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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院5年生
164/172

マジェントレーの誤算

あと9話。明日の夜で完結させます。



「何故だっ!何故、たったの1日で、ライドレーの軍が、敗走するっ!?」

マジェントレー公爵は、その知らせを持ってきた従僕を怒鳴りつける。


ライドレー侯爵、死亡。

その周りの魔術師も全員死亡。

ライドレー侯爵がが蜂起させた軍は瓦解し、兵士たちは自領に逃げていった。


これで、反乱軍は全て、制圧された。

もはや、国内には、国王の憂いはなく、プケバロスとの戦いに全力をぶつけることができる。


そして、プケバロスとの戦いはすでに終わりが見えていた。

我が国ランドールの大勝利である。


魔術師団の騎士は一人も欠けることなく。

潤沢な治癒用のポーションが即死でなければ、命をつなぎ止めたからだ。

これほどたくさんのポーションが戦場にあったのは恐らく、初めてだろう。


一般の兵士の死亡も、20万人中2万人ほど。予想外に少ない。

これもまた、「栄養補完バー」をはじめとする、薬膳菓子が大量に配られ、士気が高かったためだ。


対するプケバロスは、30万人が押し寄せたにも関わらず、半数以上が死亡していると伝え聞く。魔術師を30人貸し出したけれど、彼らもすべて死亡している模様だ。


魔術師団騎士の攻撃は1人でも、一般の兵士相手なら数千人を死傷させる。

だから、まず、魔術師団を潰すようにプケバロスは攻撃をしてきたはずだが、守りの魔術具がそれらの攻撃をかなりの割合で無効化した。

それに背中を押された魔術師団は、本来、後方から攻撃支援するのが定例なのに、今回は、前線に出て戦った。

前線に出れば、魔術攻撃の威力は、正確かつ高くなる。

的になりやすくもなるが、その魔術師を一般の兵士たちが守りきった。

魔術師達が攻撃に専念できるように。

戦い方が今までと全く変わったのだ。

それも、治癒用ポーションと守りの魔術具がふんだんにあったから。

そして、一般兵士が薬膳菓子により自分達も大事に思ってくれたことに感謝し、士気が一気に上がっていたから。


治癒用ポーションといい、薬膳菓子といい、これらは本来、長期保管ができない。

だから、戦場に毎日のように届く、今の状態自体がおかしいのだ。有り得ないのだ。


 マジェントレー公爵は、頭を抱えて、呻く。

なぜ、思い通りにいかなかったのか。

そして、本来、戦争を引き起こした最大の目的、国王一家の暗殺も、もはや、絶望的だ。

何のために、戦争を引き起こしたのか。





「公爵!大変でございます!」

マジェントレー公爵に古くから仕える執事が、部屋に駆け込んできた。

「ハッカレー公爵ですっ!」


「久しぶりだのう、マジェントレー。」

執事の後ろから、のんびりした声が響く。

「学院長か。我が家に、何用かな?」

「何、戦だというのに、前面に立って魔術師達を統率しない引き籠もり魔術師庁長官殿に、報告に来たまでよ。」

「報告だと?」

「その通り。我がランドールはプケバロスに勝利した。つい先ほど、プケバロスから降伏の書状が届いたのよ。」


マジェントレー公爵は背中に冷たい汗が噴き出すのを感じつつも、笑顔を張り付けて、答える。

「おお、我が国の勝利か。それは、重畳。」


「のう、マジェントレー。プケバロスからのう、この戦争は、そなたに頼まれて起こした、と言ってきておるのよ。その証拠を、プケバロス王が講和会議に来るとき、持参してくるそうじゃ。もし、それが真実なら、我がランドール国王は敗戦の賠償金を少し下げるとプケバロス王に伝えたしの。」


顔色を悪くしているマジェントレー公爵をじろりと睨めつけながら、穏やかな声で、ハッカレー学院長が言う。


「まさかのう、我が国の魔術師達のトップである魔術師庁長官殿が敵国と通じているとは、わしは信じておらぬのじゃが、マジェントレー、どうなのじゃ?」


マジェントレー公爵は、カラカラと、から笑いをした。

「わしがそんなことをする価値が、あるのかね?」

「さて、わしは知らぬ。…プケバロス王との講和会議は1週間後。それまで、この屋敷で謹慎せよ。と、国王の命令じゃ。…そうそう、逃げ出せぬよう、外に出られる全ての扉の前には兵士をおかせてもらう。魔術封じの札も貼らせてもらうよ。馬車や馬などの移動用の乗り物もいったん王家で預かるそうだ。逃げようとは、思うなよ?」


では、1週間後に。と、出て行くハッカレー学院長の背中を、マジェントレー公爵は憎しみをこめて、睨みつける。




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