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2人は廃ホテルに戻った。
金太が見た大きな影が、外に出てきている。
赤い両眼を光らせ、恐ろしい声で、こちらを威嚇した。
「パパ!」
カパ美が呼ぶ。
「や、やっぱりお父さんか?」
「間違いないわ!」
「それで? どうする?」
「あんた…えーと」
「金太だ!」
「金太は退がってて! アタイがカッパ・ド・ギアを装着する!」
金太は指示に従った。
カパ美が、前に出る。
黒影が迫ってきた。
「ウガアァァァ!」
吼えた怪物が、右腕を振る。
「カッパ・ド・ギア! 瞬着!」
カパ美が叫んだ。
青いブレスレットを着けた右手を挙げる。
が、何も起こらなかった。
咄嗟に両腕をクロスさせたカパ美が、異形の影にぶっ飛ばされる。
「キャー!」
「カパ美!」
金太は青ざめた。
落下するカパ美を、奇跡的にキャッチする。
「大丈夫か!?」
「くっ」
カパ美が顔を上げた。
「すごいパワーだわ…」
「怪我は?」
「ないわ。でも、これじゃ2人ともやられてしまう」
「何とか出来ないのか!?」
「カッパ・ド・ギアさえ使えたら…」
カパ美が、ブレスレットを見る。
そうしている間に、怪物が意外な素早さで2人に迫った。
両手で攻撃を繰り出す。
「うわー!」
金太が叫んだ、その時。
下半身が強烈な光を放った。
黒影が苦悶の声をあげ、よろめき退がる。
「この光!」
カパ美が、ハッとした。
「な、何だこれ!?」
「金太! お尻を見せて!」
カパ美が、金太の下着と短パンの後ろ側をいっしょに下ろした。
プリンッと尻が出る。
「お、おい!」
金太のキュートヒップは、まぶしい光を発していた。
「すごい尻子玉よ!」
「し、尻子玉!?」
「皆が持ってるパワーの源!」
「ええー!?」
金太は自分の尻を確認しようと首を回したが、いまいちよく見えない。
「どこにあんだよ!?」
「お尻の中よ!」
カパ美が金太の桃尻を、ポンポンする。
「こら、叩くな!」
「アタイの尻子玉と金太の尻子玉が共鳴したの! 最高の相性よ!」
「は?」
金太は、カパ美の下半身も光っていると気付いた。
カパ美が背を向け、かわいい尻を突き出す。
「金太! わたしとお尻を合わせて!」
「何でだよ!」
「早く! お尻を合わせれば、真の尻子玉パワーが解放されるわ!」
「もう、訳分かんねー!」
半ば、やけぎみに、金太はカパ美の尻に自分の尻を合わせた。
「尻と!」
カパ美が叫ぶ。
すると不思議なことに、金太の口が勝手に「尻を!」と答えた。
「「合わせて!」」
2人の声が重なる。
「「尻合わせー!」」
双方の尻が、なおさら強い光を放った。
「オオオオォォォ」と、怪物が怯む。
巨体が少々、縮んできた。
金太とカパ美の輝きが収まる。
「ど、どうなった!?」
金太が、下着と短パンを上げた。
「これでいけるはず!」
カパ美がキラキラと光った青ブレスレットを掲げた。
「アタイと金太の尻子玉パワーで、カッパ・ド・ギアが解放されたと思う!」
「ホントか!?」
「やってみる! カッパ・ド・ギア! 瞬着!」
ブレスレットの青い光が大きくなり、カパ美を包んだ。
「おお!」
金太が眼を見張る。
青い光が収まると、そこには。
「ええ!? カッパ!?」
「アタイは元からカッパよ! 今さら何、言ってんの!」
「ち、違う! カパ美がカッパなのは分かってる! カッパのカパ美がカッパを着てる! ややこしい!」
まさしくカパ美は、青いレインコートを羽織っていた。
「これがカッパ・ド・ギアの形態のひとつ、アーマーガッパだよ!」
「アーマーガッパ!?」
「そう! いっくよーッ!」
腰を落とし、構えたカパ美が、超スピードで青いレインコートをはためかせ、怪物に向かって飛んだ。
右拳を前に放つ。
「とりゃぁぁー!」
ドォンッという衝撃音と共に、右正拳突きが黒い影の頭を直撃した。
怪物の全身の暗闇が、後方に吹っ飛び、霧散する。
「おー! カッパが出てきた!」
怪物が消えた場所に倒れた緑のカッパを見て、金太は喜んだ。
「パパ!」
着地したカパ美がカッパ・ド・ギアを解除して、父親に駆け寄る。
金太も続いた。
「ううむ…」
緑のカッパ、カパ美パパが呻く。
「パパ! パパ、しっかりして!」
カパ美が、カパ美パパを揺すった。
略してカパパが眼を開く。
「カパ美!」
「パパ!」
ピンクと緑のカッパ親子が、ひしと抱き合った。
2人の頬を涙が流れる。
金太は黙って、感動の再会を見守った。
「カパ美、よくカッパ・ド・ギアを解放したな」
「うん。金太がアタイとベスト尻子玉で」
「ベスト尻子玉…」
初耳ワードに、金太が戸惑う。
「何!?」
カパパが驚愕した。
「まさか、尻を合わせたのか!?」
「うん…」
カパ美が、急に頬を赤らめる。
「え? 尻を合わせちゃ、ダメなのか?」
金太は不安になった。
「ダメっていうか…」
カパ美が、モジモジする。
「ええ!? 何、何!?」
「尻合わせをした者同士は、結婚する習わしだ。古くは人間と契ったカッパも居たとは聞くが…」
カパパが、両腕を組む。
「契る!? おれとカパ美が!?」
金太を見つめ返してきたカパ美が、パチッとウインクした。
「ウッフン」
「『ウッフン』って何だよ!?」
「またまたー。照れちゃって、かわいい!」
「照れてない!」
「婿よ」
「婿じゃねー!」
「そうだよ、パパ。まだ、これからこれから!」
「始まんの!?」
嬉しそうに笑うカッパ親子の前で、金太は呆れるのだった。
「来週から、カパ美の新妻編、スタートよ!」
「進みすぎじゃね!?」
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/