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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院1年生
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1年生のオリエンテーション1



 入学式の翌日、オリエンテーションのため学院に到着したら校舎の大ホールでエリザベスとばったり出会った。

「ごきげんよう、ソフィ。顔色があまりよくないですわね?」

「ごきげんよう、リズ。昨夜少し眠れなくて。」

「あら、どうされました?」

落第したらどうしようと悩んだなんて恥ずかしくて言えない。しかたなく、

「ステラって、どんな属性なんだろうって考えてたら、眠れなくて。」

うん。これも嘘ではないし。

「ああ、そうでしたわね。わたくしも気になりますけど、それほど属性は気にされなくても良いと思いますわ?要は、魔力量とその魔力を使いこなす力が必要なのですもの。」

また落ち込む。

魔力量…。少ないんだ、きっと、私。


 入り口近くのホールに掲示板があり、みんながざわざわしている。

「あ、クラス分けの紙が貼られているそうですわよね。どのクラスか見に行きましょう。」

「クラス分け?」

「あら、昨日、聞いていらっしゃらなかったの?新入生は、前期だけはアトランダムにクラス分けされるそうですよ。後期から成績順に分かれると。」

聞き逃してしまったらしい。

たぶん、スナイドレー教授に気を取られているときに説明があったんだろう。


「あ!ソフィアさん!私と同じクラスよ!」

掲示板に近づいていったら、先に到着していたジェニファーが手を大きく振りながら走り寄ってきて、教えてくれる。

「あ、おはよう。エリザベスさん。あなたも同じクラスだったわ。」

「ごきげんよう、ジェニファーさん。そうですの。うれしいですわ。」


その後、各クラスごとに新入生は集められて教室に案内される。


「席順は自由だから、好きなところに座って!」

恰幅の良い、茶髪緑目の40代くらいの教授が、教卓から指示する。


「みんな座ったね。自己紹介から行こうか。私はこのクラスの担任で、サンダリオン・ベリル。数学を教える。さて、前列左側から順にみんな、名前を言っていこう。半年間のクラスメートだ。」


みんなの自己紹介が終わると、ベリル教授は全員に紙を配った。

魔術でひゅんっと音がしたと思ったら配り終えている。


「昨日、オバレー教授から聞いたと思うけど、まずは、みんなに誓約書にサインをしてもらう。誓約書はびっしり書いてあるから読むの大変だと思うので、主な規則をこれから説明するけど、後でちゃんと読んでおいてね。」

本当にびっしりとゴマ粒のような細かい文字で書かれている。

細かすぎて読めないのではないかと思ったけれど、読もうと顔を近づけると急に文字が大きくなった。…読める…。

これも魔術で作られているからなのか。

便利ではある。


「まずは、守秘義務だな。

この学院で学んだこと。知ったこと。例えば、教授の名前と教えている科目。授業で習った知識。学生の情報についても外部には知らせないこと。まあ、友達の名前とか趣味くらいは話しても問題ないけれど、成績とか属性などはだめだな。」


「次に、学院生活。

決闘や魔術を使っての喧嘩はご法度。特に君たちは魔術で戦う練習をする。決闘や魔術を使っての喧嘩は命のやり取りにつながる。魔術師の命は国のもの。したがって、仮に双方に怪我がなくても、決闘や魔術を使っての喧嘩は罰を受ける。」


「あとは、教授の言うことは絶対だ。君らはまだ、魔力の制御も知らないひよっこだ。

教授はその道のエキスパート。教授の指導には必ず従うこと。」


「最後に、最も重要なのは、『ランドール国への忠誠』だ。

そもそも、わが国は魔術であらゆることが動いている。それらの妨害が魔術師なら可能だ。しかし、この学院は国の安定のために魔術師を育てている。したがって、ランドール国への忠誠を誓えないなら、魔術師になる資格はない。」


「質問があります!」

突然、私の後ろから、男子生徒の声があがった。

「なんだ。あ、質問の前に名前を言ってくれ。」

「クレイドル・ミレーです。ランドール国への忠誠というのは、国王陛下への忠誠ということでしょうか?」

「良い質問だな。厳密には違う。国王はランドール国の発展や安定のために存在する役職であって、ランドール国そのものではない。」

「魔術師は国王陛下のもとで働くのではないのですか?」

「組織としてはそうかもしれんが、仮にだ。仮に、国王が、ランドール国のためにならない命令を出したとする。それに従わぬのが、魔術師だ。例えば、理由もなしに国民が疲弊するほど高率な税をかけようとした国王が過去にいる。それをつぶしたのは魔術庁だ。なぜならば、ランドール国に忠誠を誓っているのだから。」

「現実論として、国王陛下に逆らったら、無事では済まないのではありませんか?」

教室内がざわめく。

「何のために、この学院や魔術師団、魔術庁があると思っている?」

「魔術師団は王国騎士団と全く違う組織だ。王国騎士団は国王をトップに仰ぐ組織だが、魔術師団のトップは魔術師団長。そして、魔術師全員のトップが魔術庁長官と、本学院の学院長だ。この3人は同位。そして、この3人に関しては、国王の臣下ではない。極論を言えば、魔術師団の出撃を命令できるのは、この3人のみ。国王はお願いはできるが、命令はできない。全く独立しているんだ。そして、魔術師にとっては、学院長および、魔術師団長および、魔術庁の長官の命令が国王より優先される。…まあ、そうはいっても、一つの国に複数の権力者が立つと混乱するからな。一応、表向きは国王をトップに立てている。」


教室内が蜂の巣をつついたように騒がしくなる。

隣に座っていたエリザベスも、口元に両手をあてて驚いている。

「信じられませんわ。国王陛下の下に魔術師団があると思っていましたのに…。」

私もびっくりだ。

あの人の良さそうなおじいちゃん学院長が、国王陛下と同等だなんて!


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