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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院3年生
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夏休み:リュシューの訪問



 3年生の前期もあっという間に過ぎていった。


 リュシュー先輩はあいかわらず、日曜日に出かけようと誘ってくれたけど、2人だけの場合は断り続け…。

たまに、エリザベスやジェニファーと一緒の時だけお誘いを受けた。

彼女たち2人と一緒だと、リュシュー先輩は前と同じように、ケンドル先輩、クックレー先輩も連れてきているので、賑やかだ。

そして、そういう時のリュシュリュウ先輩は話をしていて、とても楽しい。


 スナイドレー教授は今も私を無視しまくり、憎々しげに見てきて、時には舌打ちされるけれども、成績については確かに、私情を挟まれいない。

 薬品を調合して提出するときは気を付けないと、また叩き落とされるので、私も慣れてしまい、叩き落とされないように机に置くことを覚えたし。その都度、いまいましげに睨まれるけれど、調合がある時は予習をしっかりして、3年生としておかしくない程度には品質を上げて提出するようにした。

あれから、最低点と言われたことは無い。


 ともあれ、スナイドレー教授が私を嫌っているということは、クラスメートのだれが見ても明確になり…。

私をやっかむ一部のクラスメート、例えば、アンドリュー・ドメスレーなどは、スナイドレー教授と授業中、親しく楽しそうに話しているのを見せつけるようになった。

 それでも、私は懲りず、スナイドレー教授と仲良くなりたくて、何度も教授室に質問に行った。

毎回、最低限教えてくれた後で、剣もほろろに追い出されているけれど。




 前期試験も終わり、夏季休暇前、リュシュー先輩からしつこく別荘へのお誘いを何度か受けたけれど、断った私はまた、ダングレー侯爵家で閉じ込められていた。


 おばあ様は病が癒えたけれども、暑いランズに戻らず、涼しい北方のプケバロス王国まで避暑に行っているそうだ。

プケバロスは我が国と小競り合いをしていると聞いていたけれど、観光に行っても大丈夫なんだろうか。


 ある日、いつものように閉じ込められていた私が、図書室(メイ・パラディース)で本を読んでいた時、屋敷内がざわついていることに気付いた。

何かあったのかもしれないと、自室に戻ったとたん、ドアが乱暴にたたかれ、メイドが入ってくる。


「お客様が玄関でお待ちです。」

「お客様?」

「さっさと行ってください。」


 ダングレー侯爵家へ訪ねてくるような客に心当たりはない。

首をかしげて玄関に向かうと、リュシュー先輩がいた。花束を持って。


「ごきげんよう、ダングレー令嬢。」

「りゅ、リュシュー先輩?なんで?」

「一緒に、出掛けませんか。と、お誘いに来ました。」

 花束を渡される。


「!いえいえ、わたくし、出掛けるなんて、とんでもない!」


 その瞬間、私のそばに控えていた、執事が私を背中の後ろに押しやり、

「ダングレー侯爵夫人も不在ですので、面会はここまでとさせていただきます。」

 一方的に宣言して、先輩を軽く押し出し、玄関の戸を閉めてしまう。

「執事さん、それは、いくら何でも、失礼では…。」

 私をじろりとにらみつけ、執事は言う。

「奥様の命令です。部屋にお戻りください。」


 その夜、夕食を持ってきてくれたメイドから聞き出した話では、もともと、リュシュー先輩に私を会わせるつもりはなかったそうだ。

ただ、リュシュー先輩が、私に危害を加えているのではないか、無事な姿を見るまでは、帰らない、と粘ったらしく、やむなく私を会わせたそうだ。


 それにしても、リュシュー先輩は別荘に行ったのではないのかしら?

その後は、取り継がれることもなく、一人で夏休みを終えた。



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