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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院3年生
32/172

リュシュー先輩の夢



「今日は、僕のことを知ってほしい、って誘ったよね?

僕は4大侯爵の1つ、ライドレー家の跡取りで、得意な学科は創造魔術と戦闘魔術。専攻は政治学。卒業後は魔術庁長官の直下で勤務したいと考えている。」


「趣味は、読書とチェス。あとは魔力について調べること。僕は魔力を持っていることを誇りに思っている。建国の王ドラコ王を深く尊敬しているから。だから、魔力について調べるのは趣味以上に好きかもしれない。」


「それで。僕の夢だけれど、それはこの国を魔術師の国にすること、なんだ。」

「魔術師の国?すでに、魔術師の国、ですよね?」

「厳密には違う。僕の理想は、ドラコ王の時代と同じように、魔力を持つ者が支配階級に立ち、魔力を持たないものはそれに隷属する国だ。」

「…あの。今、王宮では、多くの魔力を持たない人が働いていますよね?確か、外務大臣も魔力をお持ちではなかったはず?」

「うん。その通り。だけど、それが、僕は嫌なんだ。少なくとも、大臣や長が付くような官職は魔術師がなるべきなんだ。」

「…ごめんなさい。よく、わからないです。なぜ、魔術師でないと、ダメなんですか。」

「魔力を持つ者と、持たない者には、歴然とした差があるから。寿命も違う。やれることも違う。今のこの国は、魔力を持たない者のために社会の仕組みを整えている。だけれど、それを魔力を持つ者のために社会の仕組みを変えたら、一気に在り様が変わる。違う?」


黙り込む。

言わんとしていることは、わからないでも、無い。

魔力が使えることを前提とした社会であるならば、文明の在り方は今とかなり違ってくるだろう。


「でも。わたくしは、今の社会…魔術師とそうでない人達が共に生きている社会、が好きです。」


リュシュー先輩が、小さくため息をつく。


「君を説得するには、理想論だけ、じゃ、ダメみたいだね。…あまり、詳しく話す予定は、無かったんだけれど、僕は君と同じ道を歩きたい。よし、僕が知っていることを、全て、話そう。」



「ところで、ソフィアはすごく博学だけれど、魔力についてどれくらい知っているの?」

いきなり聞かれてとまどう。


「魔力持ちは遺伝しないこととか、学院を卒業しないと魔術師になれないこと、のことでしょうか?」

「うん。そうだね。それが、世間の常識だ。…さて、今日、僕が話すことは一部の人間しか知らない情報だから、誰にも話さないと約束してくれる?」


「え?そんな秘密情報を、私に教えて良いのですか?」

「君なら、構わない。僕は君を信用している。約束を守る人、だと。そして、僕は隠し事をしたまま、君と交際するのは嫌だ。君には、ちゃんと、なぜ僕が魔術師の国を作ろうと思ったか、その理由を知ってほしいんだ。」


渋々、うなずく。


「とはいえ、申し訳ないけれど、他言無用の誓約をしてくれる?信じていないわけではない。でも、本来は君に話すことが許されていない話だから。」

リュシュー先輩がポケットから紙を取り出す。

入学時に誓約したのと同じ、魔紙でできていることが一目でわかった。

誓約内容は、今日、彼から聞いた話を他の人に話さない。というシンプルなもの。

「誓約を破ったら、どうなりますか?」

「これは破りようが無いかな?話そうとしたら、喉が詰まって声が出なくなる感じ?あと、期限があるよ。1年限定。もちろん、1年経っても、秘密にしておいてほしいけれど、そこは君を信用している。あと、それは文字に書くこともできないから。文字に書くと、燃えちゃうので、気を付けて。」


魔力について、もっと知りたい。

好奇心に負けた。それに、1年間の他言無用の誓約なら、特に問題ない。

誓約書にサインする。

その誓約書をポケットにしまってから、リュシュー先輩があらためて話を始めた。


次回、ランドール国の魔力についての真実が語られます。デート中の話題じゃないですが。リュシュー先輩は、真面目で不器用なのです。

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