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ヲタッキーズ110 ミユリの潜入捜査

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第110話「ミユリの潜入捜査」。さて、今回はアラサー女子の連続レイプ事件が発生、警察の囮捜査にスーパーヒロインが志願します。


ところが、背後に高次なアルゴリズムを使う犯人の存在が浮上、さらに巨大な犯行におよぶ恐れがある中、犠牲者は増え続けて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 スピード誘拐


ATMの列に並ぶ人は誰もが神経質(ナーバス)だ。


レタス銀行東秋葉原支店のATM。その女は列の中で間違いなく1番神経質(ナーバス)だ。

ソワソワしながら暗証番号を入れ2万4000円を引き出し、再度左右を見て…


猛ダッシュ!


後日、防犯カメラを再生スルと、彼女が背後の男をチラ見したのがワカル。

そして、その男は、ダッシュする彼女を全力疾走で追うが手には…音波銃?


「誰か助けて!」

「どけ!」

「何なの?貴女達!」


男も女も、通行人を次々と突き飛ばし(恐らく)命をかけた鬼ごっこを展開w

女が通行人とぶつかりヨロける。その背中を狙う男。音波銃特有の発射音!


「きゃー!」


着波の瞬間、女は両手を広げた万歳スタイルで倒れて、ハデに札をバラ撒く。

悲鳴が交錯スル中、男は通りかかった配達用トラックに飛び乗って逃走スル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「広帯域サーキュレーターレトロリフレクターは?」

「絶対に無理ポ」

「ダメ?ターナリーコンピューティングか、スペーサーレイヤーによるナノメータは?」


史上最年少の首相官邸アドバイザーを務める超天才ルイナのラボ。ルイナは、相棒のスピアと次の研究項目を選定中だ。


「うーん無理じゃね?」

「え。ナノメータょ?どーしてダメなの?」

「やっぱりナノメータはやめといた方が良いょ」


このタイミングで入って来た僕は口から出任せ←


「テリィたん!機密情報アクセス権を失くしたら、急に研究活動が窮屈になった。次の論文は"三角形のすべて"にしようと思うの。どう?スピア」

「有理数の連分数展開に関してコンウェイが三角形の本を出してる。ねぇルイナ。貴女のお仕事の多くが政府の極秘研究に関係してる。なのに、貴女はスパコン使用にも制限をかけられてるのょ」

「ヲタ友として提案させてょ。信念を貫くのも良いけど、とりあえずSATOに謝罪スル手もアルんじゃナイか?」


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開く"リアルの裂け目"から降臨スル脅威と日夜戦う、首相官邸直属の秘密防衛組織だ。

ルイナは、マルチバース征服を狙う"敵性次元"への情報漏洩の罪を問われ、SATOの機密情報アクセス権を喪失中だ。


「機密情報アクセス権を取り戻すためには、申請が必要らしい。明日SATOのセキュリティ担当者との面談がアル」

「 SATOのコトならレイカ司令官から直接頼んでもらえば良いじゃない。最強コネでしょ?」

「レイカは巻き込めない。そもそもマルチバースに発信した情報は、国家の安全保障に関わるものじゃなかったし」


僕からは経験則を述べる。


「役人を相手にスル時は、コネは使えるだけ使うべきだ。役人自体がコネの集合体ナンだから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。ATM事件の殺害現場。


「被害者は?」

「リスア・デメア、33才。デイトレーディング会社のIT担当でした。"blood type Blue"。異次元人です」

「だから、音波銃なの?背中に2発?」


死体にかけられた白い布をめくる万世橋警察署ラギィ警部。


「38Hzか、39Hzです」

「あら。もう鑑識が来たの?」

「いいえ。見ればわかります。発砲者は男性30代。スーツにサングラス。花やパンの配送用みたいなトラックに飛び乗って逃げたそうです」


コンパクトに情報を伝える若い刑事。


「どーせ盗難車ね」

「犯人がパン職人でなければ…アチラへどうぞ。しかし、誰も落ちたお金を拾わないとは。東秋葉原らしくナイ」

「ニセ札だったり」


ATMにPCを接続している警官が報告。


「ATMの防犯カメラには、犯人の顔はほとんど写ってません」

「上手く死角に入ってる。プロだわ」

「しかし、追いかける時は不注意だったようです」


走る射殺犯の姿を捉えた別の写真が示される。


「向かいの駐車場の防犯カメラに映ってました」

「異次元人絡みだから、SATOに合同捜査を要請しましょ。ヲタッキーズには?」

「さっき写真は送りました…しかし、異次元人とは言え、ウチだけで十分かと思いますが」


そうは逝かない事情を明かすラギィ警部。


「実は、被害者は誘拐されてた。夫が身代金30万円を口座に入れてた」

「30万円?もしかして"スピード誘拐"って奴ですか?テルアビブで似た手口がありました。誰彼構わず誘拐して、口座の全額を引き出させる。身代金としては少額だから、家族は全額を支払い、警察への通報はその後…あ、モシモシ」


刑事は電話に出る。別の刑事が続ける。


「中所得者の女性ばかりが狙われ、暴行されています。しかし、殺害は今回が初めてです」

「逃げたせいでしょうか?」

「犯人は音波銃を持ってた。ソレでも逃げる人いる?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


焼けたバンが黒煙を噴き上げている。黄色の耐火服に身を固めた神田消防(アキバファイア)の消防士達がホースで消化液を撒いて消火中。


「男性が車を捨て、別の車で逃げたそうです」

「その目撃者は何処にいたの?」

「屋上にいました」


駆けつけたラギィ警部は溜め息をつく。


「じゃ誰も顔は見てないのね?」

「はい、警部。現場で火炎瓶が発見されました」

「ドジ踏んだ仲間を殺すナンて…ドンだけワルなの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に立ち上がった捜査本部。


