ソフィア暗殺命令
「スナイドレー公爵が領地の屋敷に引っ込んで出てこないそうだな?」
「はい、閣下。」
「理由は?病気か、怪我か?それとも、何か、企んでいるのか?」
「噂ですが…婚約者の具合が悪いらしく、それに、つきっきりで世話をしているとか。」
「まさか。ありえませんよ、ねえ、閣下。あの冷酷なスナイドレー公爵ですよ。婚約者にうつつを抜かすわけ、ないじゃないですか。」
「まて。婚約者の名前は?」
「ソフィア・ダングレー侯爵令嬢です。」
「ダングレー…。」
「閣下?」
「ありえる、かも、しれぬ。」
「閣下?」
「君らは知らないだろうが、スナイドレー公爵は若いころ、異常に執着していた許婚がいた。かの有名な平民と駆け落ちしたリディアナ・ダングレーだ。」
「なっ!」
「君らが知らないのは無理もない。当時のスナイドレー公爵が恥をかかされたと、緘口令を敷いておったし、そもそも、この婚約自体が公表されていなかったからな。」
「では…?」
「リディアナの代わりに、娘を手に入れたのだろう。としたら、その娘に執着したとしても不思議ではない。」
「閣下…。」
「スナイドレー公爵には何度も暗殺者を向けているが、ことごとく、失敗している。」
「申し訳、ありません。」
「良い。やつの実力は魔術師団長と同等か、それ以上だからな。よほどのことが無い限り、成功しないだろう。だが…。やつに弱点ができた。」
「ソフィア・ダングレー侯爵令嬢。」
「そうだ。今後、やつだけでなく、令嬢も狙え。…殺せ。」
「お待ちください。閣下。」
「リュシュリュウ、か。なんだ。」
「殺すのは、お許しを。…彼女は、わたくしの妻に迎えとうございます。」
「そういえば、そなた、学生時代から、彼女に固執しておったな。…ふぅむ。だが、彼女を振り向かせる自信があるのかね?」
リシュリュウ・ライドレーは唇を噛む。
「自信がなさそうだね。…とはいえ、私は、君にも幸せになってもらいたい。彼女を攫って強制的に君の妻にしてしまえば、良いね?最初は軟禁せねばなるまいが、君が誠意を尽くせば、彼女の心も変わっていくだろう。彼女はまだ若いからね。」
「閣下、ありがとうございます。」
「ふむ。では、ソフィア・ダングレー令嬢を誰かに攫わせよう。リュシュリュウ、君が動いても良い。ただし、リュシュリュウ。状況によっては、彼女を殺す。その時は諦めてもらえるかな?」
「はい。閣下の寛大なお心に、感謝します。」