屋敷への襲撃3
「恨まれる覚えはないのですけれど。」
ぶすっとして、フィロスの書斎で、お茶を飲む。
襲撃者について魔術師団の正式な調査が終わるまで、外出はもちろん庭に出ることさえ、禁止されたので、不機嫌だ。
「直接、私を襲撃しても返り討ちされているからな。…私の弱点が君だと相手に知られたのだろう。」
フィロスが苦しそうな顔になる。
「この屋敷は上空からの攻撃魔術は防ぐが、人は弾かない。人も弾くように結界を強化しないとだめか?」
「人を弾いたら、屋敷の皆さんが出入りできなくなっちゃうじゃないの。」
「うっ。では、どうするか。君を守るためには…。」
考え込みだしたフィロスの手を軽く叩いて気を引く。
「大丈夫。フィロス。わたくしはあなたを信じているから。万一、あなたがいない時に、わたくしが敵わない敵が屋敷に入ってきたら、フローラ様の部屋に隠れるわ?隠れていれば、あなたが助けに来てくれるでしょう?」
「それは、そうだが…。」
「それに、わたくし、強いのよ?この国で最高の剣士になるだろうリチャード・モントレーとずっと、早朝訓練してきたのだから。意外と鍛えていてよ?」
「そんなことまでやっていたのか…。」
あきれたように、フィロスが見つめる。
「男性と2人きりになるな。と頼んだのに?」
「2人きりじゃないわ。グレー教授と、熊さんが一緒にいたもの。」
「熊さん?」
「うふふ。内緒…と言いたいけれど。闘技場の物入れの中に入っている、おっきなぬいぐるみよ。オートターゲットの機能を付けたの。」
どのような訓練をしていたのか、説明する。
「君は、私の考える範疇を、軽々と超えていくんだな…。」
盛大にため息をつかれてしまった。
数日後、魔術師団から、正式な調査資料が届いたけれど、フィロスが聞き出した内容以外には特に新しい情報は無く。
彼らは罪を犯した魔術師が収監される牢獄に早くも送られたと聞いた。
この牢獄では、魔石に魔力を強制的に籠めさせられるらしい。
毎日、魔力切れ寸前まで籠めさせるので、脱獄や看視達への攻撃をする余裕がなくなるそうだ。
「首謀者がわからない。私がらみか、それとも、君が何らかの理由で邪魔なのか。今後また襲撃があるかもしれない。頼むから、1人で外出は控えてくれ。」
フィロスは自分が調べに行きたいだろう。
でも、じっと我慢している。私を本当の意味で守るために。
だから、素直にうなずいた。