「死んだのはジョイ・ハマン。蔵前橋(の重刑務所w)の常連みたい。至近では宝石強盗で服役、5月に釈放されたばかり。でも、彼が黒幕(ラスボス)とは思えないわ」

「パシリょね。だからドジ踏んでアッサリ消された」

「恐らく。他の被害者の証言にあった被疑者3号の似顔絵にソックリょ」


PCにデータを表示し、ヲタッキーズにレクするラギィ。


「すると…仲間は後3人ね」

「YES。しかし、コイツら相当のプロょ。萌やす前に車内を漂白剤で洗浄した痕跡がアル。指紋とかの物証は、ほとんどアウト」

「しかし、5件の誘拐で奪った金は200万円ちょっと?殺人を犯すだけの価値は無いわ」


因みに、ヲタッキーズは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団でSATO傘下の民間軍事会社(PMC)だ。

ミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーに妖精担当のエアリとロケットガールのマリレのトリオ。


因みに、全員メイド服。ココはアキバだからね←


「あらあら。でも、東秋葉原でしょ?5件で200万円なら上等ょ?並みの上だわ」

「マリレ。あのね、今回の犯人は東秋葉原のジャンキーじゃナイの。確かに少額身代金の誘拐事件は、貧困地域に多い。でも、死んだジョイ・ハマンは宝石強盗ょ?こんなケチな仕事に手を染める理由がナイ。私達、絶対何か見逃してるわ。どう思う?ムーンライトセレナーダー」

「この手の男には、必ず共犯者がいる。(ワル)トモを探す地道なリサーチから始めましょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


気になってルイナのラボを訪れたら…TVニュース見てるw


「…音波銃撃の詳細については、まだ捜査中です…」

「ルイナ。あれ?TVかょ珍しいな」

「コレ、テリィたんの担当?あ、私には話せないわょね」


溜め息をつくルイナ。彼女は…車椅子だ。


「ごめんな」

「ふと思ったんだけど、改良したポイントバイポイントの分析プログラムが役に立つと思うの。逐点分析ょ。ただ、データを入れて走らせるだけでOKナンだけど」

「うーんもうやってる」


読んでいたファイルを投げるルイナ。


「ホントに?」

「ただ、データが少ないから犯行待ちナンだ」

「次のレイプ犠牲者が出るのを待ってるワケ?」


僕は、言葉に詰まる。


「うーん数10人の囮を使えば、あるいは引っかけられるカモ」

「テリィたん。マーケティングには"オトリ効果"がアル。腕時計を買いに行くとスルわね。1つ目の候補は、高価なもの。傷がつきにくく防水機能付き。2つ目の候補は安いけど機能ナシ。客は、機能と価格を秤にかけて選ぶわ。そこで、1つ目より高くて機能が少ないのを加えるワケ。すると、大抵の客は、高くても機能の多い時計を買う。つまり、3つ目の時計はオトリなの。コレを"非対称支配"と呼ぶわ」

「そ、そうか。で?」


相変わらずルイナの話はよくワカラナイ。


「でもね、オトリは置くだけじゃダメなのょ。魅力的なターゲットへ作り込んで、パトロールの警官や検問も戦略的に配置スル。加えてアルゴリズムにかけて…」

「ソレ、スピアにも出来るかな?」

「スピアは優秀ょ。ただ、私がラフな計算式を立ててアドバイス出来るけど…」


やれやれ。超天才はワーカホリックだw


「…テリィたん。SATOのモリン心理作戦部長を知ってる?」

「モリン・モール?宇宙勤務の後で受けるコトになってるカウンセリングで僕の担当だった。厳しいけど、フェアな人だったょ」

「え。すごく厳しい?」


心配そうな顔になる超天才←


「うーん。でも、心配しなくて大丈夫さ」

「テリィたん、答えになってない」

「そ、そぉか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の捜査本部。


「ラギィ。被害者像に一致する失踪者をスーパー倍速で探してみた。今宵も犯行に及んだ可能性があるわ。ジャネ・トガバ。保険会社の派遣社員。4時半に退社。8時に捜索願が出てる」

「もう捜索願?気が早いのね」

「ニュースがバンバン流れてる。ボリュームゾーンの35才で中所得者だから、同居人が誘拐を心配したんでしょう」


ジャネはゲイらしい。


「いずれにせよソレだけなら、お呼びたてしません。この画像を御覧ください」


モニターに何処かの地下駐車場。歩いて来るジャネが黒いバンの影に消え、そのバンが走り去るとジャネは消えているw


「マジ?」

「手口も同じです。途中でバンから配達用トラックに乗り換えて、街の景色に溶け込み逃走」

「警部。マスコミを呼びましょう。TVで騒げばビビって解放するカモしれません」


ラギィは却下。


「ダメょ。邪魔者をアッサリ消す連中なのょ?」


第2章 アラフォーが余計


「メイドさん?え。ヲタッキーズなの?…で、ジャネの何を探せと言うの?!」

「カードの請求書や銀行明細などの情報です」

「ジャネの帰りが遅いから警察に通報しただけ。でも、その後で警察に通報したらジャネを殺すって、犯人が電話してきて…」


同い年くらいのゲイのカップルだ。


「犯人の言うとおりにしてもジャネさんは救えません。あと…私達はヲタッキーズ。警察ではありません。何でも話して」

「ジャネは慎重な子で、いつも周りに気を配ってた。ソレが前触れもなく連れ去られるなんて。私達、どう命を守れば良いの?もう 1人、殺されたんでしょ?その前の女性達は殴られレイプされただけと聞いてる」

