新学期の始まり
3年生になった。14歳。
1年、2年は、夢中で駆け抜けた。
全ての科目が必須で詰め込み授業だったから、勉強以外に何かをする余裕がなかったけれど、何もかもが楽しかった。
今日は1月1日。
授業が始まるのは10日からなので、まだ他の生徒はあまり学院に戻ってきていない。
私は入学してから4回の長期休暇時、侯爵家に帰ったけれど、おばあ様には一度も会わなかった。療養が長引いていて、ベッキーもおばあ様へ付き添うため不在だったから、執事がしぶしぶ屋敷に入れてくれていた。
侯爵家では学院へ戻れる日が来ると早朝に追い出してくれるし、私も早く帰りたいので、たぶん、一番乗りで学院に戻っていると思う。
クラスは3年連続、Aクラス。良かった。
今回の成績は2位。1位はリチャードだ。悔しい。
実はこの2年間、1位をリチャードと争っている。前回は、私が1位だったのに。
リチャードは戦闘魔術バカだと思ったけれど、それは最初だけで、他の科目も優秀だった。おかげで、ペーパーテストで差を付けられると思ったのに、その差は埋まらず。
戦闘魔術で勝てないのが、絶対、2位の原因だ。
戦闘魔術といえば、結局、レイピアが一番自分に合っていて、レイピアだったら、同学年が相手の場合、リチャード以外であれば、負けなくなった。
ちなみに、戦闘魔術はクラス分けが無く、学年全員が一度に集まって授業を受ける。
組む相手は実力が近い生徒が多いけれど、各自、使う武器がバラバラになってきたので、どの武器にも対応できるように、グレー教授が毎回、組む相手を変えてくる。
今のところ、学年一と称される膨大な魔力と身の軽さが幸いして、どの武器を使われても、苦手意識はあまりないけれど、リチャードが相手だと、彼の武器が何であれ、絶対に勝てない。
リチャードは、どの武器も苦手意識がないようで、毎回、違う武器で私に対峙してくれているけれど、私はレイピア一つ。戦い方が単純で読み切られているのかもしれない。
毎年、戦闘魔術の試験で優勝しているリュシュー先輩からも、アドバイスをいくつかもらい、戦い方を工夫してみたけれど、未だに一度も勝てたことが無い。
そのリュシュー先輩は、今年、最上級の6年生。
彼もずっとAクラス、成績1位をキープしている。
あいかわらず、時々、日曜日に、2人きりで出かけないか、とお誘いを受けているけれど、ちょっと怖いので、エリザベス達と一緒に出掛ける時以外は理由をつけてお断りしている。
ジェニファーからは、リュシュー先輩は私のことが好きに違いない。つきあっちゃえば?と言われているけど。
そういうジェニファーは、昨年、ケンドル先輩に告白されてお付き合いを始めた。
建国祭の日に、ジェニファーの家へケンドル先輩を招いて家族に紹介して、一緒に食事をすると、彼女は休み前にうれしそうに話していた。
エリザベスはあいかわらず私と同じAクラスだけど、ジェニファーは2年生からBクラスに落ちてしまった。
魔術の教科も一緒に受ける授業がぐっと減って、平日は会う機会が少ない。
ジェニファー自身は、意外と成績を気にしていなくて、むしろ、Bクラスの方が大勢居て、楽しいと学生生活を謳歌しているようだ。
平日に3人が集まる機会は減ったけれど、エリザベスとジェニファー、私は相変わらず仲良しで、日曜日になればよく一緒に街に出かけて、ウィンドウショッピングをしながら、おしゃべりを楽しんでいる。
3年生になりました。授業以外の話が、ここから増えていきます。