第005話 学園での出会い
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【白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?】
「はぁ憂鬱……また学園での社交会」
ヴィエナは苦い思い出ある学園へ向かった。
そして学園の門をくぐると、すぐに周囲の視線が集まるのを感じた。
生徒たちは、彼女を興味深そうに、あるいは冷ややかに見つめていた。
「見てヴィエナが来たわよ………」
「最近やたらと話題になっているけれど、サイーレ病の感染を止めたそうよ。」
「辺境伯の縁談を蹴ったそうよ」
「何それお高くとまりすぎでしょ」
「傷モノのくせに、社交界で成功できるとでも思っているのかしら」
ひそひそと交わされる陰口は、はっきりと聞こえていた。ヴィエナは足を止めずに歩を進めながらも、表情を変えなかった。
しかし、背後で聞こえた次の言葉には、思わず立ち止まってしまった。
「ヴィエナ良かったわね。たまたまサイーレ病がエムリット領で少なかったから、うまく対策が当たって」
「私の領では、サイーレ病が多すぎて無理よ」
それを聞いた瞬間、ヴィエナは作った笑みを浮かべ、くるりと振り返った。
冷ややかな笑みを浮かべたまま、陰口を叩いていた令嬢たちに視線を向ける。
「まあ、お気の毒に。皆さんは領地の管理すらまともにできず、サイーレ病で苦労なさっているのですか? 私の成果が妬ましくて仕方がないのですわね」
「それに、サイーレ病は衛生管理が悪いと感染する病よ。自分の領を汚い場所と言っているようなものですわ」
陰口を言っていた令嬢たちは、一瞬言葉を失った。
「い、言ってくれるわね……!」
「事実を申し上げただけですわ。」
ヴィエナの皮肉混じりの言葉に、令嬢たちは顔を真っ赤にしながら黙り込んだ。
「おや、ヴィエナ嬢はさすが鋭い言葉を使われる」
不意に、どこか愉快そうな声が響いた。
ふと周囲がざわめき、ヴィエナが振り向くと、長身の青年がこちらに歩み寄ってきていた。
淡い金髪に深い青の瞳、端正な顔立ちと洗練された身のこなし——誰もが目を奪われる美男子だった。
「……あなたは?」
「失礼、名乗るのが遅れましたね。私はエドガー・フォン・ウェルナー。
ウェルナー公爵家の嫡男であり、現在は医学を学んでいる身です」
「医学を?」
ヴィエナは彼の言葉に少し驚いた。貴族の中でも医学を学ぶ者は少ない。ましてや、名門ウェルナー公爵家の嫡男ともなれば、普通は剣術や政治を学ぶはずだった。
「ええ。貴族であれ、病に倒れれば同じ。それに僕は剣術が苦手で、別の方向からウェルナー領を守りたいと思ってます。」
エドガーは穏やかに微笑んだ。ヴィエナは彼の瞳を見つめながら、妙な感覚を覚えた。
これまで貴族社会の男たちは、彼女を「美しくない傷モノ」として敬遠するか、あるいは陰口を叩く者ばかりだった。
しかし、エドガーの視線には、そういった色がまるでなかった。
「ヴィエナ嬢の知識には、興味があります。よろしければ、今度じっくりお話しさせていただけませんか?」
「私も新しく知れることがあるならお願いします」
医学を学ぶ上で読書のみだった、ヴィエナにとって医学者から教わる機会は貴重。
ヴィエナの心には僅かな興味が湧いていたが、それを表に出さず、いつも通り冷静に対応をした。
「エドガーがあの女と2人でお茶?」
学園のヴィエナを蔑む貴族が言った。
彼は美青年で周囲から憧れの目で見られていた。
こうして、彼女は学園での再出発を果たすと同時に、新たな出会いを迎えることになったのだった。