「ジャネさんを救うために全力を尽くします」


泣きながらうなずく金髪女子。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「非対称支配って、ソンなに複雑じゃナイ。でも、ルイナの応用数式が複雑怪奇で…」

「無駄に終わるかもしれないけど、とにかく頼むょ」

「テリィたん。"カンクリーE"と言う名前の惑星は、恒星の軌道をモデリング分析してる時に偶然発見されたモノなの」


ナンなんだ一体w


「そぉだったのかっ!で、何?」

「世の中に無駄な仕事はナイってコト」

「スピア、スク水モードだ」


待ってました!とばかりにジャージを脱ぎ捨てるスピア。

下はトレードマークのスク水だ。ソレも勝負スク水の白w


凄まじい勢いでキーボードを叩き出して結果は直ぐ出る←


「とりあえず、銀行間ネットワーク"スパイ大作戦"をハッキングしてみた。"スパイ大作戦"は、犯罪対策プログラムで全国のATMを網羅してる。ATM40万台の取引がリアルタイムで拾える。全てのマシンの残金が表示され、このデータを基に現金の補充を行うシステム」

「な、何だょソレ?ってか、何でソンなコト知ってンの?」

「私をスク水にしたのは、テリィたんでしょ?私は、ストリート育ちなの。ギャングどものサイバー屋をやってた頃、色々と覚えただけ…で、カードを使うと"スパイ大作戦"が口座の残高を確認スル。ほら、ジャネで検索スルと3件ヒット。この3箇所で、2時間前が最後だわ」


東秋葉原の地図にたちまち3地点マッピング。


「テリィたん、ヲタッキーズは?」

「エアリとマリレが待機中」

「ジャネの写真、要る?」


要るに決まってる!ってか僕よりエアリ達に送ってくれw


「ハッキングで3台のATMでお金を下ろす画像をゲット。顔認識にかけるね」

「…ん?アレは何だろ?」

「ATMの防犯カメラの死角に立ってるわ」


振り向きかけたジャネの背後にある柱の影に怪しい人影。


「犯人だ」←


その時、スピアのPC画像にサインが点滅w


「テリィたん。今、カードが使われてる」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「東秋葉原の推し活通りね?ROG(ログ)


ヲタッキーズのエアリは妖精なので背中の羽根を広げ、マリレはロケットガール装備でひとっ飛びだ。現場はコンビニw


「遅かった?」

「しっ。アイツかも…万世橋(アキバポリス)がくれた似顔絵とは全然一致しないわ」

「いつものコトでしょ。ハイ、ビラ配り」


コンビニからは、シャツをアウトにしたジーンズの男が両手いっぱいのデニッシュの入った有料ポリ袋を抱え出て来て…

エアリもマリレも羽根やロケット装備を仕舞うとアキバのメイドに早変わり。いつ何処でビラを撒いても街に溶け込む←


「秋葉原のメイドさんは働き者だなー」


ブツブツつぶやきながら駐車場に停めていたバンに近づく。

しばしキョロキョロしていたが…突如脱兎の如く逃げ出す!


「ヲタッキーズょ!逃げるな!」


潔くコンビニ袋を放り投げ、バンも捨てて一目散に逃げる!

そのママ、昭和通りへ飛び出して…トラックに跳ねられるw


「ヲタッキーズです!運転手さんは車内に!出ないで!」

「メイドさん!この人がいきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ飛び出して来たんだ!」

「もう死んでる…」


脈を確かめるエアリ。マリレが駆け寄る。


「バンはカラッポだった!」

「残るは2人ね」

「ジャネ・トガバも捕まったママだわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「もう全部話したわ」


ヤツレ顔の美人…いや、美人のヤツレ顔w


「事件が進展して、また被害者が出たの。何度も忌まわしい記憶を思い起こさせてゴメンナサイ」

「もう…レイプされたコトを忘れたいの」

「コレを見て」


写真を示すと、彼女はその内の1人を指差す。


「…ATMに行く時、彼は一緒に車を降りた。音波銃を持ってたけど。でも、私を犯したのは他の奴ょ」

「そぉなの。他の男に見覚えは?」

「ナイわ」


ココでラギィ警部が割り込む。


「ソレ、確かなの?!」

「あのね!警部さん、私は38時間、アイツらと一緒だったの。確かょ」

「駐車場に4人目の男がいたんだって?」


レイプ被害者の美人は少し首を傾げる。


「YES。少し話して去っていったわ。その後アイツらは、彼に電話してた」

「内容は聞こえた?」

「確か何処の銀行に行くとか…でも、良く覚えてないわ。床に寝転がされていたんだもの。ねぇ私と同じアラフォーと思しきメイドさん。今、人質になってる女性はどーなるの?」


