閣下の目論見
スナイドレー教授は、学院長と相談した結果、魔獣の卵は街中の民家よりも学院内に持ち込まれた可能性が高いと判断し、学院内を昨夜から捜索していた。
そんな時、森の中から、強い魔力を感知。
それは、ステラの、銀の光。
「まさか、ソフィア・ダングレー?」
スナイドレー教授は身体強化を掛け、空中を飛ぶように走り、そのステラの光の近くまで跳躍する。
そして、まさに、魔獣が彼女に襲い掛かろうとしているのを見た。
「ちっ!間に合うか?グラディウス!」
銀の長剣を手に握る。
剣を両手で頭上にかかげ、魔獣の頭上に跳躍する。
「星々の斬撃」
剣の切っ先を、魔獣の頭頂へと振り下ろす。
幸い、ダングレーには怪我はなかったようだ。
学院に向かって歩いていく彼女の後姿を見てほっとしている自分に気付く。
「そんな馬鹿な…。」
スナイドレー教授は目を彼女から背けて、意識を目の前の魔獣に向ける。
「ノアールドラゴニールの子供か。卵から孵って間もないな。」
幼獣だったのが幸いか。
幼獣でなかったら、ソフィア・ダングレーは命を落としていたかもしれない。
「私は、何を考えて…?」
「ちっ!…魔獣はこいつだけか?持ち込まれた卵は1個だけと聞いているが、学院長に連絡して、このあたりを念のために調査する必要があるな。」
「失敗したと?」
「閣下、申し訳ございません。」
「あんなところに立ち入る者はいないと思っていたが、油断したか…。」
「魔獣を持ち込んで、どうなさるおつもりだったのでしょうか。1匹の魔獣なら学院の教授達であっさり倒されたと思いますが。」
室内に青年が入ってくる。
「リュシュリュウか。」
「到着が遅れて、申し訳ございません。」
リュシュリュウは、閣下の前にひざまずき、挨拶をする。
「学院内は、どうだ?」
「変わりはございません。」
「魔獣の話は?」
「全く出ておりません。」
「誰が魔獣を倒したか、わかったか。」
「それも何も。そもそも、魔獣の話自体が出ておりませんし、湖のほとりは戦闘の痕も残っておりませんでしたので、それ以上は…。」
「戦闘の痕も残っていないということは、ハッカレー学院長が自ら動いたな。」
「学院長が…。」
「それにしても、こんなに早く見つけられるとは。卵から孵ってそれほど瘴気もなかったと思われるのに。さすがは、ハッカレーということでしょうか。」
「もう少し大きくなったら、学院の生徒が多く外に出ている時間帯に襲わせようと思ったのだが、残念だ。」
「え?生徒を?」
リュシュリュウが息をのむ。
「生徒が死傷すれば、学院長の責任。学院長の座からハッカレーを追い落とすことができる。」
「なるほど…。しかし、学院の生徒は魔術師の卵です。魔術師は大事にされるのではなかったのですか?」
「リュシュリュウ、お前はまだ甘い。1匹のノアールドラゴニールごときで死ぬような魔術師は大した魔力を持っていない。そのような者は、いらぬ。」
「は…。」
「もう一度、魔獣を持ち込むのは難しいだろう。何か他の方法でハッカレーを学院長から追い落とす方法を考えねば。…リュシュリュウ、お前も何か考えてみよ。」
「承知、しました。」




