机の上にそれを広げたところで。
ちょいと。あんた。やめなさいよ。
それを広げるのをやめなさいと言ってるの。
机の上に広げたところで何になるの?
その面倒な字が並べられた紙は見づらくないかい?
『ああすれば』なに?
『こうすれば』なに?
『不安』?『恐怖』?『できない自分への苛立ち』?
世迷いごとを言っている暇があったらその紙を壁に飾りなさい。
そして色を塗るの。
なんでもいいわ。
そうね、素敵な色が重なるように。
混ざっちゃだめよ。
それは違う。
いい?塗った?
そしたらその上から黒い絵の具を塗りなさい。
全部塗りつぶすの。
いいから。
ぜんぶ。ぜんぶ。
そうね、嫌なことを吐き出す時みたいに。
できた?
そしたら仕上げにそれを削ってごらんなさい?
花火でもいい。花でもいい。
あなたの好きなものはなに?
え?ハダカデバネズミ?
いいんじゃない?
その形に削りなさい。
ほら、見えてきた?
あなたが並べた文字たちが素敵な色に染まって、あなたの好きなものの形になった。
机の上で考えるのも大事だけれど、その紙を汚すことを恐れないで。
紙はいつか朽ちるのだから。
朽ちる前に彩りなさい。
なんでもいい。
どうとでもなれって。
紙全体を見るために背筋を伸ばしなさい。
そしたら少し体が軽くなるでしょ?