表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院3年生
39/172

最高品質のポーション3


 薬学魔術は7時限目と8時限目、つまり1日の最後の授業に当たっていた。

今日は講義だけで終わりだと、7時限目が終わるとスナイドレー教授は退室していった。


「8時限目、空きましたわね、ティーサロンでも行きます?」

 エリザベスに声をかけてもらったけれど

「ごめんなさい、ちょっと、スナイドレー教授に用事があって。」

「あら、残念ですわ。では、また夕食の時に。」


 薬学教室の隣にある、スナイドレー教授の執務室のドアをノックする。


「…入れ。」


 承諾されたことを確認して、ドアをあける。


「失礼します。」


 本棚の前で本を片付けていたスナイドレー教授が振り返り、私を見て険しい顔になる。


「あの、先週は申し訳ありませんでした。」

まず、頭を下げて謝った。


「…何のことだ?」

「頭痛薬のポーションで、点数が低いのに納得できず、不満な顔をしてしまいました。それで、あの、作り直してきたので、再度の採点をお願いします。」


 スナイドレー教授があっけにとられたような顔をする。

その一瞬だけ目から憎悪が消えた。

ほんの一瞬で、また、きつい目に戻ってしまったけれど。


私は昨夜作ったポーションを、教授の机にことんと置く。

ちらっとそれを見た教授の目が大きく見開かれ、さっと瓶をひったくるように取った。

光にかざしながら、目を細め、検分している。


「誰に、作ってもらった。」

 低い声が響く。

「え?」

「お前にこれが作れるとは思えない。誰に、作ってもらった。」

「あの、いえ。それ、わたくしが作りました。」


 スナイドレー教授が、くるりと私の正面に向き合う。


「嘘を言うな。これの作り方は教えていない。作れるわけが、ない。」

「参考書を調べて、あと、ライドレー先輩にアドバイスをもらったのです。」


 信じてほしくて、スナイドレー教授の方に一歩、足を踏み出す。


「近づくな!」


 その瞬間、スナイドレー教授から衝撃波が放たれ、私は後ろに吹き飛んでドアに体を打ち付けた。


「ライドレーに作ってもらったものを、お前が作ったと、偽申告か。卑怯者だな。

…出て行け。」


 出て行け、と言われた瞬間、私は教授室から廊下にはじき出されていた。


 本当に、私が作ったのに。

自分の両頬が濡れているのに気付いた。

…くやしい。

誰にも会いたくなくて、ステラ塔に向かって逃げるように走っていった。






「ずいぶんと、濃い蒼だ。頭痛薬の域を、超えている…」

 スナイドレー教授は、ポーションの蓋をポンと抜き、数滴、手に垂らし、舌にのせてみる。


「これは…!」

 頭痛薬どころではない。

軽度の脳の損傷も治癒する高レベルのポーションに仕上がっていた。


「これは、ライドレーには作れない…。まさか、本当に、ソフィア・ダングレーが自分で?」

 スナイドレー教授は軽く頭をたたく。


「…ビジナーズラックか?」

 ポーションの瓶を引き出しへ丁寧にしまいながら、彼はため息をつく。

「退官を未だに許されないのが、辛いな…。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