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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院3年生
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スナイドレー教授の謝罪



食後、スナイドレー教授に彼の書斎に案内され2人きりになったとき、彼にお礼を言った。

「あの、教授。今日は助けていただき、ありがとうございました。」

「構わない。…ハーブティを用意した。飲めるか?」

うなずき、口につける。

「おいしいです。…あ、これ、薬草、オムニポテンス入ってます?」

「わかるのか?」

「月見草のしずくを作る時に使いましたので、たまたま味を覚えてます!薬としての効果を格段に上げてくれる薬草ですよね?」

「…月見草のしずく?学院では教えないぞ?あんな高度な調合。なぜ調合を?」

スナイドレー教授が、あきれたように問いかけてくる。

「ええ…と。ちょっと、参考書を見ていたら、名前がきれいで、興味がわいて?」


嘘だ。

私はちゃんと目的があって、調合した。

スナイドレー教授に何かあったときのために。治癒が目的の薬が必要になった時に備えて。

実は、治癒を目的とする薬はレベルが高いものほど、月見草のしずくが必要だ。

この月見草のしずくは材料が貴重で調合にも時間がかかる。たとえ、時間短縮の魔術をかけたとしても、最低、1週間はかかる代物なのだ。

従って、お店にはまず売っていない。仮に売るとしても、とんでもない金額になるだろう。だから、何かあった時にいつでも使えるように調合しておいた、というのが正しい。

あの日、お母様が泣いていた日。あの日のようなことが、2度と無いように。

…おかげで、アムールの日、あのお菓子も作れたんだけれど。


「その、いろいろ、すまなかった。」

スナイドレー教授の声に、はっと、我に返る。

「え?」

「ずっと、君を傷つけてきたから…。」

心が、ほわっと温かくなるのを感じた。

「大丈夫です。もう、忘れました。」

教授は少し、悲しそうな顔をした。


「ところで、私はまだ仕事が残っているので、今晩から2、3日、ここを留守にする。一人にして申し訳ないが、何かあったら、マーシアかフィデリウスに言ってくれ。屋敷内は自由にどこでも入ってよいから。」


いなくなっちゃうのか。

私のはずんでいた心が、しょぼんと小さく縮んだような気がした。顔に出てしまったのだろう。スナイドレー教授が困ったように私の手を取る。


「不安、か?」

慌てて、首を振る。

「大丈夫、です。ここに居る方は、皆さん、優しいですし!あの、予習して待ってます。…って、ここ、図書室ありますか?」


スナイドレー教授が苦笑する。

「休み中くらい、勉強から離れても良いと思うが?図書室はある。マーシアに言えば、案内してくれるだろう。読みたい本は持ち出して構わない。」

「ありがとうございます。」


「そろそろ、寝なさい。傷を癒すには、眠るのが一番だから。」

「はい。おやすみなさい。それと、…行ってらっしゃいませ。」


スナイドレー教授の顔が一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になったが、やがて、泣きそうな微笑みを浮かべる。


「ああ。ありがとう。…行ってくる。」




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