誘拐3
彼女の制服のボタンを1個1個外すのが面倒で、制服の上着の裾を持ってボタンごと、強引に服をはぎ取る。
白い首筋があらわになり、胸のふくらみが覆われているシュミーズが見える。
リュシュリュウはごくっとつばを飲み込み、シュミーズを引き下ろそうと手を伸ばす。
「その手を放し、両手を上げろ。」
首筋に、冷たいものが当てられ、皮膚が切れる感触。
剣が突き付けられている。
リュシュリュウはソフィアの身体から手を放し、両手をあげ、ゆっくり、振り返る。
その時、微かに、刃が食い込むのを感じたけれど。
「スナイドレー教授…。なぜ、ここが?」
リュシュリュウの顔が驚愕に染まる。
いくらなんでも、早すぎる。
彼女が図書室で倒れてから、30分も経っていないはずだ。
「ぐっ!」
リュシュリュウは、彼の手刀で意識を刈り取られた。
「偉い、偉い。よく殺すのを我慢したな。」
後ろから、パチパチパチ、と拍手の音がする。
振り返り、その視線だけで人を殺せるだろうという目で、にこにこしている学院長をフィロスは睨みつける。
「殺すな、傷つけるな、という貴様の命令がなければ、ソフィアに触れた、両手を切断したものを。」
ぎりっと、歯を食いしばる。
「まあまあ、気持ちは、ようわかるが。リュシュリュウは8家の者。勝手にこちらで傷つけたら、後々厄介なのは、そなたもわかるじゃろ?…それに、魔法庁長官マジェントレー公爵のことをよく知ってそうだし?」
「すべて終わったら、殺させろ。」
「まあまあ。それより。さっさと、ソフィアを連れ出してくれんかね?配下の者に、ライドレーを運び出させたい。その恰好を他の者に見せたくなかろう?」
いまいましげに、フィロスは舌打ちをしソフィアを自分のマントでくるんで抱き上げる。
「明日、ソフィアは休みだ。私もな。」
「うまく、オバレー副学院長に言っておくよ。」
フィロスがソフィアを連れ出すと同時に、学院長の配下の者たちが部屋に入ってきて、リュシュリュウを運び出していく。
「やれやれ。ライドレーも若いのお。今の時期、こんな事件を起こすとは。おかげで、こちらは助かったが。とりあえず、誘拐および婦女暴行未遂でぶちこめるからな。さて、奴らのたくらみを、どれくらい、ライドレーは知っているやら。」
普段、まわりに見せている人の良さそうな笑顔が消え、冷たい厳しい顔にがらりと学院長の顔が変わる。
「マジェントレー。蟻の穴から堤も崩れる…。ようも、中立であるべき学生を巻き込んだな。覚悟しておけ。」