いじめの理由
「報告いたしますわ。学院長。ソフィア・ダングレーを魔術を使い、突き落としたのは、彼女と同じAクラスのライザ・サレーだと判明しました。」
「ご苦労様、オバレー副学院長。しかし、なぜ、サレーはソフィアを突き落としたのかね?」
「嫉妬…だそうですわ。」
「嫉妬?」
「ライザ・サレーは同じクラスの、アンドリュー・ドメスレーと婚約の話が持ち上がっているそうです。そのドメスレーが、ソフィア・ダングレーを心配そうに見守っているのが、気に入らなかったのだそうですわ。」
「なんとまあ。ドメスレーはソフィアを嫌っていると思っていたが!」
オバレー副学院長は肩をすくめた。
「ソフィアを突き落としたのは、ライザ・サレー、で、間違いないのか。」
低い声で、フィロスが、確認する。
「その通りですけど、スナイドレー教授?…まさか、サレーに何かしようとはしていないでしょうね?」
「ソフィアを怪我させたのだ。その報復があって、しかるべきだろう。」
「何を言ってるのですか。教師が生徒に報復なぞ、許されませんよ!?」
「まあまあ、2人とも、落ち着きなさい。フィロス。サレーには、オバレー副学院長から、学院の規則に準じた罰があるだろう。そなたの手出しは許さぬぞ。」
「しかし、学院長、」
「言うことを聞かぬなら、ソフィアがまた怪我しても、治療しないぞ?」
ぐっと、フィロスは詰まる。
「…ということで、オバレー副学院長、サレーの懲罰は、あなたにお任せする。」
「承知しました。ダングレーの怪我が治り、授業の復帰するまで何日かかります?2日?では、3日間の停学とその間、反省室に入ってもらいます。」
ライザ・サレーは大人しく懲罰を受ける、と言った。
彼女は驚かせたかっただけで、こんな大事になるとは思っていなかった、と泣いていた。
突き落としても、ダングレーほどの魔術師なら何らかの魔術で怪我一つしないという自信があったのだ。
計算外だったのは、彼女が思ったよりも身体の具合が悪かったことと、何より最悪なことに血が止まらなくなっていた、ということだった。
「薬の、副作用?」
「そうです。出血が止まらなくなる副作用だそうです。どんな小さな傷でも治療が間に合わなかったら、死ぬところでした。」
彼女はオバレー副学院長から、あわや、人殺しになってしまうところだったと説明を受け、顔色がますます悪くなる。
「とはいえ、普通の生徒に対してだとしても、階段から人を突き落とすことは悪質です。」
「申し訳ございませんでした。」
「謝罪は反省室から出た後で、ソフィア・ダングレーに。」
「はい。」