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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
24/75

第024話 最後の勉強会?

毎日19時に投稿を頑張ります(23日目)


評価、星1でも星5でも喜びます。

「エドガー様の力になりたいです」

その言葉が、まっすぐにエドガーの心に届いた。


エドガーは一瞬言葉を失った後、そっとヴィエナの手を握り返した。

「……ありがとう、ヴィエナ。でも、僕の問題に君を巻き込みたくはない」


ヴィエナはゆっくりと首を振る。

「巻き込む、巻き込まないの問題ではありません。私は……エドガー様のことが大切だから、放っておけないのです」


彼の婚約が決まってしまえば、もう以前のようには会えなくなるかもしれない。

そう思うと、胸が締めつけられるような感覚がヴィエナを襲った。

かといって、自分が何か出来るわけでもない。


エドガーは、そんな彼女の様子を見て、何かを悟ったように微笑む。

「君は本当に……優しいですね」



二人の間に、以前とは違う感情が流れていた。

それが何なのか、ヴィエナはまだはっきりと理解できない。


ただ、一つだけ確かなことがあった。

エドガーの婚約問題が解決しない限り、二人の関係はこれまでのようにはいかないということ。


書斎の窓の外では、夕暮れの光が静かに差し込んでいた。

二人の心にも、それぞれの影が落ちていく。


エドガーは静かに息を吐き、窓の外へと視線を移した。

夕暮れの光が薄れ、やがて夜の帳が下り始めている。


「もし……」

ふと、彼の口から言葉が零れた。


「もし……ヴィエナを婚約者にしたいと言ったら……」


その言葉に、ヴィエナは驚いたようにエドガーを見つめた。

「……え?」


自分の耳を疑ったかのように、ほんのわずかに目を見開く。

何か言葉を返そうとするが、思考が追いつかず、喉の奥で声が詰まる。


しかし、エドガーは一瞬の沈黙の後、ふっと苦笑し、そっと首を振った。

「……いや、なんでもない。忘れてください」


彼は軽く頭を振ると、何事もなかったかのように薬草の図鑑を手に取った。

だが、彼の指先はほんのわずかに震えていた。


ヴィエナもまた、その言葉の意味を考えながら、そっと俯く。

胸の奥に、得体の知れない感情が渦巻いているのを感じながら……。


「そろそろ帰らなくては」


エドガーはそう呟くと、そっと椅子から立ち上がった。

ヴィエナも顔を上げ、彼を見つめる。


「……エドガー様」


何か言いたかった。

けれど、何を言えばいいのか分からない。


エドガーはそんな彼女の様子を見て、微かに微笑んだ。

しかし、その笑顔はどこか寂しげだった。


「お茶会は10日後です」


それだけを言い残し、彼は静かに書斎の扉へと向かった。

手を伸ばして扉に触れた瞬間、一瞬だけ動きを止める。


まるで、もう一度振り返るか迷っているように――。


けれど結局、彼は何も言わず、そのまま扉を開けて廊下へと消えていった。


扉が閉まる音が、静かな書斎に響く。


ヴィエナは席に座ったまま、エドガーがいた場所をじっと見つめていた。



そして――

エドガーの婚約者候補が発表されるお茶会の日は、10日後とすぐそこまで迫っていた。

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