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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
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第013話 意見交換

毎日19時に投稿を頑張ります(13日目)

口内炎が出来ました。。。


評価励みになります。

リカルド伯は深いため息をつき、重い口を開いた。


「実は……昨年からヤニウス領は赤字に陥っているのです。」


その言葉に、ヴィエナは驚きを隠せなかった。

彼女が商業ギルドで聞いていた話とは全く異なる現実がそこにあった。

(え?稼いでいると伺っていたけど、思っていたよりも状況が異なりますわね…)


リカルド伯は続けて説明を始めた。

彼の声には、領主としての責任感と無力感が滲んでいた。


「元々、ヤニウス領は豊かでした。交易も盛んで、漁業も十分な収益を上げていました」

「しかし、1年半ほど前から沿岸地域に海賊が現れるようになったのです」


その言葉に、ヴィエナとガイゼルは言葉を失った。

海賊の出現が、領地の経済にこれほどまでに影響を及ぼしているとは思いもよらなかったからだ。


「海賊、ですか?」とガイゼルが眉をひそめる。


「はい。密漁が絶えず、漁獲量も減少しています。」

「交易の物品が海賊に盗まれると、管理している我々が補償する必要があり、補償額も膨大です…」


リカルド伯は嘆息した。彼の顔には、何もできないという痛切な思いが浮かんでいた。


古くから沿岸地域の管理で富を築いているヤニウス伯家は、資金が潤沢だと商業ギルドの人々も誤解をしていた。


だが実際は、海賊による影響で資金も気力もすり減らされていたのだった。


「そのような現状があったのですね。」とガイゼルが同情の声を漏らした。

彼もまた、領主として自分の領地に同様の問題が起きる可能性に身が引き締まる思いだった。

 

「それに、海賊を撃退するため、警備を配置していますが、それでも海賊は減りません。」

「ましてや警備にも多額の費用がかかります……」


リカルド伯は肩を落とし、疲れ切った表情で遠くを見つめた。

彼の姿は、重圧に押しつぶされそうな男の姿そのものだった。


「海賊さえいなくなれば、再び豊かになるのですか?」とガイゼルの隣で、一連の話を聞いていたヴィエナが尋ねた。


彼女の声には、希望と解決策を見つけたいという強い意志が込められていた。


「はい、元通りになると思います。」と領主は力なく微笑んだ。

その笑みには、かすかな希望と、しかしそれを実現する手立てがない現実への無力感が混ざっていた。


「こんな話しかお伝えできず申し訳ありません。せっかくお越しいただいたので、領で遊んでいってください」とリカルド伯は申し出た。


彼の声には、訪問者への気遣いと、エムリット領が共有したサイーレ病対策の、対価の情報がこんな結果で申し訳ないという思いが込められていた。


ヴィエナ、ガイゼル、エリザ、護衛隊長のロットの4人はヤニウス領の人々に挨拶をして外に出た。


外の空気は、室内の重苦しい雰囲気を一掃するかのように爽やかだった。


「せっかくのお誘いだし、少しだけ浜辺で遊ぼうか。」

とガイゼルが提案した。


エリザとロットはめったに訪れることのない海辺での遊びに深い感銘を受け、まるで子供のように喜びを露わにした。

 

しかし、ヴィエナはその場の綺麗な海に目もくれず、海賊対策と景気回復の方法を必死に考えていた。

 

(費用をかけずに海賊の対策をする方法はないかしら…)


(海賊行為をする理由は、収入がないから…。つまり、仕事がないのが原因ではないだろうか)

(もしそうなら、仕事を与えれば良いのでは?)


(でも、どうすれば…)


その時、浜辺で遊んでいるエリザが声を上げヴィエナに駆け寄ってきた。

「ヴィエナ様〜見てください、貝を見つけました」

彼女の手には、珍しい貝殻が輝いていた。


ヴィエナはその貝殻を見つめ、何かを思いついたように目を輝かせた。


「この貝殻…もしかして、これを使って…」

彼女の脳裏に、新たな計画が次々と浮かんできた。

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