フィロスの秘密1
翌日。
フィロスに呼ばれて朝食のあと、彼の書斎に行く。
書斎に入ると、彼は書斎に鍵をかけた。
その上、盗聴防止の魔法陣をドアに張りつける。
「ソフィア。私から、君に贈り物がある。」
「フィロス?」
彼は首まで詰まっているシャツの一番上の上のボタンをはずし、胸元からクリスタルのネックレスを取り出した。
そのネックレスを見て、はっと、息を飲む。
私の、クリスタルのネックレス?
思わず、自分の胸に手を触れ、自分のネックレスがそこにあることを確認する。
…ある。
では、違うもの?
「ソフィア、私の手を取って。」
フィロスが手を差し伸べてくる。フィロスの手に自分の手を重ねると、ぎゅっと握られ、彼の声が、響く。
「アルカジェリュー。」
とたんに、私達は書斎から別の場所に転移していた。
その部屋からは、透明な壁と扉ごしに、さっきまでいた書斎が見える。
…私の、図書室と、同じだ。
違うのは。
「きれい…。」
その部屋は宝飾品であふれていた。
一番奥がどこか、この空間もわからない。
図書室と違うのは、腰くらいの高さの真っ白い布が掛かったテーブルが見渡す限り並べられ、そのテーブルの上には、宝石店と同じようにネックレス、指輪、腕輪、ティアラ…などの宝飾品が飾られていることだった。
「ここにはおそらく、3000年前からの我が国で世に出た宝飾品がすべて、ある。」
フィロスが近くのテーブルからネックレスを持ち上げる。
「手前のテーブルに載っている宝飾品は、最近、我が国のどこかで売り出されたか、作られた品物だと思って良い。」
衝撃を受ける。
私の、図書室と同じではないか。
保管されているのが、本か宝石かの違いで。
「この部屋を誰が作ったかは知らない。公爵家に代々伝わる言い伝えは、ドラコ王の4宝具。ドラコ王が作った、と、言われている。」
「ドラコ王の、4宝具…。」
「私はこの魔術具のネックレスを、祖父から譲られた。祖父が亡くなる時に。8歳の時に。代々のスナイドレー公爵当主が引き継ぐもの、と言われて。」
突然、フィロスが私の手を取り、私にクリスタルを握らせた。
「これを、ソフィア、君に譲る。ケーデ。」
その瞬間、私はそのネックレスの主になったことを感じた。
お母様に譲られたときと、同じように。
慌てて、フィロスにネックレスを押し返す。
「い、頂けません、公爵家当主のもの、ではありませんか。お返ししたいです。」
「ソフィア、君に持っていてほしい。私が持っている、すべてを君にあげよう。…そのかわり、君を。君だけを私に欲しい。それだけが、私の希望。」
フィロスが私の額にキスし、そっと、私の両頬を両手で包んで、私の瞳を覗き込む。
「フィロス…。わたくしはもうすでに、あなただけのものよ?わたくしは、あなたの愛情だけあれば、他には何もいらないわ?」
「ソフィア…。」
フィロスに、もう一度、クリスタルのネックレスを返そうとする。
でも、フィロスは受け取らない。
「ここは私が持っている必要が、ないものだから。」
ふと、気付く。
もしかしたら、私の図書室と同じように、ここにある宝飾品は持ち出せないのだろうか?見るだけで。