最高品質のポーション1
学院の図書館へお昼休みに行き、昨日、図書室で見た参考書があることを確認できた。
そして、放課後、購買部で必要なものを手に入れたのち、自室に戻って頭痛薬のポーションを作り始める。
初めは、22回かき混ぜれば良いのだから、とのんきに考えていたものの、すぐに頭を抱えることになった。
22回かき混ぜただけでは、全く、ポーションにならなかったのだ。
そういえば、授業中、ポーションになるまでかなり長時間かかったので、何百回もかき混ぜたのだと思う。
「えええ、どうやって、22回で、ポーションにするの?」
少なくとも、昨日、調べた参考書にそのやり方は書いていない。他のやり方を図書室で調べても良いのだが、今回はどうせまた、学院の図書館にその参考書があるかを調べないといけない。二度手間になるので、ため息をついて、学院の図書館に移動する。
「ポーションの参考書、ポーション…」
つぶやきながら本棚を凝視しつつ移動していたら、人にぶつかってしまった。
「ごめんなさい!」
「あれ、ソフィア?」
リュシュー先輩だった。
「何か、探し物?」
「はい、頭痛薬のポーションの作り方が載っている参考書が欲しくて…。」
「頭痛薬?簡単でしょう?かき混ぜるだけだもの。」
「あの、22回で作れる方法が知りたくて。」
「22回?」
リュシュー先輩は眉をひそめる。
「ソフィアは3年生だよね?しかも、まだ薬学魔術は始まったばかりだよね?何故、22回で作ろうとしているの?」
「最低点って言われたのが悔しくて、参考書を調べたら、最高品質にするには、22回って書いてあって。でも、やってみたら、22回じゃ作れなくて。」
「なるほど。そういうことか…。」
リュシュー先輩はためいきをつく。
「最高品質のものを作れる人は少ない。馬鹿みたいに魔力を使うから…」
「魔力の問題なんですか?」
「厳密には、時間短縮の魔術を使うんだけど、時間短縮は5年生になってから、かつAクラスの生徒にしか教えてもらえない。なぜなら、Bクラス以下の生徒の魔力では、教えても使えないからね…。」
「時間短縮ですか…。そちらの参考書は…。」
「ソフィ、待って、聞いてなかったの?それは、5年生になってから…」
「魔力があれば、時間短縮できるんでしょう?」
リュシュー先輩はあっけにとられたようだったが、やがて笑い出した。
「そうだね、ソフィは今の魔力でも時間短縮できそうだ。…いいよ、僕が教えてあげる。ポーション、どこで作ってるの?」
「わたくしの寮室だけど…。」
「え?道具をそろえたの?」
「はい。学院の購買部で買ったので、意外とリーズナブルでした。」
「熱心だねえ…。とはいえ、君の寮室にお邪魔するわけにいかないから、ちょっと待ってて。すぐ戻る。」
リュシュー先輩は図書室から出て行き、あまり待たない内に戻ってきた。
「お待たせ。スナイドレー教授に薬学教室使用の許可を取ったから、そこでやろうか。」
薬学教室に移動すると、リュシュー先輩は使い慣れているのだろう、必要な道具を棚から取り出して並べていく。
「さて、時間短縮で、頭痛薬のポーションを作ってみるから、見ていて?」
リュシュー先輩が錬金鍋にポーションの材料の薬品と水を入れ、鍋の中に視点を定め、かき混ぜ棒を浸す。
「時の跳躍!」
その瞬間、リュシュー先輩の全身から光がほとばしったような気がした。
鍋の中が青く光る。その青い光の中をリュシュー先輩がかき混ぜる。
かき混ぜる回数を、ひたすらに数える。
1、2、3…22回。
22回かき混ぜ終わった途端に、カっとまばゆく鍋が光り、光が収まると、鍋の中にポーションができているのが見えた。
少し汗ばんでいるリュシュー先輩が鍋から瓶にポーションを移し替え、私に差し出す。
「ほら。最高品質の、頭痛薬ポーション。」
光にかざしてみると、ポーションの色が違う。
私が作ったポーションは透明だった。
でも、この最高品質のポーションは、うっすらと、青い。
「色が、全然、違う…。」
「そう。ポーションの類は色が濃いほど、品質が良いんだ。見ただけで、わかる。」
「私、恥ずかしい…。」
「え?」
「スナイドレー教授に嫌われているから最低点って言われたんだと思ったのが…。」
「だから、大丈夫って言ったでしょう?厳しいけど、公平な人だよ?」
「ありがとうございます。リュシュー先輩。」
「さてっと、片付けて夕食に行かないと、食いっぱぐれそうだね?」
教室の壁にかかっている時計を見て、さっと顔色を変える。
夕食終了まで、あと30分?
「きゃー、ごめんなさい!」
「大丈夫、大丈夫。気にしないで。」
リュシュー先輩は、器具を洗浄の魔術で一瞬できれいにし、棚にさっさとしまう。
「さ、行こうか。」
「はい。」
リュシュー先輩と一緒に食堂に駆け込んだ。