答えを待たズにシクシク泣き出す美人。


「全力で救出に当たるから」


ソレにしても"アラフォー"が余計だわ…そう思いながら被害者の手をシッカリと握り返すムーンライトセレナーダー。


第3章 ミユリのアンダーカバー


引き続き、万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ザック・トリン。最近まで服役」

「ヘマしたハマンを始末した後で、コイツを加えたワケね。補充兵みたいな感じ?」

「そのトリンは、恐らく車を捨てに行く途中のコンビニで、デニッシュの大人買いをしてた。大方、事前にジャネ・トガバのカードを1枚くすねてたんでしょ」


どーやら補充兵の質は高くなさそうw


「コイツが考えそうなコトですょ。荒っぽい強盗やカージャック専門だけど、所詮はチンピラ」

「他のカードの取引は?」

「ありません。トリンが戻らなくてビビってるのカモ。そもそもハマンを消した時点でヤメりゃ良かったのょ」


マリレは、もう一捻り。


「実は、主犯はハマンで仲間に裏切られたとか?」

「ヒネり過ぎw」

「あーあ」


モニター画面に似顔絵を並べ…1番右を指差すラギィ。


「コイツがラスボスね。だって、車には同乗せズに指示ばかり出してるわ」

「女性がどうなろうと証拠だけは消し去り、身代金は要求し手下も始末。冷酷な奴ね」

「なぜ口座を空にせず、少額ずつ引き出すのかしら。42万円や34万円なんて中途半端だわ」


一同、頭をヒネるが答えはナイ。


「頭を使う質問はルイナに聞こう?」

「ソレは諦めて。ラギィ警部」

「あら。意外とお堅いのね、SATOって」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SATO心理作戦部。


「モリン部長?」

「ルイナ。座って」

「私は…」


モリン・モール心理作戦部長は、デスクワークを続けて、顔も上げズに言う。


「あら?弁護士は来ないの?」

「必要?既に起訴は取り下げられたのょ?」

「体裁を保つためなの。仕方なかった」


意外なコトを逝うモリン・モール心理作戦部長。


「え。体裁って何?」

「首相官邸のアドバイザーが国家を危うくする機密情報をマルチバースに流出させた。博士号をいくつも持つ貴女ならワカルでしょ?」

「でも、農作物の品種改良に関する情報ょ?」


スレ違いの議論が続く。


「首相官邸、そして、テリィたんが恥をかく」

「テリィたんが?」

「貴女を秋葉原に巻き込んだ時点で、彼は第3新東京電力での将来をドブに捨てた。まぁ自業自得でもアルけど」


ルイナは、溜め息をつく。


「貴女と話しても無駄みたい」

「SATOのガイドラインに拠れば、機密アクセス権の査定に私情を適用するコトは厳しく禁じられてる。SATOメンバーである以上、私も指針を無視スル気はナイわ」

「私は、多くの時間と労力をSATOに費やして来たわ」


ソレは間違いナイ。しかし…


「でも、その理由は別にアルのでしょ?貴女は、官邸がらみの研究でお金稼ぎをしたいだけ。違う?」

「私のコト、まるでわかっていないのね」

「だから、コレから知るコトにスルわ。私は、貴女の全てを暴く。立ち入った質問も覚悟して。学者として生き残りたければ、貴女は全ての質問に正直に答える義務がアル」


ルイナは車椅子ごと回れ右。


「次は、弁護士と来るわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田山本町の現場。黄色いテープの規制線が張られて、パトカーが何台も集まる。真ん中に、白い布をかけられた遺体。


「ジャネ・トガバです。頭を1発で撃ち抜かれてる。暴行の形跡はありません」

「ホームレスの2人組が発見したそうです」

「そぉ…救えなかったのね」


ガックリと肩を落とすラギィ警部。


「急いで始末したんだわ」

「焦ってるのね。しかも、凶暴化してる」

「警部。コレを見てください。この2つのタイヤ痕はまだ新しい」


警官が路面のタイヤ痕を指差す。


「2台分?」

「恐らく次の車に乗り換えたのでしょう」

「やれやれ。まだヤル気なのね」


溜め息をつくラギィ警部。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「非対称支配を使って、過去の誘拐事件を考慮集合に組み立てて検討し、全てフィルターにかけてみた。極めて強力な回帰分析ょ。いわばオトリ数学。街路での誘拐事件に最適な条件を導き出したの。オトリだけでなく、全ての警官や検問も戦略的に配置したわ。先ず警察のパトロールと、その範囲から始めて誘拐事件の認知度を計算に入れた。そして、ターゲット層に反映させたワケ」


ドヤ顔のスピア。うーん話し終えたのか?

ソレすらも誰にもわからぬママ間が開くw


仕方なく、スピアの扱いには定評のアル僕が代表して質問w


「なるほど。で?」←

「モニターを見て。赤が最適な範囲。オレンジは2次候補ょ。万世橋(アキバポリス)のみなさんには、このターゲットゾーンの環境整備をお願いしたいわ。街灯を消したり、人通りを少なくして欲しいの」

「50カ所位アルわょ?東秋葉原を大陸的ロックダウン下に置くつもり?天安門みたいな暴動が起きるわ」


ラギィ警部が苦言を呈スルw


「あら。でも、正確には43カ所ょ」

「本命は?」

「本命は無いけど、サンダースネイク通りの角にはゼヒ囮を配置スルべき」


涼しい顔のスピア。


「その根拠は?」

「ナイわ。ヲタクの勘ょ」

「こりゃダメだ」


ラギィ以下、全捜査員が頭を抱える。その時…


「サンダースネイク通りは、私が担当します」

「ムーンライトセレナーダー?待って。貴女、オトリになる気なの?」

「だって、必要なのでしょ?中所得者ぽい、アラサーの女性捜査官って他にいる?…あ、エアリ。貴女は、地球が冷え固まってからズット秋葉原にいるんだっけ?」


エアリは、おどけて肩をスボめる。


「でも、外見はあくまでヤングという設定なので」

「え。じゃ私はオールド?」

「まあまあ」


最後の異論は思いがけないトコロから。


「姉様、でも…」

「エアリまでw何か御不満でも?」

「だって…姉様ってアラサーじゃなくて、アラフォーだと思ってました」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地良くて(僕含むw)常連が居座りメイド長(ミユリさん)は渋い顔w


