表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院5年生
138/172

ちょっとしたいじめ



 車椅子での授業は特に何も支障がなかった。


欠席していた間の授業の遅れを心配したけれど、もともと、予習が先に進み過ぎていたので、まだここまでしかやっていないの?と、逆にびっくりしたくらい、余裕だった。

 唯一、支障があったのは戦闘魔術の授業だけ。

さすがに見学させてもらうしか、ない。

まだ皆に交じって戦える体力はない。

何より、絶対にかすり傷一つ負ってはならないと、言い含められている。




「ソフィ。」

階段の下で、ジェニファーが呼んでいる。

「あ、ジェニ。」

「夕食前に、サロンでお茶しない?」

「あら、素敵。待って、今、降りていくから。」


車椅子は魔力で浮いて動く。

だから、階段もすーっと滑る感じで降りる。

階段を降りかけたとき、後ろから、小さな声が聞こえた。


「ヴェントゥス・バレット」


背中を、どん!と、つきとばされる感じ。

風の弾丸が当たったのだ。

ぐらっと、体が車椅子から離れて落ちるのを感じる。


「くっ!吹き上がれ、風よフレーラ・ヴェントゥス!」


ぶわっと、下から、風が私を持ち上げる。


落下速度が緩くなり、床への激突は避けられたけれど、車椅子のことを、忘れていた。

床にゆっくり着地した私の足の上に、車椅子が落ちてきたのだ。

直撃こそ免れたけれど、車椅子の金属部分が足を掠る。

血がすーっと、流れた。


「ソフィ!怪我はない?ああ、切ったの?これくらいで済んで良かった、これくらいなら…。」

ジェニファーが青い顔をして駆け寄ってきて、それでも少しほっとしたように、そばに膝をつく。

「…ジェニ。悪いけど、スナイドレー教授を呼んできてくれる?」

「え?」

「今のわたくし…。血が止まらなく、なっているの。」


そうなのだ。

怪我をしないように、言われていたのに。

私の命をつなぎとめた薬の一つに、出血したら止まらなくなる副作用があった。

普通の治癒魔法ではダメ。止血の薬も当然無い。

その薬の副作用が消えるまで、最低2か月。

その副作用が怖いので、フィロスは3か月の休学を強く勧めていたけれど、私は怪我をするのは戦闘魔術くらいだから、それを見学することで、なんとか通学を許してもらっていた。

まさか、誰かに階段から突き落とされるとは計算外だ。


「えええ!なんで!?」

「薬の副作用、と聞いているわ。…止血できるのは、たぶん、スナイドレー教授だけ、のはずなの。」

「わ、わかったわ。呼んでくる!」


「何の騒ぎです!?」

突然、階段の上からオバレー副学院長の声が響いた。


「ソフィアが、階段から落ちて…。」

ジェニファーが立ち上がりながら説明しようとした時、

オバレー副学院長の後ろに立っていた人が、さっと階段を駆け下りてきた。

スナイドレー教授だった。

オバレー教授と一緒だったらしい。


「ソフィア!ちっ!あれほど、怪我には気を付けるようにと言ったのに!」

「ごめんなさい。」

「話はあとだ!」

抱き上げられ、あっという間に転移させられていた。

転移先は、ソル塔の、学院長の部屋。


「学院長!頼む。治癒魔術を!」

「ソフィア。出血したのか。困ったもんじゃ。…」

学院長が小声で何やら唱える。


足の傷が赤い光で覆われる。

傷口が焼かれるように痛い。かなりの激痛に、気を失った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