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23 麗華のアリバイ

 もし琴音の出生や結婚話にまつわる悲劇が、すでに聞かされている通りであれば、重五郎が殺されるのは当然と言えば当然なのだろう、と根来は考えるのである。というのは、赤沼重五郎という人物こそ琴音を赤沼家に引き入れた人物であり、また同時に赤沼琴音の自由な結婚を認めなかった人物でもあるからである。


 琴音の自殺が、村上隼人との結婚が認められなかったことを動機として行われたものであると考えるならば、赤沼重五郎にこそ琴音の死の責任があったというのは、まことに真実めいた論理である。

 しかし、そんな推論よりも、今は麗華の事情聴取である。


「それで? あなたは今夜の八時頃、どこで何をしていらっしゃいましたか?」

「わたしは……食堂でパーティーをしていました……」

「食堂から動きませんでしたか?」

「いえ……そんなことは……自由に出入りしていました……」

「アトリエには行きませんでしたか」

「行っていません」

「そうですか、どなたかそれを証明する人はいらっしゃいますか」

 麗華は、不審げに根来の顔を見まわし、堪らなくなって声を荒げた。


「なんでそんなことを聞くのですか……? 刑事さんたちは、犯人が赤沼家の人間であると考えているのですか……?」

「いえ、そ、それは……」

「今のはアリバイを確認したのじゃありませんか?」

「麗華さん……このような場所での突然死の場合には……」

「そんなものは適当な誤魔化しでしょう。一体なぜ、赤沼家の人間のことを疑う必要があるんですか」

「麗華さん!」

 根来は、激しく麗華を怒鳴りつけた。それは、老師が弟子に喝を入れるようなものであった。


「こうして、人がひとり不審死を遂げたのです。あなたが捜査に協力したいと仰るならば、まずはあなた自身がアリバイを喋ることが第一の捜査協力ではないですか!」

「………」

 麗華はそう言われて、押し黙った。


「すみません……やはり少し感情的になりすぎているようですわ……わたし」

「いえ、感情的になるのは当然のことですよ……」

「おかしくなっていました……いえ……今でもおかしいんです……なにか…….わたし……いつもと違ってしまっているんです……」

「良いんですよ……誰でもそうなるんですよ」

 口ではそう言いながら、根来はやれやれと何気なく手の甲で額の汗を拭う。


「もう一度、お聞きします。あなたがアトリエに向かわなかったことを証明する人物はいますか?」

「おりません……」

 麗華は項垂れた様子でそう言った。

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