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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
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第030話 ひらめき

毎日投稿継続中(30日目)

ヴィエナたちはダニエル公爵との会談を終え、エドガーの私室へと戻ってきた。

部屋には静寂が広がり、先ほどの緊張感がまだ残っているようだった。エドガーは窓辺に立ち、外の景色を眺めながら深く息を吐いた。


「エドガー様……先ほどの結婚の話、申し訳ありませんでした」

ヴィエナは静かに口を開き、申し訳なさそうに頭を下げた。


エドガーは微笑みながら振り返り、首を横に振った。


「いや、謝る必要はないよ。正直、こうなることは予想していたんだ。君をウェルナー領に招いたのは、もしかしたらここで暮らしたいと思ってくれるかもしれないという小さな期待があったから何だ」


ヴィエナは驚きつつも、エドガーの率直な言葉に心を打たれた。


「そうだったんですね……」

エドガーは一歩近づき、ヴィエナの肩に優しく手を置いた。


「これからは、領地を発展させるパートナーとして共に頑張ろう」


ヴィエナは力強く頷いた。


「はい、よろしくお願いします」

ヴィエナとエドガーは、既に前を向いていた。そして、

共に領地を拡大できる事を楽しみにしている。


少しの沈黙の後、ヴィエナはふと疑問を口にした。

「ダニエル公様がアルバート領を超えたいとおっしゃっていましたが、実際のところ、ウェルナー領とアルバート領の間にはどのくらいの差があるのでしょうか?」


エドガーは少し考え込んだ後、説明を始めた。


「アルバート領は広大な土地を持ち、農業を中心とした商業活動で栄えている。一方、ウェルナー領は騎士団の活動が主で、農地は限られている。そのため、商業面ではアルバート領に大きく遅れを取っているんだ」


ヴィエナは真剣な表情でエドガーの言葉を受け止めた。


「なるほど……では、ウェルナー領ならではの強みは何かありますか?」


エドガーは少し微笑みながら答えた。

「それは、特有の植物資源だ。他の領地にはない、医療や香料に適した薬草や植物が自生している」


「それはとても強みですね」

ヴィエナは顔が明るくなり、エドガーの方を向いた。


しかし、彼の表情は曇っていた……

「でも、現状では騎士や馬の治療に必要な薬草の栽培で手一杯で、それ以外の植物を活用する余裕がないんだ」


ヴィエナは少し考え込んだ後、提案した。

「一度、ウェルナー領にある薬草や植物をこちらに集めていただけますか?」


エドガーは頷き、すぐに従者たちに指示を出した。数時間後、さまざまな薬草や植物が部屋に運び込まれた。


ヴィエナは一つ一つ手に取り、香りを嗅いだり、葉の感触を確かめた。そして、ある植物に目を。


「これは……」

彼女の目が輝いた。

「この植物、貴族の間で使われている香水よりも良い香りがします。」


「ロイヤル草ですね。これは非常に高品質な香料の原料になります。ロイヤル草もウェルナー領にしかありませんが、試作品で香水を10個作りましたが売れなかったんです」

エドガーが過去の経験を語り、不安な表情を浮かべた。

新興の香水は、既存の高級な香水に比べて信頼性や知名度が低く、貴族たちが手を伸ばしにくい。

それに、貴族家系では、代々同じ香水を使用する習慣が根付いていたのだ。


ヴィエナは自信を持って答えた。

「それは、売り方が誤っていたのだと思います。それに

香水だけでなく香料は、食品や飲料の風味付け、化粧品や香水の製造、さらには医薬品や日用品の香りづけなど、多岐にわたる用途があります。」


エドガーはしばらく考えた後、つぶやいた。

「なるほど、ヴィエナ…君の事だから先が見えているんだろう。僕には全く想像出来ない……」


ヴィエナは既に勝利を見出したかのように言った。

「商品をもう、作っちゃいましょう。土地が足りないのならエムリット領で栽培を請け負います」


こうして、ウェルナー領とエムリット領の新たな挑戦が始まった。

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