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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院5年生
166/172

マジェントレーの逃亡



 私はフィロスの領地の屋敷に戻ってきた。


戦争は国境付近でのみ行われ、国土に侵略されなかったから、風景は全く変わっていなかった。

フィデリウス、マーシアとお互いの無事と健康を喜びあう。


ただ、フィロスからの連絡はまだ無いという。戦後処理で多忙なのだろう。


「せめて今何してるのか、いつ頃帰れるのかって、連絡くだされば良いのにね。」


ついつい、マーシアに愚痴ってしまうけれど、そのたび、左耳のピアスにそっと触れて、無事なのだから。それだけで。と言い聞かせる。




 屋敷に戻って1週間、明日は建国祭という日、魔術師師団から5人の魔術師騎士が屋敷を訪問してきた。


「魔術師師団長の命令でソフィア様をお守りさせていただくために、参りました。詳細は、これに。」


差し出される封筒には魔術師師団長の使う封蝋、蛇の絡みつく剣が刻印されている。


「何ですって?マジェントレー公爵が、行方不明?わたくしも狙われる可能性が大きい?」


魔術師師団長の手紙には、

プケバロス王が持参した、マジェントレー公爵とやり取りをした手紙を確認したところ、今回の戦争を目論んだのは、マジェントレー公爵と明らかになったこと。

彼を逮捕するため、公爵家に突入したが、公爵がいつの間にか姿を消していたこと。

そして、その捜索に、フィロスが指揮を取っていること。

マジェントレー公爵は学院の後方支援に私が大きく貢献していることを知り、怒っていたこと。

そのため、貴殿の生命に多大な危険を憂慮する。

といった内容が書かれていた。


「本日、公爵を逮捕するため、踏み込みましたが、もぬけの空でした。もしかしたら、この近くに来ているやもしれません。どうか、屋敷の中から出ないでください。我らが外からお守りします。」


5人の魔術師騎士が、私の前にひざまずく。


「私達は、戦場であなた様が作ってくださったポーションと守りの魔術具で、何度も命を救われました。今度は、私達があなた様を守る番です。」


私は首を振る。

「立ってくださいませ。わたくしはこのランドールの魔術師として、当然のことをしたまで、です。この国を命をかけて守られる騎士様達の支援をするのは当たり前のことです。それに、わたくし独りでは支援を続けることはできませんでした。魔術学院の皆さんが、全校あげて支援してくださったのです。感謝は彼らにお願いします。」

「もちろん、それも伺っています。それでも、私達は宰相から聞いています。ポーションも、魔導具も、まず、あなた様が動いてくださったことを。」


それでも、私は派遣されてきた魔術師騎士に守られることに躊躇した。


マジェントレー公爵は、なんだかんだ言っても魔術庁長官だ。

この国トップの魔力を誇る。

年齢もハッカレー学院長と同年代と聞くから、400歳位なのだろう。

経験も智恵も、私達にはとうてい敵わない。

彼らの命、せっかく戦場から帰ってきたその命を、私のために散らすわけにはいかない。

彼らに帰ってほしいと、懇願した。


「この屋敷には、わたくしと当主以外、絶対に入れない部屋があります。わたくしは、スナイドレー公爵が戻るまで、その部屋に閉じこもると、お約束します。ですから、皆さんは魔術師師団にお帰りいただき、他の騎士様達とマジェントレー公爵の捜索に加わってくださいませ。」


彼らは最初、渋っていたけれど、その部屋のことは、スナイドレー公爵もよく知っている、疑うなら、彼にも聞いてほしいと説得し、彼らは渋々、ではもう一度上と相談します。


彼らを見送ってすぐ、私は急ぎ、執事のフィデリウスを呼び、召使い全員と首都ランズの屋敷に避難するよう、命じる。

彼らには身を護るほどの魔力はない。

もし、マジェントレー公爵が攻めてきたら、彼らの命の保証はできないし、足手まといだ。申し訳ないけど。


「ソフィア様を置いて行くわけには…。」

と、渋られたけれど、

「わたくしの命令はスナイドレー公爵の命令と心得よ、と言われていませんか?」

という鶴の一声で、

「くれぐれも、ご無事で。」

と、全員、屋敷から避難していってくれた。



今日の夜、また投稿します。

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