表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
19/75

第019話 学園は憂鬱です

毎日19時に投稿を頑張ります(19日目)

――――――社交会当日―――――――


ヴィエナは、重い心を抱えながらも学園へ向かうため、馬車に乗り込んだ。

車窓から流れる風景は、朝靄に包まれた静かな風景であったが、彼女の心は不安で埋め尽くされていた。


(最近は、領地を拡大することばかりに心を奪われ、貴重な時間を無駄にしていたわ…。)

(そういえば、学園っていつぶりかしら…)と、内心で問いかけるように呟く。


ふと、記憶の中に、あの日の出来事が鮮明に蘇る。

(あの時、エドガー様がエリーゼ嬢と楽しげにお話しされているのを見て、私はその場から逃げ出してしまった…。)

その記憶に、ヴィエナ嬢の胸は締め付けられる。


「どうしよう……今日、学園でエドガー様と再びお会いしてしまうなんて……いったい、どんな顔をすれば済むのかしら…」

彼女の内心は、恥ずかしさと恐れで揺れ動いていた。


そんな思索にふけっているうちに、馬車は学園前に到着する。

外は冷たい朝の空気が漂い、重苦しい静寂が広がっていた。


ヴィエナ嬢は、ため息をつくように、そして一歩一歩、まるで心の重荷を引きずるかのように学園の敷地へと降り立った。


学園内の大広間では、すでに社交会が始まっていた。

煌びやかな装いの令嬢たちが談笑し、優雅な音楽が流れる中、華やかな雰囲気に包まれていた。

しかし、ヴィエナ嬢の心は冷え切っていた。

「エドガー様の姿は、今の所どこにも見当たらないわ…もし現れたら、いったい何を口にすればいいのか…」と、内心の不安が募る。


その時、貴族令嬢たちの囁きが耳に飛び込んできた。

「見てごらんなさい、ヴィエナが来ているわよ」

「休学してたんじゃないの?」

「噂では、あの子はお金のことしか考えていないとか」

「まあ、なんともお下品なのかしら……人の事をお金稼ぎの道具と思ってそうですわ」


周囲の陰口が飛び交う中、ヴィエナは冷ややかな眼差しで周囲の貴族令嬢を見渡した。

だが、彼女にいつもの様な元気はない。

「あの時以来にエドガー様と、もし…会ってしまったら……」ヴィエナはずっとその言葉を繰り返してしまう。


――――社交会の開始――――

しばらくして、広間の中央で社交会で学長が朗らかに告げた。

「本日の社交会は、二人一組で踊りを披露していただきます。婚約者がいない方は、どうかお相手をお探しくださいませ」

その発表に、会場内は一瞬ざわめき、囁きが一斉に広がった。

「なんですって?どうしよう……」と、ヴィエナ嬢は小さな声で呟いた。


彼女の内心は、エドガーとの再会への恐れと、久々の学園の社交会に出ることへの不安でいっぱいだった。

「帰りたい…でも、それでは卒業も危ぶまれる。私には選択の余地がない…」


ヴィエナ嬢は、華やかな舞踏会場の片隅で、ひとり静かに足を止め、深く息をついた。

心の奥底で、何度も繰り返される葛藤が、彼女の心を締め付ける。

(社交会なんて、もう耐えられそうにない…でも卒業のため…相手を探さないと)

重い足取りで二人一組のお相手を探す決意をした。


――――――――――――――――――――――

学園内では、華やかな社交会が着々と進行していた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