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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
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フィロスの秘密3



 試しに、実際に持ち出してみなさい、持ち出した物で何かアクセサリーを作らせるから、欲しいアクセサリーに合うものを、と言われる。


少しだけ、考える。

アクセサリーではないけれど、無くて、少しだけ、不便だなあ、と思っているもの。


「あの。なんでも良いですか?」

「もちろん。」

「懐中時計が、欲しいです。」

「は?」

「えっと、わたくし、時計を持っていなくて。学院にいるときは教室内の時計や鐘の音で時間がわかるから、あまり気にならないのですけれど、街に出るときとか、休日、寮室で過ごすとき、正確な時間がわからなくて…。」


我が国の時計はほんの少し高価で、贅沢品だ。

平民はまず持っていない。

その代わり、街中では時刻を知らせる鐘が鳴らされるし、時計が必要なほど正確な時間が要求されているわけではない。

待ち合わせなども、鐘がいくつ鳴る頃にと大雑把だ。

学院内では授業の時間が決まっているので、教室やホールの壁には時計があるし、鐘もちゃんと鳴って、正確な時間で活動しているけれども。


国からの給与が貯まっているし、時計を買えないわけではないけど、最低20万ドールという金額に、ビビッて買えていない。

薬草などはどんなに高価であっても平気で買っている私だけれど。

同級生にも持っている人は少ない。

普通の学生はあまり必要とは考えていないようだ。

時計はあくまで、贅沢品の扱いである。


「…なるほど、理解した。女性は指輪やネックレスなどを欲しがるものだと思っていたのでちょっと意外だが、問題ない。…ふむ。では、懐中時計の蓋に嵌める石を選べば良いのだな。」

「あの…。もう一つ、我儘、言ってもいいでしょうか。」

「構わない。君の望みは、何でも叶える。」

「うっ。…では、あの、時計の蓋の裏には写真を入れられる、と聞いたことがあります。だから、あの、フィロスの写真を蓋の裏に入れたいなあ、なんて…。」

顔がどんどん真っ赤になっているのを自覚して、声がだんだん小さくなる。


「私の、写真?」

フィロスが不思議そうな顔をして、その後、少し、紅潮した。

…彼の顔が紅に染まるのは、初めて見たかもしれない。


「そうか、それが、君の望みなら。…しかし、私は写真が嫌いなので、手元にない。どうせこれから新しく撮るなら、2人一緒に並んで撮るか?時計も2つ作らせて。」


ぱっと目を輝かせる。

「よろしいのですか?」

「もちろん。…では、石は、何にする?」

「この指輪と同じ石が良いのですけれど。その、2人の色、なので。」


フィロスが、はっとしたように、目を瞠り、私を抱き寄せて髪をなでる。

「君は…、本当に。私を喜ばせてばかりだな。」


「しかし、いつの時代の宝飾品だ?このブラックダイヤは。片端から、2人で手分けして見て回るしかないが、すぐ見つかるかどうか?」


ふと、片隅に、宝飾品が何も載っていないテーブルが一つあることに気付く。

椅子もここだけ1脚ある。

もしかして。図書室(メイ・パラディース)のキャレルと同じ?


そのテーブルに近づく。

「色は、黒。日の光で藍色に変わる。透明度が高い宝石がついた、宝飾品。」


とたんに、テーブルの上に次々と宝飾品が現れる。

ティアラ、腕輪、ネックレス、指輪、ブローチ、思ったより多かったようで、テーブルからあふれ出す。


「ソフィア!?」

「やっぱり、同じ、システム、のようです。」

「ソフィア?」

「ここから出たら説明させてくださいませ。とりあえず、ここに現れた宝飾品から探しませんか?」

「…わかった。」


あふれた宝飾品はすべて、黒い宝石が付いている。

ブラックダイヤ以外にもいろいろな宝石がある。その中から、ひとつずつ見ていく。


「あ!これ…。」

銀色のフェロニールの真ん中に、大粒のブラックダイヤが輝いている。

「たしかに、これだ。よく見つけたね。」

フィロスも感心したように言う。


フィロスが、フェロニールからブラックダイヤを外し、4つに割った。


「出入りの職人に2粒渡して、1粒ずつ懐中時計の蓋に嵌めさせよう。」


小さな石であれば、珍しい石であっても公爵家に眠っていた。で通用するそうだ。

このブラックダイヤは、フェロニールから外した石そのままでは外に出すことができないくらい貴重な宝石だと、宝石には疎い私にも理解できた。



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