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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
32/75

第032話 ヴィエナ様?

毎日投稿継続中(32日目)


明日新連載します。

白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?

どうか読んで頂けると嬉しいです。

「香水の販売が開始して、アルバート領を越えることが出来れば、父と一緒にアルバート領へ挨拶に行かないか?そしてこの香水をヴィエナが作った、そう言ってやらないか?」  


ヴィエナはエドガーとの会話を終え、彼の提案に応じる形で悪女のような微笑みを浮かべた。

彼女の胸中には、過去の悔しさや屈辱を思い出していたが、それを商業の成功へとぶつける決意を固めていた。


「では、そろそろ領へ帰らないと」

エドガーは翌日の縁談に備えるため、自身の寮へと戻っていった。彼の背中を見送りながら、ヴィエナは複雑な感情を抱えた。


「私たちも領で、香水作りの進行を確認しないと」

エムリット領への帰路、馬車の中でヴィエナと侍女のエリザは静かに揺られていた。

エリザから見た、窓の外を眺めるヴィエナの横顔は、どこか寂しげでな顔をしていた。


領地に帰り、ヴィエナとエリザが香水作りの進行確認と、予約者の整理を行っていると、エリザは意を決して口を開いた。


「本当に良かったのですか?」


ヴィエナは視線をメモに向けたまま、静かに問い返した。


「何が?」


エリザは一瞬ためらったが、意を決して続けた。

「エドガー様との結婚のことです。明日の縁談後、エドガー様は婚約されるかもしれません。私は、まだエドガー様はヴィエナ様のことを今でも好きで仕方ないと思います。」


ヴィエナは深く息を吐き、目を閉じた。彼女の胸中には、エドガーへの想いと領地の未来への責任が交錯していた。


「エムリット領の発展が、今の私にとって最も大切なことなの。」


その言葉とは裏腹に、ヴィエナの目には涙が滲んでいた。彼女は拳を握りしめ、声を震わせながら続けた。


「私だって……結婚したかった。」


エリザはヴィエナの涙に驚き、深く頭を下げた。

「申し訳ありません。ヴィエナ様がそこまでお考えになっているとは知らず、軽率なことを申し上げました。」


ヴィエナは涙を拭い、微笑みを浮かべた。

「でも、大丈夫よ。」


エリザは顔を上げ、安堵の表情を見せた。

「よかったです……ヴィエナ様は心中複雑で苦しい思いをしていると思い心配でした。」


しかし、ヴィエナの瞳には新たな決意が宿っていた。

(そんな思いは心の中で何周もしているうちに無くなったわ)

「アイク様や学園の貴族令嬢たちに、一泡吹かせてやる為なら失恋なんて安いわ」


その言葉と共に、ヴィエナの周囲にはただならぬオーラが漂い始めた。エリザはその迫力に圧倒され、言葉を失った。


ヴィエナは窓の外を見つめながら、静かに呟いた。

「一ヶ月後が楽しみね。この香水が売れたらアルバート領は間違いなくウェルナー領が超える。エムリット領もそこに並べるはずよ」


彼女の瞳には、未来への強い意志と覚悟が映し出されていた。

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