第020話 お相手
毎日19時に投稿を頑張ります(20日目)
す、すこし体力の限界が、、、笑
評価励みになります。
二人一組の相手を探すヴィエナは広間に足を踏み入れた。
そして、早速一人の男性貴族に声をかけた。
「恐れ入りますが、本日の社交会のお相手を探しているのですが、もしよろしければ…」
しかし、男性貴族は丁寧に断る。
「申し訳ございません。既に婚約者がおりますので…」
ヴィエナは、心の中で呟いた。
(そもそも、貴族の年齢では婚約者が決まっているのが常で、こんな簡単に相手が見つかるはずがないわ)
(学園の予定表をしっかり確認しておくべきだったわ…領の従者を連れてきたのに……)
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卒業が危ぶまれるヴィエナは落胆していた。
「誰でもいいから…今日だけのお相手で良いのに…」
その時……
突然、背後から低い呼び声が響いた。
「ヴィエナ!」
振り返ると、そこにはエドガーが立っていた。
「学園に来ていたのか! 久々にお目にかかれて嬉しいよ!」
「エドガー様……」
ヴィエナは一言エドガーの名前を呼んだ後、顔を伏せ、厳かな口調で一蹴する。
「申し訳ありませんが、私は今、社交会のお相手を探しております。急いでいるので…また……」
内心では、エドガーがこのあいだ、エリーゼに『僕も好きだ』と口にした情景が、痛々しく蘇っていた。
エドガーは、一瞬間をおいて、真摯な表情に切り替える。
「ヴィエナ! 良かったら、僕と一緒に踊らないか?」
「ちょうど僕も、相手がいなかったんだ」
しかし、ヴィエナ嬢は厳かに、そして少々冷たく答える。
「何を仰っているのですか。エリーゼ嬢がいるではありませんか?」
するとエドガーは、重い口を開く。
「もしかして……あの時のこと怒ってるよね……」
「まずはヴィエナを悲しい気持ちにさせてしまい、本当に申し訳ない」
「ですが実は……エリーゼ嬢と私は義理の兄弟なんです」
「義理の兄弟?」
不思議そうにヴィエナが首を傾げる。
「はい。私の兄と、エリーゼの姉が結婚しておりまして…」
ヴィエナ嬢は驚きを隠せず、内心で呟く。
「そうだったのですか…そんな事も存じ上げずに…」
だが、すぐに追及するように口を挟む。
「ですが、あの時、確かにエリーゼ嬢に『好きだ』とおっしゃっていましたよね?」
エドガーは、僅かに苦笑いしながら説明する。
「それは、兄のプレゼントの件でございまして、エリーゼの姉が兄に贈る品について迷っており、剣の柄のデザインを工夫されるのは好みかと伺った際、兄も私も、好きだと申した次第です……」
ヴィエナは、かすかに眉をひそめながらも、続ける。
「でも、あんな木陰の隠れた場所で話すなんて…」
エドガーはすぐに頭を下げ、深々と謝罪する。
「エリーゼが私と学園で会話すると目立つと言って、人前で語ることを極端に嫌がるゆえ、どうしても控えめに話さざるを得なかったのです。申し訳ない」
(私はそんなことで……ずっと、エドガー様を避けていたなんて……)
「私ったら、誤解してしまい、申し訳ありませんでした」
もヴィエナも謝罪をする。
「いや、僕の方こそ、紛らわしい振る舞いでご迷惑をおかけして、本当にすまなく思います」
そして、エドガー様は一歩前に出て、再び柔らかな声で尋ねる。
「では、ヴィエナ嬢。どうか、一緒に踊っていただけないでしょうか?」
その瞬間、ヴィエナ嬢の内心に、すべての重荷と不安が静かに解けるような気がした。
彼女は深い瞳を見つめ返し、静かに、しかし決然と答えた。
「はい…」
手を取った瞬間、ずっとこわばっていた心がほどけるような気がした……
こうして、社交会は、思いがけぬ再会と真実の告白によって、一つの転機を迎えた。
ヴィエナは、過去の誤解と葛藤を胸に秘めながらも、エドガーと二人一組になれたことで安堵した。