「お役所仕事をしてきた役人がヒガんで気に入らない相手を潰す気ナンだわ!」

「え。何?誰が何を潰す気なの?」

「従来と異なる新発想や、捜査方法の斬新な視点とかょ。でも、もう知らないわ。どーでもいー」


ラボから"オンライン呑み"で参戦中のルイナ。荒れてるw


「待ってょルイナ。弁護士はなんて?」

「協力スルしかナイなんて言うの。ミユリ姉様、最初っから結果は決まってるのょ!」

「ソレでもヲタクなら戦わなきゃ」


またまた火をつけて回るミユリさんw


「ソレに姉様。私がテリィたんのキャリアに傷をつけたとか言われたの」

「まぁ。テリィ様は何て?」

「聞いたトコロで話を逸らされるだけだわ。マルチバースにデータを送った時、自分のキャリアへの影響は覚悟してた。でも、テリィたんの将来のコトはまるで考えなかった。バカだっわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の更衣室。アイシャドウを塗りながらミユリさん。


「最近のカメラって小さいのね。驚いちゃう」

「…ミユリ。何で貴女が囮捜査(アンダーカバー)を?若い子に任せればいーじゃない」

「ラギィ。ターゲットはアラサーなんでしょ?今回は、私みたいなおばーちゃんの出番ょ」


ラギィ警部が隣に座る。


「私、警察学校を出てすぐ治安の悪いニュー新橋のスラムで麻薬捜査をやらされた。私は、まだ(メン)が割れてナイからって。当時は、右も左もワカラナイ新人だったけど、5日目ジュダって男が私に音波銃を突きつけ、レイプしようとした。その後、治療と精神鑑定を受けさせられ、絶対に警察を訴えないって宣誓書にサインさせられた。新橋からの異動も可能だった。でも、私は翌日も西新橋の角に立ってた」

「なぜ私にそんな話を?」

「だから!まだまだこの先、いくらでも"その機会"はアルってコトょ」


ヤタラ濃いメーキャップのミユリさんが淡々と語る。


「テリィ様が、ご自分のキャリアを賭けた。だから、私も何かを賭けなきゃならないの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の円卓にPCがズラリと並ぶ。ソレゾレに捜査官の男女が張り付き、全員が忙しなく通信しPCを叩いている。


「オトリ9番、スタンバイ。待機せょ」

「18番、北に進行中」

「…3番、地下アイドル通りを直進。2本目を左折」


ふらりと夜の推し活通りに出て逝くミユリさん。

くたびれ気味のシングルマザー派遣社員を好演←


「5番、またブロックを回るわ。エアリ、マリレ。もう少し距離をとって。近過ぎるわ」

「姉様、ゴメンナサイ。マリレ、貴女が近づけって言うから…」

「だって、姉様が心配で…」


ホントに心配されてるか一抹の不安を感じつつ通りを歩く。


「5番、地下アイドル通りを南へ移動」

「SWATを移動させろ。14番のペースを落として」

「街頭の防犯カメラで5番を確認」


本部のモニターに、夜道を歩く"隙だらけの女"の画像。

と、背後から黒いバンが近づき女の横で徐行、顔を確認。


何事もなかったように再加速。走り去るバン。


「かかったわ」

「でも、姉様。ナンバーと車種が違います。どうしますか?」

「多分当たりょ。次の路地を右折スルわ」


果たして、ミユリさんが暗い路地を右に曲がると、暗闇に真っ赤なランプを点滅させて、さっきのバンが停まっているw


その横を通り過ぎようとスルと…


「死にたくなければ、おとなしくバンに乗れ!」


バンの後部ドアが開く!飛び出して来た男達に羽交い締めにされて、あっという間に車内へと押し込まれるミユリさんw


「引っかかりました!」

万世橋警察署(パレス)から全ユニット、ヒットした!5番が襲われた。繰り返す…」

「こちらラギィ警部。全ユニット、サンダースネイク通りに急行。追って指示する…映像と音声を出して!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


黒いバンの車内。


「サッサと床に伏せろ!」

「命だけは助けて。何でもスルから!」

「黙れ!」


後部荷室の床に倒されるミユリさん。


「怖いわ!貴方達は2人もいて音波銃を持ってるし!」


捜査本部で吠えるラギィ警部。


「車内に2人。音波銃を所持。緊急時の合言葉は?」

「"サンフランシスコ"です」

「停まります!」


バンは停車し、男達がスマホしながら車外に出て来る。


「似顔絵と照合しろ!」

「被疑者1番と2番を確認」

「ユニット8、2ブロック先に待機中。ユニット22は4ブロック先にいます!全員スタンバイ」


「バンが動きます」

「ヲタッキーズ、隣の通りを平行で追って」

ROG(了解)

「ユニット8、サンダースネイク通りでバンの後ろについて」

「ユニット8、追尾」


捜査本部の電話が鳴る。


「静かに。テリィたんが出るわ…お願い」


やっと僕の出番だ。


「もしもし」

「お前の女を預かった。リサヒ・ルマン。免許証番号はV72598349。指示に従えば12〜15時間後に生きたママ解放スル」

「リサヒと話をさせてくれ!」


取り乱すフリw


「警察を呼ぶな。クレジットカードをキャンセルして3つの口座全てに金を入れておけ。50万円ずつだ」

「そんな金は無いょ。リサヒに代わってくれ!」


いきなり切れるw


「使い捨てスマホからでした。半径3kmの中継ゾーンからかけてます」

「最寄りのユニット3つに尾行させて。ヲタッキーズ聞こえた?」

「ROG。やっとラスボスと会えそうね」


僕は釘を刺す。


「ミユリさんの安全を最優先してくれ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


疾駆するバン。追う警察車両。突然、バンが急停車!


