


「アルバート家は……この2ヶ月で、およそ2500万ジュールほどの収益を上げる見込みです」


ヴィエナは小さく頷き、視線を仲間たちへと向けた。


「あと3都市で宣伝活動が成功すれば……本当に追い抜けるわね」


すると、ソフィアが微笑みながら静かに言った。

「――なら、勝てそうですね」


その口調には確信が宿っていた。誰もが、勝利を疑わなかった。


「じゃあ、もう今日は解散しませんか? ねえソフィアさん、お願い! ピアノの演奏、聞かせてください!」


はしゃぐミランダに、ソフィアはふっと柔らかく微笑んで応える。


「ええ、よろこんで。……すぐそこに古い劇場があります。そこで弾きましょう」

ミランダが嬉しそうに手を打ち、少女のような笑顔を見せる。


ヴィエナは二人を微笑ましく見守った後、自身の予定を口にした。


「私は一度、領に戻るわ。商業が始まった後に、サービスがきちんと提供できるかどうか、運営体制の確認が必要よ」


「僕は父と相談して、剣術講座の内容を最終調整する。お客様が増える前に完璧にしておきたいからね」

エドガーが真剣な目を向けると、ヴィエナは満足げに頷いた。


「よし、それぞれやるべきことをして、また合流しましょう。勝利は、すぐそこにあるわ」


4人はうなずき合い、それぞれの道へと散っていった。


――そして、ヴィエナは馬車に乗り込み、自らの領・エムリット領へと戻っていった。

領に着いたヴィエナは、夕暮れの光を浴びながら自室のバルコニーに立ち、深く息を吸い込んだ。


「……やっと、ここまで来ましたわ」

眺める庭園の緑が、懐かしく目に染みる。


「長かった……でも、これでアイク様に勝てる。領の皆も、もう悲しませずに済む。私は……ちゃんと、守れた……」


静かに目を閉じ、笑みを浮かべるヴィエナ。


そのままベッドに倒れ込み、着替えもせずに眠りに落ちていった。


「……やっと……やっと、復讐ができる……」

安堵と疲労の中で、少女は深い眠りについた。


翌朝──

「ヴィエナ様! ヴィエナ様、大変です!」


扉を激しく叩く音と、エリザの緊迫した声が響いた。


寝ぼけまなこで目をこすりながら、ヴィエナは上体を起こす。


「……な、何? まだ早いわよ……」


「予約の、大量キャンセルの連絡が……次々と入っています!」


「……えっ?」


一気に目が覚めた。ヴィエナは掛け布団を跳ね除け、裸足のまま扉へと駆け寄る。


「どういうこと? 詳しく聞かせて!」


エリザが急ぎ資料を手渡しながら、報告を続ける。


「本日未明から、クラシック街とコレスニック街で合計320万ジュール分の予約キャンセルが発生しました。理由の多くが、“信用問題”や“他に良い講座を見つけた”など、内容が不明瞭なものです」


「そんなはず……! あれだけ好評だったのに!」


震える手で資料をめくるヴィエナ。目の前の数字が現実だとは信じたくなかった……


残り42日・サービス開始まで2日

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