戦争終結
学院内に、歓喜の声が響き渡る。
我がランドール国が戦争に勝った!しかも、大勝利だという。
普段、落ち着いているオバレー副学院長が珍しく興奮し、うわずった声で全生徒に知らせてくれた。
「あなた方の後方支援で、我が国は大勝利しました。国王陛下も、魔術師師団長も、各軍の将軍達からも、感謝が届いています。あなた方全員に、わたくしからも感謝と、敬意を。あなた方ほどすばらしい学生は今までいませんでした。」
生徒達みんなで、抱き合い、飛び上がり、喜びを爆発させる。
「さあ、皆さん、戦争が終わったので、サピエンツィアの封鎖も解除されました。
今日は12月16日。ちょうど、建国祭のシーズンの始まり、冬休みの始まりです。
1日遅れましたが、皆さんは明日から冬休みになります。家族の皆さんと楽しい建国祭を過ごしてください。」
拍手が、講堂を覆い尽くす。
誰かが校歌を歌い始め、歌声が広がっていく。
私も隣にいるエリザベスやジェニファー、リチャード、ミレー、ライザ達と、声を合わせて、歌う。
我らの誇り たぐいなき力
我らは学ぶ 力の制御
我らは望む 楽園の創造
我らは捧ぐ
力与えし神に 感謝と忠誠を
ランドール ランドール
魔力の満ちる国
歌いながら、胸がいっぱいになる。
私達はこの学院の生徒として、この歌の通り、ふるまえたのだと。
私達みんなが研鑽した魔術を使って、楽園、この場合、平和、をつかみ取ったのだと。
わあっと、皆が抱き合い、握手し。
教授も上級生も下級生も、この時はその垣根はなく、魔術師同士の連帯感を強く感じたのだった。
エリザベスが崩れ落ちて泣いている。緊張の糸が切れたのだろう。ジェニファーと一緒に、私もエリザベスを抱きしめて、労わる。
隣で、リチャードとミレーが握手して、お互いの背中をたたき合っている。
ライザも女生徒と笑い合っていたけれど、私と目が合うと一瞬、何かを言いかけて、プイッと横を向く。ふふ。彼女らしい。
約2ヵ月続いた戦争が、本当に終わったのだ。
左耳のピアスに、そっと、触れる。
ひんやりした、ダイヤモンドの硬い感触。
砕けることなく、戦争は、終わった。
フィロス、もうすぐ、あなたに、会えますね?