「あのATMで46万円を引き出して来い。誰とも話さず車に戻ってくるんだ」

「46万円?」

「誰とも目を合わせルンじゃない。うなずけ」


うなずくミユリさん。カードを渡される。


「立て。立てょ早く!」


ATMでお金をおろすミユリさん。うつむいてバンに戻る。

息を殺し見守る警察車両。バン発車。一斉に尾行を再開。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、ルイナのラボ。


「湯川ポテンシャルは試した?」

「この指数じゃ範囲が有限になっちゃうわ」

「そっか。じゃダメね」


頭をヒネるルイナ。頭を抱えるスピア。


「ルイナ。協力してくれるのはありがたいけど…」

「気にしないで、スピア!ヒックスやボースの物理学には、私も前から興味があったから」

「ってか、クタクタのコンコンキチで帰って寝たいの!あ、電話だわ…もしもし?え。ミユリ姉様が?!」


ルイナが割り込む!


「またATM誘拐の件?組み合わせ論なら私の方が得意だけど、私が必要?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「練塀町12から万世橋警察署(パレス)。3度目のATMですが、ラスボスの気配は皆無です」


追跡車両からの報告に唇を噛むラギィ警部。


「引き続き目を離すないで」

「了解。潜入捜査官(アンダーカバー)、再びバンの中に放り込まれました」

「…ミユリさん」


本部のモニターにはミユリさんからの画像と音声が届く。

荒い息遣い。ドライバーがPCを開いているのが見えるw


「ねぇパソコン貸して。私、ネットバンキングでお金を送るから!」

「うるせぇ!伏せてろ!」

「そのノートパソコンで"スパイ大作戦"を見ましょうょ」


パシッ!ミユリさんを…叩いたのか?


「コイツ、サッサと始末しようぜ」

「突入しますか?」

「まだょ。私が合図スル」


犯人の物騒な発言。現場は突入を急ぐ。目を閉じる警部。


「ごめんなさい。私、1500万円、持ってる。1500万円ょ。どう?要る?」

「何?1500万だと?」

「ホントょ。TO(トップヲタク)…じゃなかった、前の夫も知らないヘソクリを貸金庫に預けてあるの。銀行が開いたら渡します!」


欲に目が眩んだ犯人の発言。


「自分が生きるためのウソじゃナイのか?」

「誓って嘘じゃないわ」

「行くぞ」


犯人は笑い出す。夜の街を疾駆するバン。


万世橋警察署(パレス)から全ユニット。未だ手を出すな。繰り返す、未だ手を出すな。距離を開けズに監視を続行!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「"スパイ大作戦"?ATMの追跡プログラムょ。私もネットワークを構築スルのを手伝ったわ」


コトもなげに話す車椅子のルイナ。すがる思いのラギィ←


「PCで操作出来ルンでしょ?とにかく、引き出す金額が半端過ぎるの。100や200じゃナイの。46万円だの34万円だの半端な金額ばかりを引き出してる」

「でも、妙な金額だからこそ、その取引には何か別の意味があるハズょ…わかった、ホール効果だわ!探りを入れてるのょ!つまり、電流に対して垂直に磁場をかけるコトにより、導電体の両端における差を測定しようとしてルンだわ!」

「な、何の話?ソレ美味しいの?」


慌てるラギィ。慌ててルイナが解説←


「金額やカード番号やATMの位置などから"スパイ大作戦"を通して流れるお金のフローが浮かび上がる。恐らく犯人の目的は"スパイ大作戦"のハッキング。ハッキングして、お金のフローを好きに書き換えるつもりだわ」

「…例えば、ATMへの現金の補充命令を書き換えるとか?」

「YES。4〜5日を機に残額が少なくなると"スパイ大作戦"から現金輸送業者へ自動的に現金補充の指示が出てる。ソレを書き換えられたらタイヘンなコトになる!」


捜査員達は総立ちになる。


「つまり"スパイ大作戦"をハッキング出来れば…」

「大量の現金を、自分達が襲い易いATMに補充スルよう命令出来る?」

「輸送時刻も襲撃しやすいように思い通りに決められるワケか!」


捜査本部のアチコチで呪詛の声が上がるw


「何とかならないか?SATOのパツキン姐さん(ルイナ)!」

「コッチからは追跡出来ナイの?」

「ソレは簡単じゃナイ」


漂いかけた失望は、瞬時に歓喜に代わる。


「でも、私なら出来るわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「練塀町12から万世橋警察署(パレス)。5度目のATMです。コレでカードの限度額が満額引き下ろされました」


再び動き出すバン。追跡する警察車両。


「今、何時だ?」

「4時前だ。この女、夜明けまでに始末しないと」

「じゃ急がないとな」


首都高上野線の高架下に入る。


「まずいわ。処刑スル気ょ!」

「パレス!突入命令を!」

「銀行が開くまで待って。1500万円ょ?神田明神に誓うわ!」


ラッパ型に開いた銃口がミユリさんの眉間を狙う。


「せいぜい祈っとけ」


次の瞬間ミユリさんが銃口を掴む!バンの中で発砲。2発!


