第002話 病と縁談
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【白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?】
入学して1ヶ月、噂は下火になるどころか学園内にさらに広がっていた。
「あのおひとり様もう帰ったの?」
「お相手がいないんですから。学園に残って勉強したところで何の役にもたたないですもの笑」
変わらず陰口を叩く複数の令嬢
一方、学問と経済の才覚をとことん学ぶ事を決めたヴィエナは領地へと帰った。
「私の取り柄は、記憶力と意地っ張りなところ!」
「学園にいる連中の領地なんて、絶対にエムリット領が超えてやりますわ」
「この国で越えるべき存在は、公爵家のマテリウス領・伯爵家のアルセイン領・アイク様の公爵家アルバート領ね。」
簡単に言ってみたヴィエナだったが、どうすれば超えられるかを考える必要があった。
ヴィエナは父の書斎を真っ先に訪れた。
「どうしたヴィエナ、帰ってくるのが早かったな」
「今度の農村の視察、私に代わりに行かせてください!」
ヴィエナはいち早く領地の現実を知りたかったので、
父に頭を下げる。
「それは私の仕事だ。それに視察はまだ半年も先だろう」
「一度だけで良いので来週行かせてください。早く現場を見たいんです」
「うーむ。私も仕事が多いし正直時間がない。いいだろう。ただし報告はしっかりあげるように」
「ありがとうございます」
農村の視察に行ける事になったヴィエナ。
ーー早速、次の週末に馬車にのり離れの農村に来た
「やはり、予想通りね」
ヴィエナは馬車の中で小さくため息をついた。
「お父様は離れの農村に目をかけてない」
「第2農村だから優先度が落ちているんだわ」
離れの農村の実態は、貧しく領地では第2農村と呼ばれていた。
「ヴィエナ嬢がわざわざお越し頂きありがとうございます」
「本日、領主様はいらっしゃらないのですか?」
父以外が視察に来た事に村長がびっくりしている。
「ええ、私1人です。早速本題に入りますが、何故この農村はこんなに貧しいのですか?」
ヴィエナは嫌な顔をされる覚悟で疑問を真っ向からぶつけた。
「流行しているサイーレ病の影響です。働ける人間が減り収穫量も激減しています」
サイーレ病は農村周辺で流行っている感染力が強く最悪死に至る病。
どの領地でも流行っており王太子も手を焼いている。
「そもそもサイーレ病はなぜ離れの農村だけなのかしら」
疑問に思うヴィエナ。
「別の領地でも離れの農村でしかサイーレ病の話は聞かない」
「農村を隅々まで調べさせてもらいます」
「ヴィエナ嬢が、もしサイーレ病に感染したら大変な事です」
村長の静止を振り切り農村を隅々まで視察するヴィエナ。
「農地に繋がっているこの川の水、濁っていて異様な匂いがします。これは一体どういう事ですか!?」
農村の奥地まで行かないと見つける事が出来ない川の水は深く濁り、異様な匂いが立ち込められていた。
「この川は領地の工場の排水が流れてきております」
「もしかしてこの水を生活水や農作物に使用しているの?」
「はい、近年は水不足なので…」
「サイーレ病のまま屋敷に来たことは?」
「恐縮ですが、何度か税を納めに行く際に……」
「いえ、教えて頂きありがとうございます」
だが、屋敷でサイーレ病になった人はいない。
おそらく、サイーレ病は食べ物や水からの経口感染でしか発症しないのでは?とヴィエナは考えた。
屋敷に帰り早速父に報告するヴィエナ。
「それは本当か!ならすぐに川の流れを工事で変えよう」
「ヴィエナすまない。私がしっかりしていない、ばかりに……ありがとう」
「いいえ、おそらく他の領地でも同じ事が起きてますわ」
「工事後は領衛所を設置し、第二農村を守る体制を整えましょう」
「うむ!とてもいい案だ」
父のガイゼルもそう思いヴィエナの案通りに急ぎで工事は進むことに。
第2農村には食べ物と飲み物を屋敷から馬車で届けた。
1ヶ月後工事は無事終わり排水の川の流れを変え、領衛所を配置。
ーーその後の結果はヴィエナの思った通りに。
エムリット領はサイーレ病の新規感染が0になった。
感染したら大変だが、感染する前に衛生管理を徹底する事が大事だったのだ。
「ありがとうございますヴィエナ嬢、おかげで暮らしが豊かになります」
「ありがとう、ヴィエナが気付いてくれたおかげで領地が良くなった」
様々な人に感謝される喜びを知ったヴィエナ。
――このヴィエナの噂は国全体に響いた。
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――ここはベルハルト辺境伯家。
「エムリット伯爵家にサイーレ病を治せる令嬢がいるだと!?」
「すぐに縁談の話を持っていこう」
「準備はいいか、ユリウス」
「はいお父様」
ベルハルト辺境伯からヴィエナに縁談の話を持っていく事に……