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傷痕の令嬢は微笑まない  作者: 山井もこ
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第001話 婚約破棄と覚悟

毎日19時に投稿を頑張ります(1日目)


新連載の作品も読んで頂けると嬉しいです

【白い結婚と言ったのは王子のあなたですよ?】


「ヴィエナ、お前との婚約破棄をする」

「傷モノの婚約者など俺には必要ない………醜いんだよ」


アイクはヴィエナを冷ややかな目で見下ろした。


伯爵令嬢ヴィエナ・エムリット15歳は相思相愛だった

婚約者の公爵家アイク・アルバートに突如婚約を破棄された。


アイクの心は、もう私に向いていない・・・

泣き出したくなるのを必死に堪えながら、頷いた。

実は婚約破棄を言い渡された時、ヴィエナとしても当然だと悟った。

この世界では至極当たり前の事だからだ。


  ――――それは遡る事1ヶ月前――――


舞踏会デビューの日、アイクに練習した踊りを褒められたいヴィエナは過労で倒れる寸前まで練習をしていた。


「気分転換にちょっと庭を散歩して外の空気でも吸おうかしら」


夜も遅いがまだ練習を続けるつもりのヴィエナは庭に出て少し休憩したら練習に戻るつもりだった。


「夜も遅いし侍女のエリザを起こして付いてきてもらうのは申し訳ないわ」

「別に庭にちょっと出るだけだし一人でも大丈夫よね」

そんな軽い気持ちで、ヴィエナは一人で庭へと足を踏み出した。

 

悲劇は起きる。

「ドンッ」

庭に出たヴィエナは背後から頭を強打され、前のめりに芝の上に倒れ込んだ。


「この時を待っていたぜ、夜遅くにお一人で外に出てくるバカな令嬢をな、金目の物を持っているに違いない」

ヴィエナの装飾品を物色する不審な男。


だがこの庭には警備の者もちゃんといる。

不審な音に気づいた警備の者が駆けつける足音がすると、男は逃げ出した。


「ヴィエナ嬢!」

芝の上に倒れたヴィエナはすぐに医務室に運ばれた。


が…………


ヴィエナが目覚めると、顔に激しい痛みが走った。

鏡を見ると左眉の上に傷あとが…

朝すぐに父から書斎に来るよう伝言があった。


「おはようございます。お父様」

「ヴィエナ無事か?痛みは?」

父の声には怒りと焦燥が滲んでいた。


「お前は昨日、何をしでかしたのかわかっているのか?」

「舞踏会の為、夜遅くまで社交ダンスの練習をしておりました。」

「休憩の為、庭に出て空気を吸おうと思ったのですが、そこから記憶が……」

「この際、1人で外に出たことはもういい。一番の問題はその顔の傷だ!おそらくその傷は残るだろう」


「お前が傷モノになった事が世間に知られる事も時間の問題だ。アイク殿との縁談も、おそらく……クソ!こんな大事な時期に外部の侵入を許すなんて」

 

ヴィエナはようやく事の重大さに気づいた。

傷モノではないと否定したいが、鏡に映った左眉の上の傷を見ると否定なんて出来ない。


「私もすまない。もっと領地を管理出来ていれば…」

「何とかまた新しい縁談を見つけてくるよ」

父と私も含め、このエムリット領は皆んなどこか抜けているけどあたたかくて優しい。


だが、身内以外の周囲の人々は傷モノとヴィエナの事を蔑んだ。

ヴィエナはどんどん塞ぎ込み、エムリット領の一部の人間にしか心を開かなくなっていた。


学園に入学後も周囲の貴族の蔑んだ目線や脚色されたウワサ話は増える。


「例の傷モノのヴィエナ嬢、また一人で読書してますわよ」

「貴族令嬢は社交が仕事ですのに、何しにきたのかしら」


貴族の学園では、社交の講習が多く行われている。

月に一度は全生徒がホールに集まり社交会が開かれている。


今日はその社交会の日。


学園の貴族は殆どが入学前に婚約が整っており、

婚約者がいないヴィエナは当然悪い意味で目立ってしまう。


「本当惨めね、伯爵家なのに自分の顔も守れないなんて」

「婚約破棄されたそうよ、なんでも顔の傷あとが原因なんだって」

「そらそうね、エムリット家の人間は危機管理ができないのかしら」

「婚約者もいないのに、社交の講習なんて笑っちゃいますわ」


こんな心無い言葉を言われるのはもう慣れていた。

だか、慣れていても時々ヴィエナは苦しくなる。


自分の顔だけでなく、警備や侍女にまで蔑んだ声や目を向けられる事に。


「それにしても、黙って聞いていれば、好き勝手言い過ぎだわ」


「私は、このまま陰口を受け入れて、ひっそり暮らさなければならないのかしら・・・」


「いいえ、そんなのはごめんだわ」

「そもそもの私って、曲がった事が嫌いで頑固な性格だったじゃない」


「縁談なんてもうこの傷ができた時から諦めてる。」


「私は学問と商才を学び、学園の貴族よりも立派なエムリット領を作り上げてみせるわ」


 こうしてヴィエナは学問と領地運営をとことん学ぶ事を決めたのだった。


 後に各地の貴族や王太子にまで縁談を持ちかけられる事は今はまだ誰も知らない・・・

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