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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
41/75

第40話 ミランダ嬢

毎日投稿継続中(41日目)


シュティシア伯爵領

――――――――――――――――――――――ーー


居館には、花々と光が溢れ、その中心に佇む一人の令嬢

――ミランダ・シュティシア。


金糸のような髪は光を受けてやわらかに波打ち、編み込まれた花飾りが春の香りを漂わせる。

翡翠を溶かしたような深みのある瞳は、見つめる者の心をふわりと包み込むようで、誰に対しても決して刺々しさを見せることはない。


真珠のような透き通る肌と、絵に描いたような端整な顔立ち。細く長い首筋にかかる髪先さえ、舞うように美しい。

姿勢は隙なく優美で、立ち姿一つで見る者の目を奪ってしまう。


「まるで夢を見ているようだわ……」

「どうして……同じ時代を生きているのに、ここまで美しいの?」

周囲の人々はそう囁きながら、足を止めずにはいられない。

彼女はまさに“人形姫”。

その名に相応しい、時代の理想を体現した存在だった。


「いつも、髪を整えてくださってありがとうございます」

ミランダは、髪結いの女性に、微笑みかけながら続けた。

「次は……私があなたの髪を結ってみたいの。もしよければ、結び方を教えてもらえませんか?」


その申し出に、髪結いの女は驚き、手が震えた。

「わ、私なんかでよければ……」

緊張のあまり、ミランダと目を合わせることすらできない。


そんな時――

コン、コンと控えめなノック音。


「ミランダ様、ご来客です」

執事がドアを開け、恭しく告げる。


「来客? 今日、そんな予定あったかしら」

ミランダが不思議そうに眉をひそめる。


「エムリット伯爵家の、ヴィエナ嬢という方が……」


「――あの、話題の?」

ミランダは瞳を見開く。

(誰にも媚びず、冷静沈着……しかも、今はアルバート公爵家と争っているという、あの……)


「通してちょうだい」

すぐに立ち上がり、裾を翻した。


大広間に通されたヴィエナは、深く一礼をする。


「突然の訪問、失礼いたします。ヴィエナ・エムリットと申します」


「存じておりますわ。ミランダ・シュティシアと申します」

ミランダは周囲を一瞥し、にこやかに笑いながら口を開いた。

「ねえ、ちょっと、部屋を外してくれる?」

控えていた侍女を部屋から出るようにミランダは伝えた。

「で、ですが……初対面でお二人きりは……」


「いいから、いいから」

ミランダは悪戯っぽくウインクしながら、侍女を部屋の外へ促した。


大きな部屋に残されたのは、ヴィエナとミランダのふたりだけとなった。

「あ、あのぅ……」

行動したものの、ヴィエナは学園で令嬢に蔑まれた経験から、貴族令嬢と対面するのが苦手。

ヴィエナが戸惑いながら声を発すると、ミランダは迷いなくすーっと距離を詰めてくる。


その柔らかな香りと、瞳の煌めきが近くなりすぎて、ヴィエナは思わず身を引きそうになった。

(ち、近い……!)


「私……ずっと、ヴィエナ嬢に憧れておりましたの!」

ミランダの声は、まるで秘密を打ち明けるように甘く、真剣だった。


「……憧れ?」

戸惑うヴィエナに、ミランダは勢いよく頷いた。


ミランダは瞳を輝かせ、手を握ってくる。

「はい! いつも街で噂になってますの。エムリット領に、どんな相手にも臆せず、果敢に立ち向かう聡明な美女がいるって。お会い出来て光栄です。」


「あなたのように強くて、美しい方……本当に尊敬しております」

  

ヴィエナは思わず言葉を失った。


(国で1番美しい人が、私に……?)


思いもよらない、好印象で国で1番の美貌の令嬢に会うことができたヴィエナ。

商業に結びつけることが出来るか、それはまだ誰も知らない。


決戦終了まであと52日

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