屋敷への襲撃2
3人を束縛したあとで飛び出してきた執事のフィデリウスが、下男達に銘じて屋敷の地下にあるという地下牢に3人を連行していってくれた。
縛り上げたまま、転がしておくという。
なぜ、地下牢があるのかわからないけれど、2000年前からある屋敷だ。
その頃は、内戦がひどかったし、敵兵でも入れていたんだろう。
「魔術師なので、普通の縄では逃げられますし…。お嬢様の魔術でできたあの縄、どれくらい、持ちますか?」
困ったように、フィデリウスが聞いてくる。
「わたくしより魔力が強ければ、簡単にちぎれるでしょうけれど…。フィロスが帰ってくるまで、わたくしが見張っている方が良さそうですね…。」
ありがたいことに、あまり待たずに、フィロスが帰宅した。
「ソフィア!」
青い顔をして地下牢に飛び込んできたフィロスを見て、ようやく、緊張を解く。
「フィロス!」
「怪我は?」
「まったくないわ。…彼ら、何者?あなたと間違えて、襲撃してきたのかしら?」
フィロスが牢の中に入り、彼らの顔からスカーフをはぎ取って検めていく。
「初めて見る顔ばかりだな。」
「彼ら、どうするの?」
「魔術師団に送る。」
フィロスが3人に眠りの魔術を掛け、念のため、目を離すな、とフィデリウスに命じてから、私を連れて書斎に戻る。
「ウルラ」
フクロウが、フィロスの腕に止まる。
「魔術師団長。スナイドレーだ。襲撃者を3人捕縛。至急、受け取りに来てくれ。」
フクロウに話しかけると腕をぶん、と振る。
フクロウが窓の外に飛んで行った。
5年前、グレー教授が魔術封じの札を監察院へ送った時と同じやり方だ。あの時はカラスだったけれど。
「うわあ。使い魔ですか?」
「ああ。伝達手段として、使っている。」
「わたくしも、欲しいです!」
「無理だ。」
「どうして?」
「使い魔は国が管理している。必要な場合は、魔術庁に理由を添えて申請する。主に、魔術師団と地方の魔術庁の役人が利用している。個人的な利用は認められていない。」
「うう。残念ですわ。使い魔がいれば、フィロスと離れていても、伝達手段ができますのに。」
数時間しないうちに、魔術師団から6人の騎士が派遣されてきて、襲撃者をどこかに連れて行った。
その前に、フィロスが自白の薬を飲ませてある程度の情報を引き出していたけれど。
襲撃者が狙ったのは、フィロスではなかった。私、だった。
なぜ狙われたのかは、わからない。
彼らはどこにも所属せず、普段は用心棒みたいな仕事をしていて、今回、私を攫うか殺したら、1000万ドールもらえることになっていたそうだ。
依頼者とは直接会っていない。手紙で私の居場所や容姿を知らせてきたというけれど、その手紙は読み終わると同時に燃え尽き、残っていないそうだ。
彼らはまだ学生のしかも女性1人が相手の仕事なので、こんな簡単な仕事と油断していたようだ。それが、私には幸いした。