休み明け 2人目のプロポーズ
7月14日、後期授業が始まる前日に、早朝から学院に戻った。
Aクラス。よし。
成績、2位。1位は、リチャード・モントレー。くやしい。また、負けた。
「相変わらず、早いなあ~。」
隣に、のっそりと、リチャードが立つ。
「あ、おはよう。また、同じクラスね。よろしく。」
リチャードは、ちらっと成績表を見て、にっと笑ってから私に向き合う。
「ソフィア、俺と付き合わない?」
「は?」
「俺は次期公爵だし、この通り、成績は良いし、戦闘魔術も学年一だ。お前を守る自信もある。」
「はあ?…成績が良いってアピール?」
「違う!…そもそも。俺は勉強が嫌いなんだよ。」
「学年1位取っておいて、嫌味?」
「違う!えっとだな、1位を取ったのは、お前に負けたくなかったからだ。」
「え?」
「お前より優れてないと、守れないだろうが!」
私は絶句する。
「なあ?俺のとこ、嫁に来てくれない?」
自分の顔がみるみる赤くなるのを、感じる。
「えっと、えっと、急に言われても…。」
「俺はずっと、初めて会った時から、お前が好きだったんだ。親父にも、すでにプロポーズの許可を得ている。次期公爵夫人としても問題ないってさ。」
「ちょ、ちょっと待って、次期公爵?あなたが?あれ?次男じゃなかった?」
「俺が次期モントレー公爵だよ。兄貴は確かにいるが、兄貴は魔力が無い。だから、魔力を持つ俺が跡継ぎだ。知らなかった?」
「か、考えたこと、なかったし。」
「俺のこと、嫌い?」
「い、いや、どちらかといえば、好きだけど。」
「なら、問題ないだろ?」
その時、すっと人影が遮った。
「無理強いは良くないな。」
「リュシュー先輩!」
「ライドレー先輩。これは、俺と彼女の問題です。関係ない先輩は、引っ込んでいてください。」
「関係なくは、無いかな?」
「え?」
「僕も、彼女に求婚している。…君より早くね。」
リチャードの顔が険しくなり、リュシュー先輩と正面から向き合う。
「なんだって?」
一触即発の険悪な雰囲気に、慌てて二人の間に割って入る。
「ちょっと待ってください。二人とも。私はお二人のどちらともお付き合いするつもりはありません!」
くるりと2人が、私の正面を向く。
2人とも、恐ろしい笑顔だ。逃げたい。
「おれのことが嫌いか?」
「僕のことが嫌いですか?」
2人の声が重なる。
「いえ、そういうわけでは。でも、友達とか、先輩とかとしか、今は、思えません!」
「今は、ね。」
リチャードが、ふっと笑う。
「卒業までに、お前を落とす!」
あっけにとられた私に、にかっと笑いかけると、
「ライドレー先輩?剣の稽古、つけてもらえませんかあ?」
「いいだろう。」
2人で肩を並べて、風のように行ってしまった。
「な、なんだったの、今の。え、何?私、2人から、申し込みされてるの?」
プロポーズが、学院の成績表張り出し掲示板の前。ムードもへったくれもありません。