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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
20/75

第020話 お相手

毎日19時に投稿を頑張ります(20日目)

す、すこし体力の限界が、、、笑

評価励みになります。

二人一組の相手を探すヴィエナは広間に足を踏み入れた。

そして、早速一人の男性貴族に声をかけた。

「恐れ入りますが、本日の社交会のお相手を探しているのですが、もしよろしければ…」


しかし、男性貴族は丁寧に断る。

「申し訳ございません。既に婚約者がおりますので…」

 

ヴィエナは、心の中で呟いた。

(そもそも、貴族の年齢では婚約者が決まっているのが常で、こんな簡単に相手が見つかるはずがないわ)

(学園の予定表をしっかり確認しておくべきだったわ…領の従者を連れてきたのに……)


――――――――――――――――――――――

卒業が危ぶまれるヴィエナは落胆していた。

「誰でもいいから…今日だけのお相手で良いのに…」


その時……


突然、背後から低い呼び声が響いた。

「ヴィエナ!」


振り返ると、そこにはエドガーが立っていた。

「学園に来ていたのか! 久々にお目にかかれて嬉しいよ!」



「エドガー様……」

ヴィエナは一言エドガーの名前を呼んだ後、顔を伏せ、厳かな口調で一蹴する。

「申し訳ありませんが、私は今、社交会のお相手を探しております。急いでいるので…また……」


内心では、エドガーがこのあいだ、エリーゼに『僕も好きだ』と口にした情景が、痛々しく蘇っていた。


エドガーは、一瞬間をおいて、真摯な表情に切り替える。

「ヴィエナ! 良かったら、僕と一緒に踊らないか?」

「ちょうど僕も、相手がいなかったんだ」


しかし、ヴィエナ嬢は厳かに、そして少々冷たく答える。

「何を仰っているのですか。エリーゼ嬢がいるではありませんか?」


するとエドガーは、重い口を開く。

「もしかして……あの時のこと怒ってるよね……」

「まずはヴィエナを悲しい気持ちにさせてしまい、本当に申し訳ない」

「ですが実は……エリーゼ嬢と私は義理の兄弟なんです」


「義理の兄弟?」

不思議そうにヴィエナが首を傾げる。

 

「はい。私の兄と、エリーゼの姉が結婚しておりまして…」


ヴィエナ嬢は驚きを隠せず、内心で呟く。

「そうだったのですか…そんな事も存じ上げずに…」

だが、すぐに追及するように口を挟む。

「ですが、あの時、確かにエリーゼ嬢に『好きだ』とおっしゃっていましたよね?」


エドガーは、僅かに苦笑いしながら説明する。

「それは、兄のプレゼントの件でございまして、エリーゼの姉が兄に贈る品について迷っており、剣の柄のデザインを工夫されるのは好みかと伺った際、兄も私も、好きだと申した次第です……」


ヴィエナは、かすかに眉をひそめながらも、続ける。

「でも、あんな木陰の隠れた場所で話すなんて…」


エドガーはすぐに頭を下げ、深々と謝罪する。

「エリーゼが私と学園で会話すると目立つと言って、人前で語ることを極端に嫌がるゆえ、どうしても控えめに話さざるを得なかったのです。申し訳ない」


(私はそんなことで……ずっと、エドガー様を避けていたなんて……)

「私ったら、誤解してしまい、申し訳ありませんでした」

もヴィエナも謝罪をする。

 

「いや、僕の方こそ、紛らわしい振る舞いでご迷惑をおかけして、本当にすまなく思います」


そして、エドガー様は一歩前に出て、再び柔らかな声で尋ねる。

「では、ヴィエナ嬢。どうか、一緒に踊っていただけないでしょうか?」


その瞬間、ヴィエナ嬢の内心に、すべての重荷と不安が静かに解けるような気がした。

彼女は深い瞳を見つめ返し、静かに、しかし決然と答えた。

「はい…」

手を取った瞬間、ずっとこわばっていた心がほどけるような気がした……


こうして、社交会は、思いがけぬ再会と真実の告白によって、一つの転機を迎えた。

ヴィエナは、過去の誤解と葛藤を胸に秘めながらも、エドガーと二人一組になれたことで安堵した。

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