昼休みに
私は誓約書にさっそく、サインしようとした。
「あら?誓約書、読まなくてよろしいのですか?」
エリザベスが心配そうに声をかけてくる。
くすっと笑った。
「わたくしは、魔術師になるためにここに来たのですから。守らねばならないことが何かは後でゆっくり読みますわ。」
エリザベスとジェニファーは、はっとしたように、顔を見合わせる。
「そう、そうでしたわね。」
エリザベスもニコッと笑った。
「すでに、誓約してましたわね。炎の門をくぐるときに。」
ジェニファーも笑う。
3人で仲良く、ペンでサインする。
「サインも終わったし。食堂に行きましょうか。少し早いけど。」
「賛成!」
食堂で、エリザベスが不思議そうに話しだした。
「このクラスは貴族率が高いですわね。貴族からこれだけ魔力持ちが出るとは、今年は珍しい年なのかしら。」
誰が貴族かわからなかったので、
「リズは知り合いが多かったの?」
と聞いたところ、あきれたように、ジェニファーが口をはさむ。
「私は貴族の知りあい、ほとんどいないけど、貴族が多いことはわかったわ。
ソフィアさんはわからなかったの?」
「ごめんなさい。わからなかった…。」
「意外と、ソフィは世間を知らないようですわね?」
「貴族は姓の最後が『レー』で終わるのですわ。ダングレー、アークレー、ライドレー。」
あっと、驚いた。そういえば、そうだ。
「ご存じなかったのですねえ。クラスで自己紹介されているとき、あっちもこっちも、なんとかレー、ばっかりだったので、私、ちょっと入るクラス間違えたのかと思っていたのよ。」
と、ジェニファーが嘆く。
3/4くらいが貴族だったような気がする、とのこと。
私は全く気付いてなかった。なんとかレーが多かった気はするが、みんなの顔を覚えようと、焦っていたから。
「まあ、同じ魔術師を目指す同志、この学院は身分が関係ないので、気にすることはなくってよ。」
エリザベスがジェニファーをなぐさめている。
「ありがとう。エリザベスさん。」
「リズでいいわよ?」
「あ、私も、ソフィって呼んで?」
「わあ、二人ともありがとう。じゃ、私のことは、ジェニで!」
リズとジェニと一緒に食べる昼食は、本当においしかった。