「突入!全ユニット突入!急いで!」


四方八方から覆面パトカーが飛び出してバンを取り囲む。

バラバラと警官が飛び出す。ヲタッキーズが舞い降りる!


「私はムーンライトセレナーダー!動いたら撃つ!」


バンの後部ドアが開いて、転がり出た潜入捜査官(アンダーカバー)が振り向きザマに必殺技"雷キネシス"のポーズをピタリとキメる!


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「な、何だ?!」

「両手を上げろ!抵抗すれば射殺スル!」


後部荷室に仁王立ちになる犯人。その犯人に向け、警官隊の拳銃、短機関銃、ロケットランチャー、擲弾筒が照準スル。


「わ、わかった!ギブアップ!」

「右に回れ。コッチを向け!」

「ドライバーも確保!」


警官隊に運転席から引きずり降ろされたドライバーが、ボンネットに叩きつけられて、後手に手錠をかけられる。


「確保!」

「ムーンライトセレナーダー、御無事で?」

「お陰様で」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜。パーツ通りの地下深くにあるSATO司令部。


秘密エレベーターから降りてくるミユリさん。潜入捜査の活躍をモニターしてた司令部員から拍手が湧く。嫌な役回りw


「ムーンライトセレナーダー。合言葉はどうした?」

「テリィ様…"サンフランシスコ"でした」

「ナゼ合言葉を言わなかった?」


ミユリさんは、泣きそうな顔になる。1番見たくない顔だw


「だって…まだラスボスが姿を見せなかったから」

万世橋(アキバポリス)のSWATは突入に5秒かかる。5秒の間に音波銃で頭を吹っ飛ばされたらどーすルンだょ!」

「ごめんなさい、テリィ様。でも、私は…」


僕は今、アキバで1番嫌な野郎だwあーあ←


「ムーンライトセレナーダー、変身を解け。コードP-110」

「わかりました。明朝までに始末書を提出します」

「当分、謹慎だ。自分の存在価値に悩んでもらおう。スマホ以外、触るな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ムーンライトセレナーダーの潜入捜査で捕まった2人は"リアルの裂け目"の往復歴がアル傭兵で、秋葉原においても前科がアリます。特にモニター右側のチェリ・チェラは、死んだザック・トリンの蔵前橋重刑務所の仲間です。慣れたモンですょ手錠かけた途端に弁護士を呼べと来た」

「ラスボスの居場所を吐かせるために死刑で脅したいと次長検事のミクスに言って」

「やってます。でも、時間がかかります」


ラギィ警部は、ハッパをかける。


「レイプ誘拐、2度の殺人。そろそろ、ラスボスは詰めに入るハズょ」

「しかし、ヘマしたハマンを殺して、代わりに入れたザックは事故死。残った手下は2人共捕まった」

「だから、逆にココまで来て全部を諦めるとは思えないの。ねぇルイナ。どう思う?"スパイ大作戦"はどう?」


ラボからリモート参戦中の超天才に意見を仰ぐ。


「"スパイ大作戦"には、未だ侵入の形跡はナイわ。システムの管理者が暗証番号を変えたから、ゲートウェイを探すだけで何日もかかるハズょ」

「ルイナは監視を続けてるの?」

「もちろん。スピアがハッキングしてる」←


本部のモニターに"スパイ大作戦"のハッキング画像。


「秋葉原の全ATMが丸見え?」

「全国ょ…現金輸送車強盗のショッピングリストも作成しといたわ。"スパイ大作戦"は、民間のシステムだから閲覧に機密アクセス権は不要。今回のATM誘拐は"スパイ大作戦"の動きを観察し、プログラムに入り込むコトが目的だった。ちょうど2年前にも取引や通用口の位置を特定するコトで…」

「ソコまでだ。ルイナ、オフラインにしろ」


またまたアキバで…今度は2番目に嫌な役回りw


「テリィたん…嫌ょ!私、ラギィの力になるわ。ラスボスは、計画的に誘拐や殺人を行う、相当に頭が切れる奴ょ。しかも、次の機会を狙ってる。元カノのSATOの心理作戦部長に気を遣って、ラスボスを野放しにしてて良いの?」

「待てょモリンは元カノじゃナイ…わかった。でも、ラスボスは、数日中に犯行に及ぶハズだ。そんなに早くジョイ・ハマン並み腕利き傭兵を雇えるか?」

「テリィたん、ソコが甘いのょ。ハマン亡き後、別の腕利きを温存したくて、ザック・トリンみたいな3流を雇ったって、何で考えられないかな」


あ、なるほどw


「じゃ何でハマンは温存しなかったんだ?」

「ソレは、独自のスケジューリングアルゴリズムを使っているから」

「な、何だ?そのチコちゃんみたいな物言いはw」


珍しく超天才様はドヤ顔←


「コンピュータがタスクの難度や所要時間を計算し、ソレをシステムのリソースに対して割り振るアルゴリズムのコトょ」

「ソレって美味しいのか?」←

「…テリィたん。ラスボスが使える資源(リソース)には限りがアルの。武器、金、車。そして何より人手。同時に2箇所で使える資源もあれば、機能が1つの資源もアル。時間との勝負だから、資源の利用効率は最大化スル必要がアル。つまり、ムダを省き資源をフル活用スルの」


