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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院5年生
142/172

5年生の夏休み



 夏休みに入り、また、フィロスの領地の屋敷に帰ってきた。

フィロスも、3日後には帰るという。

しかも、今年の夏休みはどこにも行かない、と言う。


 隣国プケバロスとの睨み合いは続いているけれど、小康状態を保っている。

本来、フィロスは国内でプケバロスを煽っている一派の調査をするはずだったけれど、例の赤いピアスの魔術具の情報をぎりぎりまで伏せるため、調査を別の人に任せたそうだ。


「いざ、戦争になったら、出る。」

とのことだけれど、その時の切り札にすると、学院長と取り決めたそうだ。


学院長は魔術師庁長官と並んで偉いと聞いていたけれど、まさか、そういった諜報活動でも暗躍していると思ってもいなかったので、びっくりだ。


私が守りの魔道具を渡してから、フィロスは私に隠し事をしなくなった。

自分から進んで話をしてくれるわけではないけれど、自分がどのような仕事をしているのか、どんな危険があるのか、聞けば、少しずつ答えてくれる。


隣国プケバロスを巻き込んで現王家の転覆を謀ろうとしている者達がいること。

首謀者は魔術庁長官マジェントレー公爵。ただし、証拠が無いので、その証拠をつかむために、フィロスは動いていたこと。など。


向こうも、フィロスが動いていることを知っているので、暗殺者、襲撃者をよく送り込んできていた。今までの怪我はすべて、彼らを相手にしてのもの。


既に学院を卒業したリュシュリュウ・ライドレー先輩もマジェントレー公爵の下に居る。

リュシュリュウ先輩が在学中に彼の動きを見張って、マジェントレー公爵にたどり着いた、とフィロスが苦笑いをする。

「学生を引き込むのは、リスクが大きい。それを知らぬはずはないのだが。」



ちゃんと話をしてくれるおかげで、ずいぶん、気持ちが楽になった。

心配なことは心配だけれど、私がやれることはもう少ない。

でも、フィロスを信じて待てる余裕ができたので、後方支援をしながら待とうと思っている。


 さて、夏休みはまた少し、薬の材料を用意しないといけないな。


 夏休み前、フィロスに頼んで、屋敷の中に私も使える調薬室を作ってもらった。

帰宅して、マーシアに案内されたその部屋はとても明るくて広かった。

フィロスも一緒に使うことを想定して、錬金鍋や器具などがそれぞれ複数、用意されていたし、二人そろって一息つけるように、ソファとテーブルのセットもある。


「お嬢様を一人で籠らせるわけにはいかない。そうですよ。」

くすくす笑いながら、マーシアが教えてくれる。


奥の壁は一面、備え付けの薬品棚となっており、貴重な材料がどの抽斗にもぎっしり詰まっていた。

薬学魔術の権威者のプライドと、公爵家の財力を見せつけるかのようだ。


「すぐにお使いになっていいのですよ。ここは、お嬢様のための部屋なのですから。」

と、マーシアにも言われたけれど、私には分不相応なほど立派な調薬室だった。

本当はすぐにでも使ってみたかったけれど、見たことのない器具もあったので、フィロスに教えてもらってから、使おう。


 フィロスが帰るまでの数日、グレイスと話をしたり、屋敷の図書室で古代の魔術陣を調べたりして過ごした。

クリスタルネックスレスを使って行く私の図書室(メイ・パラディース)の方が、古代の情報は充実しているのだけれど、死にかけて戻ってきた私に、屋敷の皆が神経質になっていて、いつも、必ず、誰かしらの視線を感じたため、行けなかった。


「もう、どこにも行かないのに。」

ぷぅっとふくれて、マーシアにこぼしたけれど、

「フィロス様からも絶対に目を離さないよう、厳命されております。それに。わたくし共も二度とあのような光景は見たくありません。」

と、ひんやりした声で返されたので、この屋敷の全員に耐えがたい思いをさせてしまったことを再び、認識させられただけだった。


後悔はしていないけれど…。

これが逆の立場だったら、私も彼の命の方が大事だ、と怒ると思うから、何も言えない。

 当分、おとなしくしているしか、ない。



残り、5万文字ほどになりました!もう少し、おつきあいのほど、お願いいたします。

また、完結後は、短編もいくつか、用意しています。

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