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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
52/75

第050話 宣伝開始


コレスニック街

――――――――――――――――――――――


「ここがエドガー様がアヌビスさんをスカウトした街なのね……」

馬車の窓から顔を出しながら、ヴィエナが感心したように言う。


「コレスニック街……私も初めて来ましたわ。ずいぶん活気のある場所なのね」

隣に座るミランダも、珍しそうに窓の外を眺めていた。


馬車が広場に止まり、二人が降り立った瞬間だった。


「えっ、あれ……ミランダ様じゃない!?」

「きゃーっ! 本物!?」


「ミランダ嬢がこの街に!……」

通行人たちが次々と足を止め、瞬く間に人だかりができる。


目を丸くするミランダに、ヴィエナがくすりと笑って言う。


「やっぱり予想通りね」

「ちょっと……恥ずかしいですけど」


ヴィエナとミランダは顔を合わせて頷いた。

続けてミランダは、軽く頬を紅潮させながらも、一歩前に出て人々に向き直る。


「皆さん、どうか聞いてください!」

ピンと伸ばした背筋、美しい声、そして自信に満ちた瞳。


「私が愛用している化粧品を使った、美容講座をこの街で開催いたします!」


 

「えーっ!?」

「ミランダ嬢のようになれるチャンス!?」

「絶対に行く! 逃すわけないじゃない!」

市民の女性たちの歓声が広場に響き渡る。


その声が収まる前に、ミランダはさらに言葉を重ねた。


「そしてもう一つ。アヌビスの占い師への道──その基礎を学ぶ講座も同時開催いたします! 今なら、彼女が力を込めた特製タロット付き!」


「えっ、うそ!? 占ってもらう側じゃなくて、なる側になれるの!?」


「……これは申し込むしかないでしょ!」


「これで人生変わるかも……!」

群衆の熱気はさらに高まり、興奮の渦が広場を包んでいた。


ヴィエナは少し後ろからその光景を見つめ、思わず口元を緩める。


「やっぱり……ミランダ嬢はすごい。想像以上ね」


(うふふ、光栄ですわ……)

コレスニック街ではこの日、ミランダが広告塔として前面に立ち、次々に講座の宣伝を行った。


ミランダの化粧品講座。

アヌビスの占術体験講座。

ウェルナー家の剣術講習。

そして、ラビアの家庭料理教室──。


多岐にわたるコンテンツが次々に紹介される中、人々の関心は爆発的に高まった。


――なんと一日で予約総額400万ジュールという驚異の売上を記録した。


「やったわヴィエナ!」


ミランダがヴィエナに向かって笑顔を見せ、勢いよくハイタッチを交わす。


「本当にミランダのおかげよ!ありがとう!」


互いの笑顔に、二人はふっと自然と呼び方が変わっていた。


「さ、ヴィエナ。次の街に行きましょうか?」


「うん、ミランダと私が組めば、どんな街でも行ける気がする!」

二人はしっかりと握手を交わし、再び馬車へと乗り込んだ。


馬車は音を立てて走り出し、次の目的地──クラシック街へ向かって進んでいく。


クラシック街

――――――――――――――――

「……あら、もう到着したのね」


だが、クラシック街の入り口には、すでに多くの人々が集まっていた。


「何でしょう、あの人だかりは?」


不思議そうに言うミランダに、ヴィエナが促す。

「とりあえず、馬車を降りて様子を見ましょう」


二人はそっと馬車を降り、人々をかき分けて前へ進んだ。


すると──その中心にいたのは、見覚えのある二人の姿。


「……エドガー?」

ヴィエナの声に、青年が振り返り、にやりと笑って親指を立てた。



エドガーの隣で──ソフィアが静かに、優しく微笑んでいた。

「ソフィアさん……!」


「ついに……参画してくれることになったんです!」

興奮気味にエドガーが叫ぶ。


「これで、スキルシェアリングサービスに必要な全ての人が揃った。みんなで一緒に、アルバート家を──ぶっ倒そう!」


その声に、ヴィエナも、ミランダも笑顔でうなずく。

それぞれの志と想いが、今ここに一つに重なっていた。


新連載も本日更新しています。

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