かろうじて理解。ココで世界最強の相槌を発動w


「なるほど…で、結論は?」

「結論は未だょ。だって、完璧なスケジューリングアルゴリズムは存在しないンだから。スミスルールにビームサーチ…世界中で誰もが自己流のアルゴリズムを開発して百花繚乱の世界なワケ」


ん?世界最強の相槌はココで打つべきだったかw


「でも、一方でアルゴリズムにはクセがある。テリィたんのヘタクソなJAZZのアドリブや画家の筆遣いと同じ。スケジューリングアルゴリズムもまた、設計者の心を映し出すわ。そして、ソレは実際に選択した過去の結果だけではなく、同時に彼が行う未来の選択も炙り出す。つまり、次にどんなアドリブをプレイし、どんな筆遣いをスルのかがワカル…」


うーんもっと先みたいだw


第4章 アキバの囮


「GO!GO!GO!」


妻恋坂を猛スピードでバックして来た2台のグレーのセダンが、交差点近くに停車中の現金輸送車を前後から挟み込む!


「手を上げろ!金は何処だ?」


スルスル開いたウィンドウから動物マスクの男が音波銃を突きつける…が、次の瞬間数10の赤いポイントに照射されるw


万世橋警察署(アキバP.D.)!武器を捨てろ!」

「全員動くな!動けば狙撃手が射殺スル!」

「全ユニット、突入せよ!」


万世橋(アキバポリス)のSWAT、警官隊、ミユリさんを欠くヲタッキーズが一斉に飛び出し、強盗団を圧倒!次々と武装解除して逝く。


「全被疑者の身柄を拘束しました!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


作戦終了。ヲタッキーズや協力していたSATOの特殊部隊が司令部に帰投。ムーンライトセレナーダーが笑顔で迎える。


「お疲れ様。どうだった?」

「一網打尽です。ルイナのアルゴリズム解析、ドンぴしゃりでした」

「ラスボスもアッサリ逮捕しました!」


電話が鳴り、笑顔で出るムーンライトセレナーダー。


「南秋葉原条約機構です。はい。お待ちください…」

「姉様!アンマリです。いつまで謹慎なさるおつもり?」

「セラピーを受ける前のテリィ様なら3ヶ月かな。でも、モリン部長のセラピーを受けた今なら…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「テリィたん?…どーしたの?こんな夜更けに私のオフィスに来るナンて」


気のせいか残業疲れの顔をパッと輝かせるモリン・モール。


「ルイナのコトで話がアル」

「…なるほど。じゃお昼間の公式面接まで取っておいて」

「彼女の罪をかばう気はナイけど、ルイナは役に立つ」


SATO心理作戦部長の顔には、アリアリと失望の色。


「でもね、彼女の代わりには困らない。超はつかないけど、普通の天才ならワンサといるわ」

「モリン。アキバを離れて久しいだろ?」

「テリィたんは、秋葉原が長過ぎる」


辛い会話になりそうだw


「つまり?」

「書類からでも事情はワカル。ヲタッキーズの強引な捜査方法や貴方のセラピー通い。腹心のミユリ姉様を謹慎させて、顧問の超天才は問題を抱えてる。テリィたん、貴方はSATOの、いいえ、秋葉原の問題児なの」

「でも、ヲタッキーズの問題解決率は85%だ」


モリンは、溜め息をつく。


「ソレがヲタッキーズのやり方?今日も、ルールを無視してルイナに手伝わせたらしいわね。ヲタッキーズには、もうSATOのルールは適用されナイのね」

「OK。僕のコトが嫌いならソレまでだ。でも、ルイナを巻き込むな」

「物事は全て繋がってる。私の気持ちも知らないで。だから、貴方は問題児なのょ!


僕は、無言で回れ右。モリンのオフィスを出る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日。SATO司令部に1本の電話。


「ミユリ姉様。私、ラギィとスピアにおいて行かれた時、昔を思い出したわ…遠足を病欠した気分だったの」

「あら、私は病欠が大好きだったわ。ダラダラして、お昼のTVを見ながらチキンスープを飲む。うふっ」

「え。姉様、チキンスープがお好きなの?」


超天才は、意外そうな声だ。


「おかしい?…ルイナは、ずっとSATOの顧問をやってきたんだモノ。寂しくなっても当然ょ」

「私、今までズッとSATOの顧問は気晴らしや趣味だと思ってた。ちょっとした寄り道みたいな。小さい頃から、宇宙の真理を究める使命があると期待されて来た。だから、使命を果たせないのは、この寄り道のせいだと言いたかったの。でも、気がつかなかった。その寄り道が、この秋葉原が、こんなに恋しくなっていたナンて」

「ルイナ、機密情報アクセス権のコトは気にスルことナイ。必ず取り戻せるわ。ルイナがルイナでアル限り」


ミユリさんは、微笑む。


「って、テリィ様がおっしゃってたわ」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"囮捜査"をテーマに、中所得者のアラサー女子達、高次なアルゴリズムを駆使する反抗組織に雇われる使い捨ての傭兵達、超天才の機密情報アクセス権復活の成否を握る心理作戦部長、アルゴリズム犯行組織を追い警察の顧問となる超天才、その相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部、就中、ヒロイン役のスーパーヒロインなどが登場しました。


さらに、超天才の機密情報アクセス権の復活を求める動きなどもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、やたら行儀よくマスクしてる外人さんがメッキリ増えた秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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