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47 三人の男のアリバイ

「毒を入れたタイミングの謎についてはひとまず置いておくとして……。現在、私は第一の殺人に立ちかえって三人の人物を疑っているんですがね……」

 根来は眠そうな目を見開いて言った。


「誰です、三人の人物って……」

「村上隼人、滝川真司、赤沼蓮三……」

「アリバイがある人ばかりじゃないですか」

 根来が珍しく斬新な犯人説を持ってきたので、祐介は驚いて目を輝かせた。


「ええ、事件の起こった大晦日の夜、村上隼人と滝川真司は京都にいましたし、赤沼蓮三は横浜にいたのですからね……。ところで、村上隼人のアリバイについて調べたところ、実に興味深い事実が浮上してきた……」

「そもそも村上隼人のアリバイはどんなものだったのですか」

 それ自体、祐介は知らされていなかったのである。


「それなんですが、村上隼人の言っていたアリバイの証人というのが実は滝川真司だったんです」

「なんですって……」

「事件当日、村上隼人は京都で滝川真司に会っていたのですよ」

「一体、いかなる目的で……」

「それに関しては村上隼人も本当のことを言わないんです。ただ当日、滝川真司に会っていたことがアリバイなのだと……」

「しかし、おそらく琴音さんに関係する理由でしょうね」

「そうでしょうな。おそらく……」

「滝川真司さんもこのことをずっとひた隠しにしてきたのですね……」

 祐介が滝川真司と喫茶店で会った時、彼が村上隼人のことを一切喋らなかったのを思い出した。


「ええ、彼はあまり多くを語ろうとしないのです。しかし、それはともかく……」

「ええ」

「問題はアリバイですよ。動機の面から言って村上隼人犯人説はまだ捨てがたい。するとこれは偽造されたアリバイなのではないかという気がしてならないのです。一連の殺人事件の動機が琴音の復讐ということであれば、村上隼人、滝川真司の二人はまず疑わしい。それが、村上隼人のアリバイの証人が滝川真司だというのはどうしても引っかかる……。彼らは共に琴音側の人間ですし、口裏を合わせているのではないかという気がしてならない……」


「共犯者だというのですか」

「その線で考えています……」

「赤沼蓮三が疑わしいというのは……?」

「例の第二の手紙の内容を見ていると、これは蓮三が重五郎殺しの犯人だと言わんとしている気がしましてね……」

「しかし蓮三にとって赤沼重五郎は、実の父親であって、文面の「家族ならざる者」これはつまり「家族にあらざる者」を意味するのですから、これは当てはまらない……」

「それはそうですが……これはまったく捜査本部でもまったく同意を得られなかったのでね……しかし、蓮三は重五郎殺しの報いを受けて毒死した罪人だと……この手紙というのはそういう解釈もできるのではないかという気がしてならんのです……」

 祐介は首を傾げながら、手紙の内容を思い出した。


            *


 赤沼家の人間よ

 人を呪わば穴二つ

 罪人は毒を好む

 この度、最期を遂げるのは家族ならざる者を殺害した罪人なり


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