諦めたくない想い
私はスナイドレー教授の執務室を飛び出した後、自分の寮室に帰り、ベッドにうつぶせになって泣いている。
お菓子を捨てられた瞬間、自分のことがようやく、はっきり、わかった。
スナイドレー教授が本気で好きなんだ。
認めてしまえば、簡単なことだった。
入学初日から、あの目に捕らわれてしまっていたんだと、思う。
憎まれている理由はわからないけれど、いつかは私自身を見て好きになってほしかった。
「だめ、なのかな…。どうしたって、想いは、届かないのかな…。」
もう、諦めようか。
私を好きだと言ってくれている、リチャードやリュシュー先輩もいる。
何が悲しくて、自分を憎んでいる人に想いを寄せなければならないのだ。
「でも。」
胸をぎゅっとつかむ。
いつも、しかめっ面をして、冷たい目をして、笑顔など見たことがない、教授。
そんな彼の、笑顔を、見たい。
「諦めたくない…。」
どうせ、私は失うものが無い。
学院を卒業したら、ダングレー侯爵家には帰るつもりはないから、家も家族もない。
あがいてみよう。諦めないで。
卒業したら、きっと会えなくなる人だから。卒業までは、いっぱい話しかけてみよう。
なぜ、私が嫌いなのか、聞いてみよう。
どうせ嫌われているのだから、これ以上、嫌われたって、問題ない。