ソフィアの帰還
いきなり、目の前の金色の光の柱が閃光を放った。
「つっ!」
フィロスはとっさに目をつぶる。まぶた越しに光が突き刺さるように痛い。
その圧が無くなったのを感じて、目をあければ。
「ソフィア!?」
金色の光も、魔術陣も、すべて消えて無くなって、いつもの内庭にソフィアが倒れていた。
全身、真紅に染まって。
グレイスの言葉が木霊のようにわんわんと頭の中に響く。
「ソフィア様も、死んでしまいます。フローラ様のように、真紅に染まって。」
「ソフィア!?」
抱き上げれば、まだかすかに息がある。弱いけれど心臓も動いている。
「ふ、ぃ、ろす?」
ソフィアの手が彼のほほに触れる。
「あ、良か…った。もどれ、…て…。」
ごふっと喀血して、ソフィアの頭が、がくっと落ちる。
「ソフィア!」
フィロスは彼女を抱きあげ、自分の寝室に飛び込み、ベッドに寝かす。
万一のことを考えて、寝室にはあらゆる種類の薬を用意してある。
彼女が着ている服は着ているとは言えないほど、ボロボロのずたずただ。
ためらわずに、細い短剣で上から下まで切り裂きはぎ取り、身体を診ていく。
「内臓破裂、骨折、火傷、裂傷、…。」
ギリギリと歯噛みしながら、フィロスは薬を次から次へと、口移しに飲ませていく。
「出血は止まった!…皮膚が再生されてきている。骨もつながってきたな。内臓は…、とりあえず、心臓は動いている。」
薬湯に浸したシーツで、彼女をくるむ。
「…ちっ!出血が多すぎだ。造血剤、間に合うか!?」