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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
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第045話 商業戦の勝機

新連載の白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?

もし気に入って頂けたらこちらも読んで頂けるとうれしいです!


評価・ブックマークお待ちしております♪




エムリット領


「ヴィエナ! 会えて嬉しいよ!」


開口一番、感情を隠さずに駆け寄ってきたエドガーを見て、ヴィエナは不思議そうに返事した。


「たった五日ぶりじゃないですか」

昨日のエドガーと違いヴィエナには、いつも通りの自信と明るさが宿っている。


エドガーは立ち止まり、真っ直ぐにヴィエナの瞳を見つめた。その目はうっすらと潤み、まるで堰を切ったかのように言葉が溢れる。


「正直……ヴィエナの手紙を読むまで、本当に諦めかけてたんだ」


「えー?私は一度も諦めたことなんてなかったですよ?」


あっけらかんと返すヴィエナに、エドガーは唇を噛み、深く頭を下げた。


「すまない……本当に、すまない、ヴィエナ……!」


「ええ、全然気にして無いですよ」

彼女は優しく頷き、けれど次の瞬間、軽く笑ってこう続けた。


「隣でそんなこと言ってたら、ぶっ飛ばしてましたけど!」


「……はは……それは怖いな……」


二人の間に、久しぶりに柔らかい空気が流れる。そしてヴィエナは、くるりと踵を返し、書類の束が置かれた机の方へ向き直った。

――――――――――――――――――――――――

「さて、それじゃあ時間も限られていますし……私が考えた、アルバート家を倒す戦略を話しますね」


手にしていた一枚の紙を掲げながら、ヴィエナは力強く言った。


「その名も、スキルシェアリングサービスです!」


「……スキルシェアリングサービス?」


「ええ! これは、ケーキ店やカフェなんか遥かに超える高収益事業。今からでもアルバート家を逆転できる可能性があります!」

言い切るヴィエナの目は真剣そのものだった。


「具体的にはどういうことをするんだ?」


「簡単に言えば、“この国の一番すごい人”の力を、皆が使えるようにするサービスです!」


ヴィエナは資料をめくりながら、次々に例を挙げていく。


「例えば──占い師アヌビスによる“あなたも占い師になれる講座”!」


「……アヌビスが教えるのか?」


「そうです! そして、ミランダ嬢の愛用する化粧品を用いて“美貌を手に入れるスキンケア講座”!」


「それは……確かに人気が出そうだな」


「さらに! ウェルナー家直伝の“本物の剣術指南”まで!」


「うちの……か。父さんに話してみる価値はあるな」


「このように、国のトップクラスの人たちの“スキル”を借りて、その魅力を一般の人にも共有する。つまり、スキルそのものを“商品化”していくんです!」


ヴィエナの情熱がエドガーにも伝わっていく。


「なるほど……今はアヌビス、ミランダ嬢、そしてウェルナー家の三件だけど、さらに協力相手を増やしていけば、どんどんサービスが拡大するってことか」


「その通りですわ。ですがそれだけではありません。講座と一緒に化粧品や水晶も販売する事が出来ます!」

ヴィエナの戦略はとてつもない大きさの人々を対象にした商業だった。


「ミランダ嬢には昨日お願いして、快く承諾していただきました」


「じゃあ、次は……アヌビスか」

エドガーは少し視線を逸らす。


「……」


「エドガー様? アヌビスとの交渉は上手くいきそうですか?」


「だ、大丈夫! 上手く進んでるよ!」

こんな所で水はさせない……。少しだけ額に汗を浮かべながらも、エドガーは力強く頷いた。


「良かったですわ。それじゃあ、スキルシェアリングサービスの件、アヌビスにもよろしくお願いしますね。

私は、次の協力候補……国一番の料理人・ラビアに会いに行ってきます!」


「じゃあ、僕は……国一番のピアニストのソフィアに会いに行こうかな」


「良い選択ですわ。ソフィア様の演奏には、民を癒す力がありますから」


ヴィエナは笑顔で頷き、最後に手帳を開いて日付を確認した。


「サービス開始は──二十日後としましょう」


「二十日後!? それだと、あと三十日しかないぞ……」


エドガーの声に焦りが混じるが、ヴィエナはその手を軽く振って答える。


「色んな人に協力を仰げばいいんですわ。三十日あれば充分です。勝ちましょう、エドガー様。絶対に、ね」


その目には、炎のような強い光が宿っていた。

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