第016話 交渉への船出
毎日19時に投稿を頑張ります(16日目)
う、かなりキツくなってきた。。。
初執筆で毎日投稿をすると言った私はバカなのかもしれない。。。
月明かりに照らされた石畳の街道を、馬車の車輪が静かに軋む音だけが響いている。
旅の疲れはあったが、それ以上に、これから待ち受ける交渉への緊張感が一行の胸を締めつけていた。
「エムリット家の皆さんお待ちしておりました。」
屋敷の門前には、すでにリカルド伯が待っていた。数日ぶりの再会だったが、互いに多くを語る間もなく、表情には緊張の色が浮かぶ。
「お世話になります、リカルド伯。急な訪問にもかかわらず、お時間をいただき感謝いたします」
ガイゼルが深く一礼する。リカルド伯は疲れた様子ながらも、彼らを屋敷へと招き入れた。
応接室の暖炉には火が灯され、冷えた体を温める優しい橙色の光が揺れている。
「さて、先日お送りした手紙を読んでいただけたでしょうか?」
椅子に腰を下ろすと、ガイゼルは静かに切り出した。
リカルド伯は深く息をつきながら頷く。
「はい、拝読しました。しかし……」
リカルド伯の視線はわずかに揺れ、不安を隠しきれない様子だった。
「本当に海賊との交渉がうまくいくのか……正直、私はまだ半信半疑です。しかし、領の未来を考えれば、やるしかないのも事実でしょう」
彼の言葉に、ヴィエナは強く頷いた。
「今回の交渉でエムリット領も、ヤニウス領と運命を共にすると決めました。ヤニウス領だけに負担を押し付けるつもりはありません。私たちも本気です」
ヴィエナの目は真剣そのもので、その強い意志が言葉以上にリカルド伯へと伝わる。彼はしばし黙考した後、口を開いた。
「……分かりました。あなたの覚悟、確かに受け取りました」
部屋の空気が少し和らぐ。それでも不安が完全に消えたわけではない。しかし、もう後には引けない。
「では、今日の行動を再確認しておこう。覚悟を決めた以上、ミスをせず交渉を終えるのが最重要です。」
ガイゼルが話を戻し、手短に今日の流れを説明する。
船で海へ向かい、海賊と接触し、ヴィエナが交渉に入る。
もし危険が生じれば即座に撤退し、護衛隊が対応する。
「よし、時間だ。出発しよう」
そう言うと、一行は準備を整え、静かに屋敷を後にした。
⸻
外はまだ薄暗く、冷たい海風が肌を刺す。
ヤニウス領の港にはすでに船が用意されていた。
甲板に足を踏み入れると、かすかな波の音と共に船は静かに海へと漕ぎ出した。
夜明け前の薄闇の中、ヴィエナは船のへりに手をかけながら、遠くの水平線を見つめる。
準備はしたが、交渉が成功するかどうか、まったくの未知数。しかし、彼女の心に迷いはなかった。
「お嬢様、あまり身を乗り出さないでください」
護衛隊長のロットが注意を促す。
ーーその時だった。
「来たぞ……!」
船の見張り役が低く警告の声を上げる。視線の先には、漆黒の影が波間を進んでくるのが見えた。
海賊船――。
荒々しい帆を張った小型船が数隻、こちらに向かってくる。
舷側には武器を手にした男たちの姿があった。彼らの顔には、警戒心と敵意がにじんでいる。
「止まれ!」
海賊たちの一人が叫び、こちらの船を取り囲むように配置を取る。
ヴィエナは深く息を吸い、はっきりとした声で呼びかけた。
「待ってください! 私たちは交易船ではありません!」
海賊たちは一瞬動きを止める。しかし、すぐに荒々しい声が返ってきた。
「俺たちには関係ない、船に積んでる荷物を奪えたらそれでいいんだからよ。」
海賊の一人が嘲笑するように言う。
ヴィエナは動じず、続ける。
「私はエムリット伯爵家のヴィエナです! あなたたちに提案があります。安定した生計を立てられる仕組みを用意しました!」
一瞬の静寂。しかし次の瞬間、海賊たちは大声で笑い出した。
「はっ! 安定した生計だと?」
「貴族のお嬢様が何を夢みたいなことを!」
ヴィエナの表情が険しくなる。
彼女の想定では、安定した生計を立てられる仕組みを用意すると伝えれば、話だけでも聞いてくれると思っていた。
「まてよ?ヤニウスとは別の貴族……?」
「俺たちはついてる。別のお貴族様もいらっしゃったぜ?」
海賊の一人がニヤリと笑う。
「ヤニウス伯だけでなく、エムリット伯からも金品奪えるなんてな」
ヴィエナの胸に緊張が走る。
――交渉以前に、話を聞こうとしない。
想定よりも何倍も、稚拙で野蛮な集団だった……
(どうすれば……)」
予定通りに、交渉が進まず焦るヴィエナ…
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