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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
40/75

第39話 足で

毎日投稿継続中(40日目)


新連載

白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?

本日更新しています。読んで頂けると幸いです。

ウェルナー公爵家の大広間

――――――――――――――――――――――――


重厚な壁画とアンティークな家具に囲まれたその空間で、ヴィエナとエドガーは、これまで各々が考案した商業案について意見を交わしていた。

 

エドガーが穏やかな口調で問いかける。

「ヴィエナの方はどうだ?何か面白い案はあるのか?」

 

ヴィエナは一瞬、ため息をつきながら首を振った。

「いや、まだ良い案は全く浮かびませんわ。」

 

エドガーは続ける。

「元海賊レストラン、香草の販売、領地のお米の販売、手芸教室……」

 

それぞれの案を挙げるたび、ヴィエナの表情は曇り、軽いため息が漏れる。

「どれも駄目か……」と、エドガーが呟くと、ヴィエナは辛辣に応じた。「全没ですね。どの案も小規模で、アルバート家に対抗できる力が不足しています。」


「………………はぁ」 

2人して沈黙とため息が連続し、大広間に不安な空気が流れ続ける。


「まだ時間はある。落ち着いて、もう一度考え直しましょう。」

 

エドガーは街の地図と資料を指差して呟いた。

「そうだね。アルバート領の動向は、従者たちが常に追ってくれている。整理すると、ケーキ店が3店、さらに工事中のお店が2店出ているらしい。連日行列で、おそらく、ひと月で2000万ジュールは簡単に収益が上がるだろう」

 

ヴィエナは眉をひそめ、静かに頷く。

「小さな商業を立ち上げても、無駄という事ですね。今こそ、一撃で大きな収益を生み出す商業を考えなければ……」

 

エドガーがさらに疑問を投げかける。

「一番収益が大きいのは……一体何だろうな?」

 

その問いに、二人はしばらく言葉を失い、頭を悩ませる。室内には、双方の不安と焦燥が漂う。

 

やがて、ヴィエナが決然と口を開く。

「あー、もう分かりません!」

エドガーは突然のヴィエナのその発言に、少し戸惑った表情を浮かべた。ヴィエナはネガティブな気持ちで言葉を発した訳ではなかった。

これまで、読書と話し合いで全て決めていた商業のプランの方向転換を決めていた。


「分からないなら、分からないなりに行動しましょう。足で情報を取りに行きます。まず、世の中の色んな『1番』の人に会って、直接意見を聞くのよ!」

 

エドガーはその提案に何か気づいたような表情を浮かべた。

「なるほど。つまり、どの分野でもトップに君臨する人々と会えば、何か良いヒントが得られるということだな?」

彼自身も、この停滞した状況を何とかしないといけない。そんな思いだったからこそ、ヴィエナの提案に乗ることにした。

 

ヴィエナは完全にこれまでの追い込まれた状況から、切り替えた表情で呟いた。

「ええ、その通り。私はこの国で『1番美しい』と言われるミランダ嬢に会ってみるわ。彼女は美の基準を知っているし、我々の商業に新たな視点を与えてくれるはず。」

 

さらに、ヴィエナは続けた。「エドガー様、あなたはこの国一番の占い師、アヌビスに会いに行ってください。未来の兆しを読むその力で、私たちに示唆を与えてほしいのです。」

 

エドガーは静かに頷き、深い決意を胸に受け入れた。「分かった。必ず、ヒントを掴んでみせよう。」

 

今はまだ具体的な答えは見えていない。しかし、各々が足を運び、業界の頂点に君臨する者たちとの対話を通じて、やがて一撃で市場を揺るがすような大規模な商業プロジェクトの種が芽生えるはずだ。

 

「絶対に、何かを掴んで帰ってくるわ」とヴィエナは力強く宣言する。

 

こうして、二人はそれぞれの道へと足を踏み出す。ミランダ嬢に会いに行くヴィエナ、そして占い師アヌビスのもとへ向かうエドガー。市場の激戦を前に、二人の情報収集と探求の旅が始まろうとしていた。

 

彼らは、各々が掴んだ「1番」の力を結集させ、エムリット領に新たな希望と大勝負をもたらすため、全力で行動する決意を固めた。


決戦終了まであと53日

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