第019話 学園は憂鬱です
毎日19時に投稿を頑張ります(19日目)
――――――社交会当日―――――――
ヴィエナは、重い心を抱えながらも学園へ向かうため、馬車に乗り込んだ。
車窓から流れる風景は、朝靄に包まれた静かな風景であったが、彼女の心は不安で埋め尽くされていた。
(最近は、領地を拡大することばかりに心を奪われ、貴重な時間を無駄にしていたわ…。)
(そういえば、学園っていつぶりかしら…)と、内心で問いかけるように呟く。
ふと、記憶の中に、あの日の出来事が鮮明に蘇る。
(あの時、エドガー様がエリーゼ嬢と楽しげにお話しされているのを見て、私はその場から逃げ出してしまった…。)
その記憶に、ヴィエナ嬢の胸は締め付けられる。
「どうしよう……今日、学園でエドガー様と再びお会いしてしまうなんて……いったい、どんな顔をすれば済むのかしら…」
彼女の内心は、恥ずかしさと恐れで揺れ動いていた。
そんな思索にふけっているうちに、馬車は学園前に到着する。
外は冷たい朝の空気が漂い、重苦しい静寂が広がっていた。
ヴィエナ嬢は、ため息をつくように、そして一歩一歩、まるで心の重荷を引きずるかのように学園の敷地へと降り立った。
学園内の大広間では、すでに社交会が始まっていた。
煌びやかな装いの令嬢たちが談笑し、優雅な音楽が流れる中、華やかな雰囲気に包まれていた。
しかし、ヴィエナ嬢の心は冷え切っていた。
「エドガー様の姿は、今の所どこにも見当たらないわ…もし現れたら、いったい何を口にすればいいのか…」と、内心の不安が募る。
その時、貴族令嬢たちの囁きが耳に飛び込んできた。
「見てごらんなさい、ヴィエナが来ているわよ」
「休学してたんじゃないの?」
「噂では、あの子はお金のことしか考えていないとか」
「まあ、なんともお下品なのかしら……人の事をお金稼ぎの道具と思ってそうですわ」
周囲の陰口が飛び交う中、ヴィエナは冷ややかな眼差しで周囲の貴族令嬢を見渡した。
だが、彼女にいつもの様な元気はない。
「あの時以来にエドガー様と、もし…会ってしまったら……」ヴィエナはずっとその言葉を繰り返してしまう。
――――社交会の開始――――
しばらくして、広間の中央で社交会で学長が朗らかに告げた。
「本日の社交会は、二人一組で踊りを披露していただきます。婚約者がいない方は、どうかお相手をお探しくださいませ」
その発表に、会場内は一瞬ざわめき、囁きが一斉に広がった。
「なんですって?どうしよう……」と、ヴィエナ嬢は小さな声で呟いた。
彼女の内心は、エドガーとの再会への恐れと、久々の学園の社交会に出ることへの不安でいっぱいだった。
「帰りたい…でも、それでは卒業も危ぶまれる。私には選択の余地がない…」
ヴィエナ嬢は、華やかな舞踏会場の片隅で、ひとり静かに足を止め、深く息をついた。
心の奥底で、何度も繰り返される葛藤が、彼女の心を締め付ける。
(社交会なんて、もう耐えられそうにない…でも卒業のため…相手を探さないと)
重い足取りで二人一組のお相手を探す決意をした。
――――――――――――――――――――――
学園内では、華やかな社交会が着々と進行していた……




