51 再びフラッシュバック
夕焼けに赤く染まった公園に少女が二人いた。少女たちは楽しそうにブランコに揺られていた。公園には他に誰もいなかった。公園には少女たちと少女たちの影だけがゆらゆらと動いていた。
「ねえ、琴音……」
ひとりの少女がブランコを止めて言った。
「私たちって、将来は何になるのかな」
「ショウライ?」
「将来だよ。ねえ、琴音の夢は何?」
「夢かぁ……」
琴音はふっと微笑んだ。
「こうしてずっと鞠奈といることかな……」
「そんなのつまんない」
鞠奈はご機嫌斜めだった。
「ねえ、琴音は何になるの?」
「そんなのわかんないよ」
「つまんないの……」
「じゃあ、鞠奈には夢があるの?」
「わたしの夢……」
鞠奈は笑顔で何か答えようとした。しかし、その言葉は、魔法にかかったように喉の奥でつまって何も出てこなかった。鞠奈はひどくがっかりした様子で、そのまま、視線を下におろしていった。
「どうしたの……?」
琴音はびっくりして尋ねた。
鞠奈はじっと自分の目の前の地面を見つめていた。そのうちに鞠奈は、何かに気づいたようにだんだん驚いた顔になっていった。そして、鞠奈の唇は震え出して、目からは涙が溢れだして、終いには鞠奈は声を上げて泣き出してしまった。
「どうしたの……」
琴音は驚いて、鞠奈が見ていたものを探した。ところが、鞠奈が見ていた地面には何もなかった。ただ、そこには鞠奈自身の影がぽつりと映っていたのである。




